Long Beachの港から20分程北上した所に


これから俺達家族が住む家が用意されていた。


当時日本で住んでいた家と比べれば広くも狭くも


無かったが周りの環境の開放感がガキの俺でも


分かる位に違った。なんせすぐ近くには、ゴルフコースも


備えたElDorado(黄金郷)なんて名の広大な公園が


広がっていた。


日本から持って来た多くの荷物を3人の男達が車の中から


次々に運んでくれていた。


港に迎えに来た時には、バリっとしたスーツで出迎えて


くれた男達だったが作業をする間に上着は脱ぎ捨てられて


いた。その後姿を眺めていた俺にハッとする光景が目に


はいってきた。


背中の刺青だ、見覚えの有るその刺青にフラッシュバック


が俺に起きた。3人の中の2人の男の虎と龍の刺青。


俺は、咄嗟に1人の男に声を掛けていた


「トラちゃん・・・」


「何だい坊っちゃん」


それは、5年振りの再会を果たしたトラちゃんとリュウちゃん


に間違い無かった。


9才の時から会っていなかった男達だ、俺が顔を忘れて


いたのも無理はなかった。


港ではよそよそしかった俺が駆け出して2人に抱きついた。





ガキの俺でも分かる位の豪華でやたらとでかいピカピカの


車が2台駐車された場所へ俺達家族は3人の男達に荷物を


持ってもらい案内された。


親父が「おーキャデラックか」と発したことばに男達は、


揃ってニコニコとした笑みをこっちに向けた。


カルチャーショックと長旅の疲れと何故かアメリカに居る


という事が急に襲いその場で座り込んだ俺だった。


自分の物では無いにしろ一目で心を奪われたキャデラック


凝視しながら震えていたのだ。


Long Beachに降り注ぐ太陽は俺達家族を暖かく迎えて


くれていたのだからその後の俺の人生を考えると


あの時の震えは、きっと武者震いに違いなかった。



ようやくLong Beachに上陸出来たものの


留学生でも有るまいしまずは、家を探す事から


始めねばならない。


何故俺達家族がアメリカの地へ移住しなければ


いけなかったかは、後で述べるにして最小限の


段取りは、日本に居る時から親父が組んでいた様だ。


船から下りた港には、家族の前で両足を開き気味で深々と


お辞儀をしている3人の男が涙を浮かべながら親父を


出迎えていた。


お袋も男達を知っている様でお礼と労いをいっていた。


又、男達3人は、俺達兄弟の事も何故か知っていて


「暫く見ない内に大きくなったなーと」


いいながら俺の頭を撫でたが俺には、男達の顔の


記憶が無かった。