自立活動って何をするの?【第4回】〜身体の動き・コミュニケーション〜


これまで3回にわたり、自立活動の6つの領域のうち4つについてお伝えしてきました。
今回は「身体の動き」と「コミュニケーション」を取り上げます。
どちらも学校生活の土台となる力であり、知的障害のあるお子さんの学びや生活参加に直結します。


■ 身体の動きとは

「身体の動き」の支援は、姿勢保持・移動・運動の基本的な力を育て、日常生活や学習活動をスムーズに行えるようにするものです。お箸やスプーンの持ち方なんかもこの身体の動きから考えることができます。
知的障害のあるお子さんは、発達の段階や併せ持つ身体的特徴により、運動面に課題を抱えることがあります。
特に、姿勢が不安定だと机上作業に集中しづらく、転倒やけがのリスクも高まります。

【具体的な活動例】

  • バランスボールやクッションを使って姿勢保持を練習
  • 手先の巧緻性を高めるための折り紙やビーズ通し
  • リズム運動や体操で全身の協調性を育む
  • 階段の昇降・段差の上り下りの練習
  • 荷物を持って歩く・運ぶ練習

小学部の例では、朝の会の前に必ず「体ほぐしタイム」を設けています。
音楽に合わせて伸び・ジャンプ・しゃがみこみなどの動きを繰り返すことで、体が目覚め、授業への集中が高まります。


【家庭でできる工夫】

  • 買い物で荷物を一緒に持ち、距離を歩く練習
  • 洗濯物を干す・畳むなど家事の中で手先を使う活動
  • 階段や段差を意識的に歩く機会を増やす
  • 風船やボールを使った遊びで反射神経を育てる


■ コミュニケーションとは

「コミュニケーション」の支援は、言語・非言語を問わず、自分の思いやニーズを相手に伝え、相手の意図を理解する力を育てます。
知的障害のあるお子さんの中には、発話が難しかったり、相手の言葉を理解するのに時間がかかる場合があります。
そこで、言葉以外の方法(ジェスチャー・絵カード・視線・タブレット端末など)も活用します。

【具体的な活動例】

  • 写真やイラストカードで「欲しいもの」「やりたいこと」を指さして伝える練習
  • Yes/Noカードを使った意思表示
  • 相手の表情や身振りから意味を読み取る練習
  • タブレットの音声アプリでの発話補助
  • 相手の話を最後まで聞く練習

中学部の授業では、購買学習の前に「注文ロールプレイ」を行っています。
実際に販売役とお客さん役に分かれ、カードを指差したり、短い言葉で注文する練習を重ねます。
実地の場面で成功体験を積むことで、自信を持って人と関われるようになります。


【家庭でできる工夫】

  • 家族の中で順番に話す時間を作る
  • 質問は短く具体的に(「飲み物いる?」など)
  • 返事を待つ時間を長めにとる
  • 写真や実物を見せながら話す


■ 身体の動きとコミュニケーションの関係

一見別々の領域のようですが、実は深くつながっています。
例えば、手を振って挨拶する・相手に近づいて話す・指差しで伝えるなど、コミュニケーションは体の動きを伴うことが多いのです。
運動面の安定が、コミュニケーションの質を高めることにもつながります。


■ 保護者が押さえておきたいポイント

  • 動きやすい服装・靴を選ぶことで活動の幅が広がる
  • 一度に複雑な指示を出さず、動きと伝え方をセットで練習
  • 家庭でも体を使った遊びや会話を意識的に取り入れる
  • 学校の支援方法(カードや道具の使い方)を家庭でも共有する

家庭と学校が同じ方法で支援すると、子どもは安心して力を発揮できます。


■ 第5回予告

次回は最終回、「感覚の活用」をテーマに、五感の特性に合わせた支援や生活への応用について詳しく解説します。