重度知的障害の理解と支援〜認知の深い困難とどう向き合うか〜

知的障害はその度合いによって「軽度」「中等度」「重度」「最重度」に分類されますが、今回はその中でも「重度知的障害」に焦点を当てます。
この段階にある方々は、言葉の理解ややりとり、物事の見通しを立てる力など、日常生活のさまざまな場面で根本的な認知の困難を抱えています。

この記事では、重度知的障害の主な特性、日常生活での現れ方、そして支援者としてどのような視点を持ち、どのように関わるべきかを詳しく見ていきます。




1.重度知的障害とは?

重度知的障害は、一般的にIQ20〜34程度とされる層です。
しかし大切なのは、単なるIQの数値ではなく、本人の認知的な理解の仕方や、周囲とのやりとりの難しさに注目することです。

知的な理解力がかなり限られているため、

  • 物事の原因と結果のつながりが見えにくい
  • 言葉による理解が非常にゆっくり、あるいは断片的
  • 生活の中での出来事を一貫して捉えることが難しい
といった傾向が見られます。

このような特徴は、学習場面だけでなく、人間関係の構築や行動コントロールにも大きな影響を与えます。




2.重度知的障害の特性

重度知的障害のある方に共通してみられる認知・行動の特性には、以下のようなものがあります。

(1)言語理解と表出の困難

「言われたことをそのまま受け取ることができない」「指示が通りにくい」といった反応は、決して無関心や反抗ではなく、言語による理解が成立していないことが原因です。
また、発語があっても「オウム返し」や決まった言葉しか使わない場合もあります。

(2)因果関係や見通しの形成の困難

「今◯◯をしたら、次に何が起きるか」という予測を立てることが苦手です。そのため、急な予定変更に強い不安を覚えたり、突然の状況にパニック的な反応を示すこともあります。

(3)時間・数量・空間の概念理解が難しい

「5分待つ」「あと3つ」といった抽象的な表現は通じにくく、日常生活の中では具体的な視覚的手がかりが不可欠になります。

(4)自分の欲求の表出手段が限られる

「喉が渇いた」「トイレに行きたい」といった基本的なニーズも、言葉で伝えることが難しいため、行動で訴える形になります。
これが「かんしゃく」や「奇異な行動」と捉えられてしまうこともありますが、本来はコミュニケーションの一種です。




3.重度知的障害のある子ども・人との関わり方

重度知的障害のある方と関わる際には、「理解できる範囲に合わせる」ことが大切です。
それは決して「諦める」ことではなく、本人が安心できる形で世界に参加できるようにする工夫です。

(1)視覚的支援を活用する

言葉だけではなく、写真・絵カード・実物などの視覚的手がかりを組み合わせることで、理解を助けます。
例えば、トイレや給食の時間にはタイムスケジュールボードを用いたり、「今やること」と「次にやること」を並べて提示する方法が有効です。

(2)手順を一つずつ、簡潔に伝える

「上履きを脱いで、棚にしまって、次に座って待ってね」といった一度に複数の指示は、処理しきれないことが多いため、一つずつ分けて伝えることがポイントです。

(3)スモールステップで成功体験を積む

学びや成長を促す際は、ほんの小さな変化や行動でもしっかりと受け止め、繰り返し褒めることが重要です。
周囲が「できるようになった!」と気づく前から、本人の中では挑戦が起きています。

(4)感情の表出方法を尊重する

泣いたり、叫んだり、急に走り出したり…。こうした行動も、背景にある不安・疲労・刺激過多といった要因を読み取り、寄り添う姿勢が大切です。




4.重度だからこそ、「できる」に目を向ける

重度知的障害のある人が「できる」ことは、決して周囲の基準で決まるものではありません。
・手を伸ばして好きなものを選べた
・名前を呼ばれて顔を向けた
・手を添えたらスプーンを口に運べた

こうした一つ一つが、自分の力で世界とつながる行動です。
たとえ小さなことであっても、そこに成長と意思が宿っています。




5.まとめ:関係を育むことが支援の原点

重度知的障害のある方との関わりは、知識だけでは対応できない場面も多くあります。
それでも、丁寧に関係を築き、日々の中で小さな「気づき」を重ねていくことで、本人の中の「わかる」「できる」は確かに増えていきます。

その人の視点に立ち、どうしたら安心できるか、どうしたら伝わるかを考え続けること――
それが、支援の基本であり、共に生きるということそのものではないでしょうか。