進学先を選ぶ前に知っておきたいこと
お子さんが小学校に入学する時期を迎えると、「普通小学校に進学するべき?」「特別支援学校がいいのでは?」と迷うご家庭が多いのではないでしょうか。
進学先は、これからの学校生活を大きく左右する大切な選択です。しかし、情報が限られていたり、周囲に相談しにくかったりして、不安を抱える保護者の方は少なくありません。
今回から5回に分けて「障がいのある子どもの進学先選び」をテーマにお届けします。第1回の今日は「進学先を選ぶ前に知っておきたいこと」。まずは教育制度や選択肢を整理して、保護者の視点で基礎を確認していきましょう。これまでの記事と重複するところもありますが、お付き合いください。
普通小学校と特別支援教育の仕組み
日本の義務教育は、基本的に「普通小学校」に就学することを前提としています。しかし、障がいのある子どもの場合、より学びやすい環境を選ぶために4つの選択肢が存在します。
- 普通小学校(通常学級)
もっとも一般的な学びの場。地域の友だちと一緒に学ぶ環境がありますが、一斉授業のペースに合わせる必要があります。 - 普通小学校内の特別支援学級
発達障害・知的障害・肢体不自由など特性ごとに設けられた少人数クラス。必要に応じて普通学級と行き来することもあります。 - 普通小学校に在籍しながら通級指導を受ける
週数時間だけ別室で、発達や学習上の困難に応じた支援を受けられます。基本は通常学級で学ぶ形です。 - 特別支援学校
障がいのある子どもを対象にした学校。少人数・専門スタッフ・自立活動など独自のカリキュラムが整備されています。
「支援学校か普通校か」という二択ではなく、「子どもに合った環境はどれか」を考えることが大切です。
進学先を考えるときの視点
進学先を選ぶとき、多くの保護者が「できるだけ普通校に通わせたい」と考えます。きょうだいと同じ学校に通えること、地域とのつながりを持てることは大きなメリットだからです。
一方で、「授業についていけるかな」「友だち関係で困らないかな」といった不安も出てきます。
ここで大切にしたいのは、「子どもにとって安心して学び、成長できる環境はどこか」という視点です。
つまり「普通校か支援校か」ではなく「子どもに合った環境を見つける」ことが選択のゴールとなります。
就学相談で何が話される?
実際に進学先を決めるにあたり、保護者が避けて通れないのが就学相談です。
就学相談は、市区町村の教育委員会が中心となって行い、心理士・医師・教育専門家などが子どもの発達状況を確認します。
相談では次のようなことを聞かれることが多いです。
- 普段の生活の様子(家庭での過ごし方・困っていること)
- 発達の特性や診断の有無
- これまでの療育や支援の経験
- 保護者が望む学校生活のイメージ
ここで大切なのは、「できること」だけでなく「困っていること」も率直に話すことです。保護者が「弱みを見せたら普通校に行けないのでは…」と心配して情報を出し渋ることもありますが、実際には正直に話したほうが適切な支援や環境が整いやすくなります。
「成長とともに変わる」ことを前提に
学校選びで覚えておいてほしいのは、進学先は一度決めたら終わりではないということです。
小学校の途中で「支援級へ転籍」「支援学校へ転校」など、子どもの状況に応じた見直しは可能です。逆に支援学校から地域の小学校へ戻るケースもあります。
つまり進学先は「一生を決める重大な選択」ではなく、「今の子どもに合った環境を選ぶ第一歩」だと考えることができます。そう思うだけで、保護者の心の負担は少し軽くなるのではないでしょうか。
まとめ
今回は「進学先を選ぶ前に知っておきたいこと」として、教育制度の基本や就学相談の流れを整理しました。
大切なのは「普通校か支援校か」という二者択一ではなく、子どもが安心して学べる環境をどう整えるか、という視点です。
次回は「一般小学校を選ぶメリットと課題」について、実際の学校現場の視点から具体的に見ていきます。地域のつながりや加配教員などのサポート体制、そして課題となるポイントを一緒に整理していきましょう。