第1回:「ネットトラブルのリアル」〜なぜ起きる?どんな危険がある?保護者が知るべき実態〜
スマートフォンやタブレットが身近な時代。知的障害や発達障害のある子どもたちにも、SNSや動画アプリ、ゲームを通じてインターネットと接する機会が増えています。
一方で、保護者からはこんな声が聞こえてきます。
- 「ネット上の友達に個人情報を話してしまった…」
- 「知らない人とメッセージのやり取りをしていた」
- 「課金が止まらなくなってしまっていた」
障害特性がある子どもたちは、情報を正しく読み取ったり、意図をくみ取ったりする力に課題があることが多く、ネット上のやり取りでも“思い込み”や“信じすぎる”という傾向が見られがちです。
■ ネットトラブルが起こる背景
障害のある子どもたちがインターネットでトラブルに巻き込まれる背景には、以下のような要因が複雑に絡んでいます。
- 言葉をそのまま受け取ってしまう:冗談や皮肉が通じないことがある
- 相手の意図を読み取れない:悪意を持った相手を見抜けない
- 善悪の判断が難しい:「やっていいこと」と「だめなこと」の境界が曖昧
- 依存傾向になりやすい:不安感や孤独感からSNSやゲームにのめりこむ
「SNSの向こう側には“人”がいる」という感覚がつかみにくいため、個人情報を話してしまったり、いわゆる“なりすまし”や詐欺に引っかかりやすいというリスクもあります。
■ 実際にあったネットトラブルの例
特別支援教育の現場では、以下のようなネットトラブルが実際に報告されています。
- 知らない人とつながっていた:ゲーム内のチャット機能を使って個人情報を教えていた
- 「アイテムをあげる」と言われて写真を送ってしまった:一度送った後に「もっと送って」と脅されるようになった
- 動画サイトのコメント欄で喧嘩に:自分の意見を批判され、精神的に不安定に
- 課金請求で数万円:ゲームアプリで購入を繰り返していたことに保護者が気づいた
特に“無料ゲーム”や“動画アプリ”は敷居が低く、「みんな使っているから大丈夫」という安心感から、保護者も油断しがちです。
■ フィルタリングだけでは不十分?
スマートフォンやタブレットには、子どもが使える範囲を制限する“ペアレンタルコントロール”や“フィルタリング”機能があります。もちろんこれらは重要な対策ですが、完全に安心とはいえません。
たとえば、YouTubeやSNSの中には“規制の網をすり抜けた”コンテンツも多く、実際には不適切な動画・広告に出会ってしまうこともあります。また、誰かが使った端末を共有している場合には制限がかからないこともあります。
■ 「ネットは危険」だけでは伝わらない
保護者や支援者が、「ネットは危ないから使わせない」「SNSは禁止!」といった形で制限するケースもあります。しかし、知的障害や発達障害のある子どもたちは、そもそも“何がどう危ないのか”を具体的に理解しづらいことがあります。
そのため、「使わせない」よりも「使う時にどう気をつけるか」「何をしていいか、いけないかを知る」という学びが重要です。
■ 保護者ができる“気づき”と“備え”
まずは、「今、子どもが何を使っているか」を正確に知ることが第一歩です。
- どんなアプリを使っているか
- どんな相手とやり取りをしているか
- どのくらいの時間使っているか
日々の生活の中で、“子どもの使い方を把握する”だけでなく、“一緒に使ってみる”姿勢も効果的です。子どもが見ている動画を一緒に見たり、どんなゲームなのか話を聞くことで、自然な会話の中から危険なサインに気づくこともあります。
■ 次回予告
第2回では、「どう伝える?ネットとの付き合い方」と題して、子どもの理解度に応じた説明の仕方や、家庭でできるルールづくりの工夫について詳しく紹介していきます。
単に「ダメ!」と言うのではなく、“子どもが納得しながら学べる伝え方”のヒントをお届けします。
発達特性、認知の偏り、ネット接触年齢、発達段階に合った説明、家庭のルール作り