膝の治療に行き始めた頃、待ち時間用に読もうと思って買ったこの本を、
昨日喉の検査で名市大病院の待合中にやっと読み終えた。
膝のリハビリ・耳鼻科の吸入と、医者サーフィンのお供だったこれ、
2019年初版なんだけど、とってもいい本だった。
私達が物事を見るとき、
「10の思い込み本能」を通して見てしまうことを自覚する必要がある
と教えてくれる。
アシタカのように「曇りなき眼」で見定める…
というのはなかなか難しいのよね。
分断本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、
パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人捜し本能、焦り本能。
その10の思い込みを一つずつ、
上からではなく自身の過去の過ちなどを通して、
それがいかに危険なことかを軽妙なユーモアを交えて教えてくれた。
まるでロッキングチェアに座ったおじいさんの昔話を聞くように。
そう、読み終える頃には筆者に対して祖父のような親しみを覚えた。
しかし、読了した私を共著者のあとがきが突然の悲しみに突き落とした。
この本はハンス・ロスリングと息子夫婦の共著であり、
あとがきは息子の言葉で記されていた。
本書の語り部ハンス・ロスリングは
5年前にすい臓がんで他界していたのだ。
がんが発見されてからの1年半はこの本の執筆に捧げられた。
そのためにテレビ・ラジオ出演、映画制作、67本の講演すべてをキャンセルしたという。
この本は正に彼の遺言といえる。
人生全てを総集編し、「希望を持って、しかし冷静に歩いていきなさい」
と読者に愛をもってやさしく教えてくれている。
もう一度読み返さずにいられない。