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赤い猪

兄弟たちは伯耆国手間山のふもとでオオアナムジを待ち構え、そして言います。

やい弟!この山には赤い猪がいる。今からそれを捕まえるんだ。

俺たちが山の上から追い立てるから、飛び出してきたらお前が捕まえるんだぞ。
いいな。しくじったら殺しちゃうんだからな」

はいはいわかりました。
そんな耳元でギャアギャア言わなくてもいいのにとウンザリしながら、
オオアナムヂは山のふもとで待機します。

山の上では兄弟たちが
「準備はいいか?」「抜かりはないな」

大きな石を火でカッカと燃やして、
いっせーのせで山から転げ落とします!

ふもとで待っていたオオアナムヂ。
ドザザザザーーと聞こえてきたので、

「ん?きたな。いよいよか」
待ち構えます。そこへ!
ゴロゴロゴローー

燃え盛る石が突進してきて、

ベターーン
オオアナムヂに激突、

「ぎゃあああああ!!」

その熱で、オオアナムヂは焼き殺されてしまいしました。
オオアナムヂの死体は熱で石にへばりつき、
じゅうじゅうと煙を立てていました。

兄弟たちはその死体を見て、キャッキャと手を叩いて大喜びし、

殺した、殺したオオアナムヂをこーろしたと

国中にふれてまわります。

貝の力で蘇生

こうしてオオアナムヂの母サシクニワカヒメも息子の死を知ることとなりました。

見るも無残な息子の死体を目の前に母は泣き崩れます。

「なんてひどい兄弟たちかしら!」

しかし何しろ八十人もいて悪の大軍団なので、

うかつに逆らったら一族皆殺しにされるかもしれないです。

泣く泣く母は高天原にのぼり、天地開闢のとき

最初にあらわれ出た生命をつかさどる神、

カミムスヒノカミに頼みます。
「どうか、息子を生き返らせてください!」

「まあまあ、なんてヒドイ兄弟たちでしょう。
お前の息子はまだ寿命が尽きてはいません。きっと
生き返るでしょう」

カミムスヒノカミは赤貝の神であるキサガイヒメ
と蛤の神であるウムガイ姫の姉妹を地上につかわします。
まずキサガイヒメが赤貝の殻を削って粉を作り、
ウムガイヒメがそれを蛤の貝殻ですくいとって、
自分が出したお乳とまぜて、練り薬を作ります。
その練薬を傷口にすりこむと、
死んだオオアナムヂはすくっと起き上って、傷もキレイに治り、
元気よく歩き始めました。

生き返った大国主命。大変良かったと思うのもつかの間、何と再び死んでしまうのです。


せっかくよみがえったのに、兄弟たちがやった仕打ちとは?




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