ピンク・フロイド『狂気』の女性アーティスト | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

ピンク・フロイド『狂気』の女性アーティスト

全米チャート570週にわたってランク・イン、結局トータル3千万枚売上げたピンク・フロイド『狂気(Dark Side of the Moon)』先日大ヒットした作品にもマイナーなアーティストが幾らでも絡んでいる 、という話をしましたが、ひとつ証明としてこのアルバムに主にバックコーラスで参加した女性ボーカリストたちのことを取り上げましょう。極論からいえば、このアルバムって(裏)女性ボーカル作品。 デイヴ・ギルモアのスペーシィーなスライドギターに、ブレンドされた彼女たちのコーラスに敬意を表して。


Pink Floyd

Dark Side of the Moon

【狂気に参加した女性アーティストたち】

◆Lesley Duncan

(レスリー・ダンカン)

Sing Children Sing

エルトン・ジョンとの関係で有名になった女性シンガーだが、1960年代初頭からセッション・シンガーとして、Donovan, the Rolling Stones のレコーディングに参加。Faces のGMレーベルのマネージャー、Jimmy Horovitz と結婚後、彼のプロデュースによる←左でソロ・デビュー。まったくアクを感じない清楚な声質が特長。数年前渋谷系DJによる再評価運動(?)があったけど、彼女の作品どれも外れなし。バックの音も、

Chris Spedding やGlen Le Fleur が参加するイギリス特有の薄めのハイセンス、きわめて趣味のいいもの。


Earth Mother

◆Doris Troy

(ドリス・トロイ)

彼女のソロ・ファールとアルバム(→)はビートルズのアップル・レーベルからリリースされている。このアルバムには、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、エリック・クラプトンも参加していることで彼女の名前を知っている人もいると思う。元々はアメリカ出身で、60年代 Atlantic からソウルのシングルを出した後、渡英した。


Doris Troy
彼女の真骨頂はゴスペル・シンガーとしての能力。70年代半ばまで数々のレコーディング・セッションに顔を出していたが、その後は数々のミュージカルに出演。「Mama I Want to Sing」がブレイクし、舞台の世界では、かなり名の売れた存在になったが、昨年没。追悼。

◆Clare Torry

(クレア・トリィ)
Claire Torry

クラッシック声楽を勉強中、30ポンドのギャラにつられてこのレコーディングに参加。歌詞も無く、ただコード進行を教えられて、即興で自分がリードギターになったつもりで歌え、と言われたらしい。彼女は勿論ピンク・フロイドというバンド名すら知らなかった

その録音が「狂気」のなかの名曲「The Great Gig in the Sky」であった!

その後、「狂気」のプロデューサ、アラン・パーソンズのお眼鏡にかなったようで、Alan Parsons Project『Eve』(1979)の1曲「Don't Hold Back 」でメイン・ヴォーカルをとったり、Culture Club 「 戦争のうた(the War Song)」などで歌っています。

◆Barry St. John

(バリー・セイント・ジョン)
70年代イギリスで活躍したセッション・シンガー。彼女の参加作品は確実なところで70枚はあるはず。 エルトン・ジョン、キキ・ディー、モット・ザ・フープル、デヴィッド・カヴァーディル、トム・ロビンスン、ジョン・ケイル、ケヴィン・エアーズ、デヴィッド・アレンなどなど。

割と渋めの声質だったり、エミー・ルゥ・ハリスのような高音が出せたり、とにかく歌の巧い女性だったのでしょう。彼女唯一のアルバムが→

『According to St.John』です。

Barry St. John

Barry St. John

※残念ながら入手困難

◆Lisa Strike

(リザ・ストライク)
Rainbow Testament

※残念ながら入手困難

顔写真が手元にない。彼女の顔写真自体、多分Kevin Ayers "June 1974" の裏くらいしかなかったような。彼女が参加したアルバムだけでも多分300枚以上あると思う。64年Liza & Jet Set のメインボーカルとして3枚のソウル系シングルを放つが、その後はず~っと裏方仕事。超有名どころでは、エルトン・ジョンやカーリー・サイモンの「No Secrets」、ザ・フー、ツトム・ヤマシタ「Go Two」、ディープ・パープルのメンバーの各ソロアルバムで彼女の高音が聞けます。残念ながら彼女のソロ・アルバムはないようですが、敢えて一枚を選ぶとすると←です。これは上述のドリス・トロイのゴスペル・ミュージカル作品で、リザが重要な役で出演しているため。彼女は物凄い仕事人ですが、名コーラス嬢であったため、ほとんど単独での声は聴くことができない。そのため、←のアルバムはかなり貴重なのです。


デビッド・ギルモアとケイト・ブッシュのコラボレーションって、実は「狂気」のなかに既に描かれていたのだと思う。


最近このブログが、Yahoo 登録されたのですが、ジャンルは音楽史 (←是非、見てくださいね)になっています(笑)。キャッチフレーズは「イギリス、アメリカから日本のポピュラー音楽史を女性ミュージシャンを中心に考察するウェブログ」。女性シンガーの歴史をたどりながらポピュラー音楽の歴史を語ることが目的なのです。頻繁にわき道にそれていますが、着々とこの研究テーマを進めていきたいと思ってます。


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