Jaz.in Vol.024でシーラ・ジョーダンの訃報を知った。初めて「Portrait」を聴いたときの衝撃は忘れない。トップの「Falling In Love With Love」である。この曲の絶対的名唱はメリルであり、粋に歌うなら姉御アニタ、美的表現はダイナ・ショアと相場が決まっていたので、パーカーのアドリブラインに乗せるかのような斬新な唱法に驚いた。
10年前の写真と「Portrait」のジャケットを掲載し、経歴等を詳しく書いているのだが、デューク・ジョーダンの名前がない。プライベートは別という見方もあるが、バップ・ピアニストである。麻薬癖が原因で離婚したとはいえ少なからず音楽的に影響があったはずだ。最期を看取った娘のトレーシーの父親はデュークなので載せるべきだろう。そして「シーラ」というカナ書きである。「Portrait」と75年の「Confirmation」は「シェイラ」と表記されていた。いつ変えたのか知らないが、初めてこの名前を見たときは別人だと思った。
原音に近い表記とはいえ、ある程度定着した呼び名が突然変わると戸惑う。俳優のドナルド・リーガンが、米国第40代大統領になった時は、米国大使館から正式に報道機関にレーガン表記とするよう申し出があったというが、Sheila Jordanに変えろと言われたわけではあるまい。女性の名前らしい「シェイラ」の語感がいいしカナ表記も美しいのに何故変えたのだろう。Dorhamはケニー・ドーハム、Donaldsonはルー・ドナルドソン、Motianはポール・餅餡。本当の発音はどうであろうとジャズファンの間で通じるのであればそれは正しい呼び名である。
追悼記事なのに逸れてしまったが、ジョージ・ラッセルにカーラ・ブレイ、ラズウェル・ラッド、スティーヴ・キューンと共演者は鬼才、異才と呼ばれるミュージシャンだ。シーンの主流を歩いたわけではないが、シェイラ・ジョーダンがジャズヴォーカルの可能性を広げたのは間違いない。享年96歳。合掌。
