1963年3月、俺は船内で当時の合衆国移民ビザを


Californiaで取得し40日に亘る海上での長旅から


タラップを降りて黒い大陸の最初の1歩を


Long Beachで踏んだ。


人、車、建物すべてが日本とは桁違いにデカク


緊張感よりもただただ圧倒されるばかりであった。


その当時のアメリカは、若くして大統領になったケネディー


のもと何かを自分たちの手で変革するんだという希望が


国中にあふれ当時中学生であった俺にもそれを何となく


感じる事が出来た。


しかし昨日今日この地に着いた若造の俺としては、


家族が一緒とはいえ何から始めるのか


さっぱり分からなかった。

40日間の太平洋横断の後、俺を乗せた移民船は、


California州のLong Beach沖に停泊した。


入国に関する様々な準備と入国審査官による船内の


検疫と危険物、植物、薬物の持ち込みが無いか


チェックが丸々1日かけて行われるそうだ。


夜の11時に到着した船のデッキに上がり見渡したそこは、


不安がそうさせるのでは無く、まさに黒い大陸としか


いい表せない。


そして黒い大陸のあちこちに希望を表現するがごとく


キラキラとした街の灯りが無数に見えた。

船内で勝手に英語を教えて時間潰しをしている男の


英語能力が向上したのは英語教師をしていた


男の祖父のアドバイスがきっかけだったとにわか授業の


合間に男の口から発せられた。


男が14才の時に受けたそのアドバイスとは、


「英語を本気で理解したいなら洋書でポルノ小説を読め」


というおよそ明治生まれの厳格な教育者から受けるとは


思えないひとことだった。


そして思春期の本能の赴くままそれ等の


洋書を読みあさった結果だったと


真面目な顔でいい放った。