自立活動って何をするの?

前回は、自立活動の全体像と6つの区分についてお話ししました。
今回は、その中から「健康の保持」と「心理的な安定」に焦点を当てて解説します。
この2つは、お子さんが毎日を安心して過ごすための“土台”になる分野です。


■ 健康の保持とは

「健康の保持」には、体調管理、衛生習慣、体の使い方の基礎など、健康的に生活するために必要な力を育てる活動が含まれます。


知的障害や発達障害のあるお子さんは、自分の体の変化や不調に気づくことが難しい場合があります。
また、日課としての歯みがきや手洗い、十分な睡眠などが習慣化しにくいことも少なくありません。


【具体的な活動例】

  • 毎日の手洗い・うがいの手順を絵カードで確認しながら行う
  • 自分の体温を測り、記録する練習
  • 給食やお弁当の後に鏡で口元をチェックする習慣づけ
  • 服の着脱やボタン・ファスナー操作の練習
  • 「お腹が痛い」「頭が重い」など不調を言葉やジェスチャーで伝える練習

ある特別支援学校では、朝の会の前に全員で「健康チェックタイム」を設けています。
体温測定、顔色や咳の有無を確認し、本人が「元気・少ししんどい・痛い」と3段階で自己申告する流れです。
これを続けることで、体調変化を自分で認識する力が育ち、早めの対応につながります。


【家庭でできる工夫】

  • 朝起きたら必ず顔を洗い、鏡で表情を確認する習慣をつける
  • 痛みや不快感を表す言葉を一緒に練習する(例:「ズキズキ」「チクチク」など)
  • 1日の終わりに「今日は元気だった?」と振り返る時間を作る
  • お手本を見せながら歯みがき・手洗いを一緒に行う

■ 心理的な安定とは

「心理的な安定」は、不安や緊張をやわらげ、情緒を安定させることを目的としています。
知的障害のあるお子さんは、環境の変化や予期せぬ出来事に強いストレスを感じやすく、その影響が行動や学習にも及びます。

例えば、教室の座席が変わっただけで落ち着かなくなったり、新しい活動に入る前に不安で固まってしまう場合があります。
こうしたとき、学校では予告・見通し・安心できる行動パターンを整える支援を行います。


【具体的な活動例】

  • 1日のスケジュールを写真や絵カードで提示
  • 活動前に深呼吸やストレッチを行う
  • 休憩時に落ち着ける「クールダウンコーナー」を設置
  • 好きな音楽や香りを取り入れたリラックスタイム
  • 困ったときに頼れる人を確認する練習

ある中学部のクラスでは、数学の授業前に「5分間リラックスタイム」を設定しています。
生徒はヘッドホンで好きな音楽を聴いたり、手元のフィジェットを使ったりして気持ちを落ち着けます。
この取り組みを始めてから、授業中の離席や怒りの爆発が減ったという報告もあります。


【家庭でできる工夫】

  • 外出や予定変更の前に、写真やカレンダーで予告する
  • 「嫌な気持ち」を色や形で表現する方法を一緒に考える
  • 安心できる物(ぬいぐるみ、タオルなど)を持ち歩けるようにする
  • 一日の終わりに「楽しかったこと」「困ったこと」を話す習慣

■ 健康と心理のつながり

健康状態と心理的安定は密接に関係しています。
体調不良は不安やイライラを引き起こしやすく、逆にストレスは食欲や睡眠を乱します。
学校現場では、この2つを切り離して考えず、総合的に支援する姿勢が大切です。

例えば、登校しぶりが見られる場合も、背景には「お腹が痛い」という身体症状と「友達関係の不安」という心理的要因が同時に存在することがあります。
どちらか一方だけを対応しても、根本的な改善にはつながりにくいのです。


■ 保護者が押さえておきたいポイント

  • 日々の生活習慣を家庭でも意識的に整える
  • 小さな体調変化を見逃さない
  • 予定変更時は必ず予告し、安心できる準備を行う
  • 学校に「家庭での様子」を積極的に共有する

学校と家庭の情報共有がスムーズになると、健康や心理面での支援が一貫し、子どもの安心感が高まります。
特に不安定な時期は、家庭と学校で同じ言葉・同じ対応を意識することが効果的です。


■ 第3回予告

次回は、自立活動の中から「人間関係の形成」「環境の把握」を取り上げます。
対人スキルや空間認知の力をどう育てるか、事例を交えながら解説します。