発語が少ない子どもへの関わり方と支援の工夫
知的障害のある子どもの中には、言葉がなかなか出ない、言葉で気持ちを伝えるのが難しい子が多くいます。発語がない、または少ないことに対して不安を抱える保護者や支援者は少なくありません。
しかし、言葉が出ないからといって「伝えたい気持ちがない」わけではありません。今回は、発語が少ない子どもたちへの具体的な関わり方や、気持ちを引き出すための支援についてご紹介します。
1. 発語が少ない子どもたちの姿
発語が少ない子どもたちは、次のような姿を見せることがあります:
- 要求があると大人の手を引っ張る(クレーン現象)
- 絵カードや物を使って気持ちを伝えようとする
- 表情や声のトーンで感情を表す
- 指さしや視線で欲しいものを示す
言葉の代わりに、体全体を使って「伝えたい!」という気持ちを表しているのです。
2. ことばが出ない理由を理解する
発語の遅れにはさまざまな要因があります。例えば:
- 発音器官や聴覚の発達に遅れがある
- 言葉を「使う」目的が理解しづらい
- 周囲とのやりとりがストレスになっている
- 自分の気持ちをうまく表す手段がわからない
「ことばが出ない=困った」ではなく、「どう支援すれば伝えやすくなるか」を考える視点が大切です。
3. 発語を引き出す関わりの工夫
言葉を促すためには、無理に話させるより「話したくなる関係性」や「伝わる成功体験」を重ねることが大切です。
● ① ゆっくり・はっきり話す
大人の話すスピードが速すぎると、子どもは聞き取りにくくなります。「〇〇ほしい?」「〇〇しようね」など、簡潔で視覚的に伝わる言い方が効果的です。
● ② 子どもの行動に言葉を添える
例えば、子どもがリンゴを指さしたら「りんご、ほしいんだね」と返してあげましょう。これを繰り返すことで、「伝えればわかってもらえる」という経験になります。
● ③ 一緒に楽しむ時間を増やす
「楽しい」「心地よい」体験の中でこそ、子どもは安心して言葉を出すことができます。音楽や絵本、感触遊びなど、子どもが好きな活動を一緒に楽しむことが大切です。
4. 発語がない子への代替手段の導入
発語が難しい場合には、補助的なコミュニケーション手段を用いることで「伝える力」をサポートできます。
- 絵カード:選んで渡すだけで「伝える」ことができる
- 写真や実物:視覚的に理解しやすく、選びやすい
- ジェスチャー:バイバイ、バンザイなど、身振りが有効
こうした方法を用いながら、発語にこだわりすぎず「伝えられる喜び」を育てることが支援の第一歩です。
5. 周囲の理解と環境づくり
支援する側の「焦り」は、子どもにプレッシャーを与えてしまいます。「今できる方法で伝えてくれたことを受け止める」姿勢が大切です。
家庭や学校でも、子どもが安心して意思表示できるような雰囲気づくりを意識しましょう。例えば:
- 子どもが伝えやすいタイミングを待つ
- 正しく話せなくても「伝えようとした」ことを認める
- ことばだけでなく、表情・しぐさも受け止める
まとめ
発語が少ない子どもたちは、「ことばを出せない」のではなく、「伝え方が違うだけ」の場合も多くあります。大切なのは、子どもが安心して思いを伝えられる環境と、周囲の温かいまなざしです。
言葉は後からついてくることもたくさんあります。焦らず、子どものペースで「伝える楽しさ」を一緒に育てていきましょう。