自立活動って何をするの?
特別支援学校や特別支援学級にお子さんが通う場合、「自立活動(じりつかつどう)」という時間があります。
この言葉、聞いたことはあるけれど「生活スキルの練習かな?」程度に思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、自立活動は特別支援教育の中でもとても重要な位置を占めていて、授業のようでありながらも、個々の子どもの生活全体に直結する内容を扱います。
■ 自立活動とは何か
文部科学省の学習指導要領では、自立活動は「心身の調和のとれた発達と、自立に必要な知識・技能を身に付けるための活動」と定義されています。
つまり、国語や算数といった教科の枠組みではなく、その子が社会で生活していくために必要な力を身に付ける時間なのです。
対象は知的障害・肢体不自由・病弱・視覚障害・聴覚障害など幅広く、それぞれの障害特性や生活環境によって内容は変わります。
同じ「自立活動」といっても、ある子は体幹のバランス訓練を行い、ある子は人との関わり方を練習する…というように、本当に多様です。
■ 6つの区分と具体例
自立活動は、学習指導要領で次の6区分に分けられています。
- 健康の保持 … 健康診断、衛生習慣、体調管理の方法など
- 心理的な安定 … 不安や緊張を和らげる、情緒を安定させる
- 人間関係の形成 … あいさつや会話、相手の気持ちを理解する
- 環境の把握 … 周囲の音や光、位置関係を理解する
- 身体の動き … 姿勢保持、歩行、手先の巧緻動作
- コミュニケーション … 言葉や手話、視覚的手段を使ったやりとり
例えば、知的障害のある小学部1年生Aくんは、トイレに行くタイミングがつかめず失敗が多いという課題がありました。
この場合は「健康の保持」に関連づけて、体のサインに気づく練習や、トイレまでの移動をスムーズにする動作練習を行います。
■ 他の教科との違い
通常の教科は、学年ごとに全国的な学習内容が決まっています。
一方、自立活動は個別の教育支援計画や個別の指導計画に基づき、子ども一人ひとりの目標を設定します。
このため、同じクラスの子どもたちが全員同じ課題をやるわけではありません。
例えば、算数の授業であれば全員が「足し算の練習」をしますが、自立活動では
・姿勢保持のためのバランスボール運動
・集団活動での順番待ちの練習
・口頭で意思を伝えるための発声練習
といったように、内容も方法もバラバラです。
■ なぜ重要なのか
特別支援教育では、生活全般における「できること」を増やすことが、その子の自信や将来の選択肢を広げます。
教科学習の成果はテストや成績で見えやすいですが、自立活動は成果がすぐには数値化されにくい分、家庭や学校が協力して小さな変化を見逃さないことが大切です。
現場の先生からは、
「自立活動で身につけたことが、家庭や社会で活かされて初めて“自立”になる」
という声もよく聞かれます。
■ 保護者が知っておくとよいこと
- 自立活動は教科学習の“おまけ”ではなく、教育課程に組み込まれた正式な活動
- 内容は子どもによって大きく異なるため、隣の子と比べても意味がない
- 家庭での生活場面とリンクさせると効果が高まる
- 目標設定は年に数回見直すのが基本
■ 家庭との連携例
自立活動の効果を上げるには、学校と家庭の連携が欠かせません。
例えば「衣服の着脱を自分で行う」という目標の場合、学校だけで練習しても、家で保護者が全部着替えさせてしまえば定着しにくくなります。
逆に、家庭と学校で同じ方法・同じ声かけを意識すると、習得が早くなることも多いです。
現場では、連絡帳や可能であれば写真や動画で記録された「学校での様子」を共有し、家庭での様子もフィードバックしてもらう形をとることが増えています。
■ 第2回予告
次回は、この6つの区分それぞれをもう少し具体的に掘り下げ、「健康の保持」「心理的な安定」を中心に事例とともに解説します。
家庭でできる工夫もあわせてお伝えします。