「・・でさぁ・・・って聞いてんの?」

「あぁ…ごめん。何の話?」

「・・・もういいよ。」


たまにフラッシュバックするこの記憶。

幼い頃の記憶なんて

とうに薄れかけているのに。


あの日の記憶だけは

今も鮮明に蘇ってくる。

かといってトラウマになっているわけでもないのに…。


思い出すたびに

不思議な感覚に包まれる。



今じゃ怒鳴られることなんて日常茶飯事。

社会人になってから

それなりにいろんなことを経験してきた。

恋愛も含めて。

世間の波とかってやつに揉まれながらも

それなりにやってきた。

ただなんとなく…普通の人生を歩んできた。


そんな私にだって「夢」とか「希望」とか

そんなものを追いかけてたりもした。

毎日がキラキラして、明日がどうなるとか

そんなのどうでもいいくらい

ただひたすら「今」を必死に楽しんでた。


でもいつからだろう…

「夢」とか「希望」とかって言葉すら忘れて

将来を真剣に考え出して

目の前にいる自分を見たら

何も残ってない。


ただのOL


ただなんとなく仕事をこなして

ただなんとなく過ごしてた。


彼と出会うまでは…





『開けちゃダメ!』

母親の怒鳴り声が後ろから背中に突き刺さった。

頭ごなしに怒鳴られる感覚。

それが一番古い嫌な記憶。


私は3つか4つだった。

これは普通の子供の行為。

普通に障子を開けて外を見ようとしただけ。


その記憶を最後に一番最初に住んだ家の記憶はなくなる。


一番最初に住んだ家はりっぱな家だった。

田舎だというせいもあるだろうけど

それでも果てしなく広い庭に囲まれたゆとりある家だった。


庭にはシェパードがいた。

少し高めの広いゲートを悠々と飛び越して何度も脱走したのを覚えている。

私は小さかったので、ものすごく大きく見える生き物が怖くて仕方なく

脱走した日は誰かが捕まえるまで窓の外の様子をじっと伺っていた。


彼は自由に、どんどんスピードを上げて暴走していく。

一瞬の自由を高く掲げて幸せそうに見えた。