【第2回】まずは“観察”から始めよう
〜排泄支援は「記録」と「気づき」で変わる〜
前回の記事では、排泄の困難さには身体・認知・環境・心理などさまざまな要因があることをお伝えしました。
では、どこから支援を始めればよいのでしょうか?
その第一歩は「観察と記録」です。
●なぜ“観察”が大事なの?
排泄の自立は、「本人の努力」だけでは進みません。
大切なのは、「何ができていて、何が難しいのか」をまわりの大人が知ることです。
たとえば…
- いつも決まった時間に排尿・排便している?
- 尿意や便意を訴えられる? そのときの表情や動きは?
- トイレでの様子(入室~排泄~退出)に、苦手な場面がある?
こうした情報があることで、「今はどの段階にいるのか」「どこから支援を入れるとよいのか」が見えてきます。
●支援の基本は“記録”から
記録といっても、最初はシンプルで構いません。
おすすめは、次のような簡単なメモやチェック表です。
| 日時 | 排尿/排便 | トイレでできたか | 様子・行動 |
|---|---|---|---|
| 7:30 | 排尿 | ×(オムツ) | 無表情。後から「出た」と伝える |
| 10:20 | 排尿 | ○ | 職員が誘導。スムーズに実施 |
| 14:15 | 排便 | × | イスに座った直後に出ていた。無反応 |
このような記録を1〜2週間続けることで、次のような“パターン”が見えてきます。
- 排泄の時間帯の傾向
- トイレ誘導のタイミングの合い方
- 排泄直前の様子やサイン(体の動き、表情など)
●“失敗”も立派な情報
保護者の方は「失敗が多くて…」と肩を落とされることがあります。
でも、その“失敗”にも支援のヒントがたくさんあります。
たとえば…
- 外出先で失敗 → 環境の変化に敏感? トイレの場所が不安?
- トイレに入ったけど出なかった → 緊張? 気が散った?
- トイレを拒否 → 嫌な記憶がある?
こうした情報を丁寧に記録することで、「次にどうするか」が見えてきます。
支援とは、「うまくいかない理由を見つけて、一緒に工夫すること」です。
●“行動観察”で見えてくること
トイレに行く前後の子どもの様子に、ヒントが隠れていることもあります。
- モジモジする・ソワソワする
- 股を押さえる・立ち止まる
- 座ることを避ける・椅子から立ち上がる
- お尻を気にする・隅に行く
こうした“予兆行動”を見つけられると、トイレ誘導のタイミングが合いやすくなります。
また、本人も「察してもらえた」「安心して出せた」という経験が積み重なっていきます。
●“視覚的に見える記録”のすすめ
保護者・支援者・本人が一緒に取り組むには、視覚的に記録を共有する方法も有効です。
たとえば、
- 排尿・排便ができた日はカレンダーにシールを貼る
- 成功したタイミングに笑顔の絵カードを使う
- トイレ使用の手順を写真で掲示する
本人が「できたこと」に気づけるようにすることも、支援の大きな目的です。
●最後に:観察・記録は“親の責任”ではない
排泄の記録というと、「きちんと管理しなければ」「親がサボってはダメ」と感じる方もいらっしゃいます。
でも、それは違います。記録とは、支援を“チーム”で進めるためのツールです。
家庭でわかること、園や学校でわかること、医療機関に相談したいこと…。
それらを記録で「見える化」することで、子どもを中心にした支援がつながっていきます。
次回は、こうして見えてきた課題に対して、「どう環境を整えるか」を具体的に考えていきます。