「好きな人がいる」「結婚したい」——知的障害のある子どもや若者たちが、そんな気持ちを抱くのはとても自然なことです。

しかし、現実には「まだ早いから」「本人には難しいのでは」と、周囲の大人がその気持ちにフタをしてしまうことも少なくありません。けれど、“恋愛”や“パートナーシップ”は、誰にとっても人生の大切な一部。障害の有無にかかわらず、「人を大切に思う」「大切にされる」経験を通して、子どもたちはより豊かに育っていくのです。


◆恋愛感情は“ある”という前提で

知的障害のある子どもたちの中にも、「あの人が好き」「一緒にいたい」といった恋愛感情や憧れを抱く子はたくさんいます。

しかし支援の現場では、「恋愛感情はまだ早い」「その子には必要ない」と無意識に扱ってしまうことがよくあります。

実際には、「先生が好き」「友達と手をつなぎたい」「異性に優しくされたい」といった思いを持ちながら、表現の方法が分からず、戸惑いや誤解につながることもあります。


支援者の基本姿勢:

  • 恋愛感情は自然なものと捉える
  • 「その気持ちはダメ」と否定しない
  • 気持ちを尊重しながら、適切な関わり方を一緒に考える


◆学校での「恋バナ」への向き合い方

特別支援学校の現場でも、「あの子と付き合ってるって本当?」「デートしたい」といった話題が出ることがあります。

こうした会話をただの“からかい”や“いたずら”と片付けるのではなく、子どもたちの発達や理解に合わせて丁寧に対応することが大切です。

対応の例:

  • 「好きってどんな気持ち?」と一緒に言葉にしてみる
  • 「付き合う」ってどういうことかを絵カードで説明
  • 相手の気持ちも大事にしよう、と伝える

また、本人同士の関係だけでなく、周囲の友だちが過剰にからかわないように指導することも重要です。恋愛を“ネタ”にするのではなく、“大切な気持ち”として扱う空気づくりが求められます。


◆結婚・同棲・パートナーシップの希望

「将来、結婚したい」「一緒に住みたい」——そんな夢を語る子どももいます。

現実には、知的障害のある方の結婚や同棲は、さまざまな課題や制度の壁があります。しかし、だからといって「無理」と切り捨てるのではなく、夢や希望を否定せずに寄り添う姿勢が支援者には求められます。


支援のポイント:

  • 「その気持ち、大切にしよう」と肯定的に返す
  • 現実とのギャップをゆっくり説明する(お金、住まい、支援の仕組みなど)
  • 必要であれば、地域の福祉サービスと連携し、支援体制を検討する

例えば、グループホームで暮らす利用者同士が交際したり、保護者や支援者の協力のもと、外出やイベントを一緒に楽しむケースもあります。


◆恋愛・パートナーシップにまつわる配慮

恋愛やパートナーシップを支援するうえで、次のような視点も大切です。

  • 一方的になっていないか:「好かれること」より「好かせること」に偏らないように
  • 年齢・発達段階に合った関係か:無理のないペースで関わりを進められているか
  • 関係が安全で安心なものか:強要や支配、依存が生まれていないか

特に、「付き合う=キスをする」「好き=結婚する」といった極端なイメージを持ちやすい子もいます。恋愛と性の違いを丁寧に伝えたり、相手の気持ちや同意の大切さを繰り返し教えることが大切です。


◆支援者自身の戸惑いをどう乗り越えるか

「まだ早いんじゃないか」「相手が傷つかないか心配」——支援者自身が不安を感じるのは当然です。

そんなときこそ、自分ひとりで抱え込まず、保護者・他の教員・支援チームと連携して考えることが大切です。

支援のゴールは、「恋愛をうまくいかせる」ことではなく、子ども自身が大切な人間関係を築く力を少しずつ身につけていくこと。そのプロセスに、寄り添い、見守る大人の存在が必要です。


◆おわりに

「好き」という気持ちは、生きる力になります。

支援が必要な子どもたちにとっても、「人とつながりたい」「大切にされたい」という想いは、生きていくうえで欠かせない心のエネルギーです。

私たち支援者は、恋愛やパートナーシップを「避けるもの」とせず、“育てる力”として向き合うことが求められています。

次回【第9回】では、家庭と学校の連携によって性教育をどう進めるか、一緒に考えていきましょう。