発語が少ない子どもへの支援|実践編②
前回に引き続き、発語が少ない子どもへの支援について、実践的で専門性の高いアプローチを紹介します。
⑧ AAC(拡大・代替コミュニケーション)の導入
AACとは、発語以外の方法で意思を伝える手段のこと。前回紹介したPECSもAACの一種ですが、他にも様々な方法があります。
- ローテックAAC:絵カード、写真、シンボルボード、ジェスチャーなど
- ハイテックAAC:タブレットや音声出力装置(VOCA)を使ったコミュニケーション
AACは「発語を妨げる」と誤解されがちですが、実際には発語のきっかけになったり、自己表現の幅を広げたりする重要なツールです。
⑨「共同注意」を育てる
共同注意とは、大人と子どもが「同じもの」に注意を向け、それを共有している状態を指します。これは言葉の土台になる重要なスキルです。
支援例:
- 指さしを促す遊び(例:絵本の中の動物を一緒に探す)
- 大人が「見て見て!」と子どもと同じ方向を見る
- おもちゃで遊びながら「それ、くるまだね」と話しかける
「あなたと同じものを見てるよ」という経験の積み重ねが、やがて「ことば」に結びついていきます。
⑩ 聴覚情報処理の支援
中には、音は聞こえていても「意味として処理する」ことが苦手な子どももいます。これは「聴覚情報処理」の困難と呼ばれます。
対応方法:
- はっきり・ゆっくりと話す
- 視覚的な支援(イラスト、実物、ジェスチャー)を併用する
- 騒音や雑音を減らす(静かな環境で話す)
言葉の入力がうまくいかないと、発語も育ちにくくなります。インプットとアウトプットは連動しているのです。
⑪ 感覚統合へのアプローチ
感覚過敏や鈍麻が強いと、子どもは外部の刺激に圧倒されて発語どころではなくなることもあります。
- 触覚に敏感 → 口の周りを触られるのを嫌がる
- 聴覚に敏感 → 声かけが逆効果になることも
対応方法:
- 落ち着ける空間をつくる
- 過度な刺激を避ける
- 身体を使った遊び(ブランコ、トンネルくぐりなど)で感覚調整を図る
⑫ 安心・安全な関係づくり
ことばは、信頼関係の中で初めて育つものです。どれだけ技術的な支援を用意しても、子どもが「安心していいんだ」と感じていなければ、ことばは引き出せません。
日々の関わりの中で:
- 子どもが見せた表情や行動を受け止める
- 「あなたの気持ちは伝わっているよ」と態度で示す
- 言葉で伝えられたときには、すぐに反応する(「わかったよ!うれしいね!」など)
ことばの土台にあるのは、関係性です。「ことばは出すもの」ではなく、「湧き上がってくるもの」。そう捉えることが支援の第一歩です。
まとめ
発語が少ない子どもへの支援は、「話すこと」だけを目標にするのではなく、その子なりの伝え方を育て、受け入れ、広げていくことが大切です。
専門的な手法も、目的はひとつ。「伝えられた!」「わかってもらえた!」という喜びの積み重ねです。
ことばの芽が育つように、あたたかく、ゆっくりと、丁寧に関わっていきましょう。