はばたいてこそ、企画 | 霞を食って生きていけるなら

はばたいてこそ、企画

 たとえば、「world-thater.com」とようなweb siteで、世界中の劇場の演目を1幕1000円程度で、リアルタイムに見ることができたら…。
 日本時間の24時からパリのオペラ座で「椿姫」の第1幕を見て、25時からサントペテロブルグのマリンスキーで「コッペリア」を見る。あしたの早朝は、NYでミュージカルを楽しみ、夜は、ミラノのスカラ座でのマリア・グレギーナのアリアを聴く。
 カメラは、テレビのようにアップやパンをしてくれるわけでもなく、舞台全体を静止アングルで写し、音声を流しているだけだし、映画のように字幕が入るわけでもない。でも、いま、まさに地球の裏側でやっているものを見ているというリアル感にゾクゾクする。日本の中で、ひとりの人間が戦慄しているときに、アメリカでも、ヨーロッパでも、アフリカでも、南米でも、彼ら自身のモニターの前で、同じ演目に拍手している…。オーストラリアで日本の能を見ている人もいれば、ウズベキスタンで歌舞伎を初体験している人もいる…。
 
 これは単なる思いつきである。ひとりの消費者として、こんな有料サイトがあれば、1か月に優に数万円は使ってしまうだろう、というだけの話である。
 いわば「ひな」のようなものである。あるいは卵かもしれない。
 ここから育んで、成鳥になって初めて「企画案」になる。

 自分の後ろに、同じような感覚をもった人間が何人、いるか。
 500人か、5万人か。日本だけでなく、ワールドワイドに見た場合は、何人いるか。5万人か、500万人か。テレビのオペラの視聴率やマーケティング調査をしながら、おおよその市場の規模をつかまなければならないだろうし、各劇場の支配人にメールで、場合によっては現地に赴いて、劇場にとっても出演者にとってもプラスになるような利益配分の計画を伝えて、意向を確認しなければならない。数軒以上の確約は欲しい。カメラの取り付けやメンテナンス、課金などのシステムについてもおおよその設計プランは必要であろう。
 こうしたことが、ほぼメドがついて、ようやく「企画案」という段階にたどりつくわけである。

 こんな話をブログなどで書いてしまっていいのか、とお思いの人がいるかもしれないので申し上げるが、少なくとも日本の企業でこの話を受け入れてサポートしてくれる会社はあと数十年は出てこない、と確信している。電通も三井物産もトヨタもSONYも楽天も、「確実に収益を出せる事業」にしか関心は示さない。シアトルのMICROSOFTでも無理だろう、あるとすれば、Bill Gates個人が道楽でやってみよう、というぐらいかな。