みなさま、こんにちは。
ドゥカティ東名横浜 サービスフロントの村田です。
今日は整備のお話です。
さて、ドゥカティ と言えば、一般に日本車とは異なる機構を沢山使用しているようによく言われていますが、その最たる例がデスモドロミックシステムと、タイミングベルトであります。
このタイミングベルト、定期的に交換しなければいけない、ということを知らない方もいらっしゃるかと思います。
タイミングベルトは定期交換部品です。では、なぜ定期的に交換をしないといけないのか、今日はそんなお話をさせていただきます。
タイミングベルトとは、シリンダーヘッドのバルブを開閉を司るカムシャフトに、回転する動力を伝える部品です。ただ回転を伝えるのではなく、適切なバルブの開閉タイミング
を維持しなくては、エンジンがきちんと作動しません。非常に重要な部品なのです。
日本車の場合は、ベルトの代わりに金属のローラーチェーンを使っていますので、これらはカムチェーン、タイミングチェーンなどと言われます。また、パニガーレ系に積まれるスーパークアドロエンジンもカムチェーンを採用しています。
なぜ、ドゥカティがタイミングベルトを使用しているか、ということを説明するのに、かな~り長い話になりますから、これはまたの機会にしましょう。
一昔前では自動車ではタイミングベルトを採用しているのはごく当たり前のことでした。
当時、乗用車で10年10万kmごとの交換が目安でしたが、軽自動車や高回転型のスポーツカーのエンジンではもっと短く、5年5万kmの交換が推奨されていました。
ドゥカティの場合、近年の水冷モデルは5年30000kmまで交換サイクルが伸びました。昔は2年20000km毎の交換でしたが、シリンダーやヘッドの材質、エンジンの鋳造の精度やベルト自体に改良が進み、伸びづらく、破損しにくいように進化してきました。
それでも、ベルトである以上、切れてしまったりすることがあります。大半は異物の噛み込みで、亀裂が入り少しずつ裂けていくことが多いです。
この写真のケースでは幸いにもエンジンにダメージはありませんでしたが、このまま走行を続けていたら確実にエンジンが壊れてしまっていたでしょう。ベルトが切れてしまう、というのは最悪のケースですが、他にもタイベルを交換する理由は実は別にあります。
タイミングベルトだけでなく、カムチェーンでも同様ですが、ベルトやチェーンというのは伸びて、長さが長くなってしまいます。
伸びて長くなってしまったベルトでは、バルブは正確なタイミングで開閉しません。単に張力だけ張り直してもベルトの長さ自体は長いままなので、クランク側のプーリーとカム側のプーリ―までの軸間距離が長くなり、バルブタイミングにずれが生じてしまいます。
バルブタイミングはとてもシビアにできています。メーカーによると、新品のベルトと伸びたベルトではバルブタイミングが最大で6%ズレてしまう、と言われています。
そのため、ベルト調整時にバルブタイミングの狂いが無いように、2002年以降のドゥカティでは、可変カムプーリーという物が採用されています。
カムプーリーのセット穴が長穴になっていて、カムの位置を固定し、ベルトの伸びた分だけずらしてプーリーをロックすることで、ベルトの長さ変化によるバルブタイミングの変化がおきないようにしています。
また、任意のバルブタイミングに変更できるため、下の写真のような、自動車のレーシングエンジンや、ポルシェなどのカムスプロケットなどにも同じ物を採用しています。
この可変タイミングプーリーによって、ベルトの伸びの差や、シリンダーの個体差などにも柔軟に対応できるように設計されているのですが、これらを正しい位置に調整するためには正確な知識と、専門の工具が必要になります。
ドゥカティでは、エンジンに応じて、さまざまな特殊工具が設定されていますが、それはエンジンによってバルブタイミングが異なるからです。これらを使用しなければ適切なバルブタイミングに合わせることができず、張力だけ合わせても十分ではありません。
また、可変カムプーリーだからといっても、調整範囲には限界がありますし、ベルト自体も均一に伸びてくるわけではありませんので、ベルト自体に亀裂やひび割れがなくとも、新品に交換をされたほうが本来の性能を維持できます。ドライブチェーンはある程度伸びたら交換をしたほうが良いことと、同じということです。
そして、ベルトをただ交換するのではなく、適切なテンションと、バルブタイミングに合わせて調整する作業がタイミングベルト交換なのです。
当店では、皆様のドゥカティを良いコンディションに保つためにも、メーカー指定のサイクルでタイミングベルトを交換することをお勧めしています。
さて、長くなってしまいましたが、タイミングベルトにまつわるお話はこれでおしまいです。
タイミングベルト交換をはじめ、整備、修理、点検のご用命の方はお気軽にサービスフロント村田
までご用命くださいませ。
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