駅に着くと、予報通り雨だった。


よくできた娘はずいぶん前からクルマの中で仮眠しながら待っていてくれたらしい。

できすぎた娘をアパートに下ろして、自宅へ到着と同時にPCオン。

面接のために、高速バスの便をネットで急いで変更。


数分後、息子が起きてきた。


物件の写真は山ほど撮ってきたが、今見せるのは酷な気がした。

それよりも話が先だ。


クルマの中っていうのは、特別な空間だよね。

たぶん、向き合ってないから話しにくいことが話せるんだな。


駅に向かいだしてすぐに


「いろいろ素敵な物件見せちゃったけど、

お母さんの収入では無理だった。(多分半分以上ホントだと思う)

ちょっと最初と違っちゃったけど、ごめんね。貧乏ですまん」


と、言ったもん勝ちなセリフを先手必勝で並べた。 いや~、ズルいよね、私。

でもこれがお互い一番怪我が少なく済むと、バスの中で考えた結論なのだ。



雨の中、息子を駅に降ろし、後ろ姿を見送って帰宅。爆睡。


気がついたのは午後2時過ぎ。伯母からの電話だ。

「一日違ってたら大変だったね。本当に昨日来ててよかったよ」


… え? 話がまったく見えませんが。


「今日はすごい雪だよ。うちの庭は30センチぐらい積もってる」


… は!?


電話を切ると、息子から2通もメールが来てた。



「雪やばくて午後の授業中止になった」


「さすがに今から高速バスの時間変更は無理だよねー」


… そうか、私が早く気づいて返事してたら面接時間ずらしてもらって

早く帰って来れたかも。だがしかし、すまんこってす。

すでに正常に授業終了の時間とほぼ同じでんがな。


とにかく帰りのことは忘れて面接に向かうよう指示出し。

面接の不動産屋さんと時間調整。


そしたら、今度は頼りの京王線が遅れまくり。

時間を前倒ししてもらったのに、逆に遅れることに…。orL なんてこった!


寝起きの頭がちゃんと回らないーっ。そんなこと想像ついたのに!


今度は帰りの足の心配。交通網を監視。

高速バスの時間を再度変更するか、それともキャンセルするか…

もう中央道の高速バスは午後2時には運休した。


東名高速は? どうなる? どうする?


時間変更できるギリギリの時間になって、東名のバスも全て運休となった。

新幹線はまだ動いてる。


買う時はwebで簡単なくせに、払い戻しは東京駅か名古屋駅で1ヶ月以内だと!

ムカつくけど、仕方ない。その戻り分にプラスして新幹線でVIP帰宅していただくか。


しかし、高速パスや羽田の客が全部流れるとしたら…乗れるのか?

座席指定取った方がいいのか?

いや、それは学生にはぜいたくなのでわっ!


ひかりなら1時間半。立ったままでもたかが知れてる。

でも、こだまだとどんだけかかるんか?

そもそもまだ何時に東京駅まで戻ってこられるかが定かでないのだぞ。


などと、あれこれ考えるも、頭のクロック数が追いつかない。


そのうちに息子から電話が。


「面接おわったー。折りたたみ傘壊れた。店のおじさんが傘くれたー」

と、相変わらず、気の抜けたサイダーのような報告が。

でも、声の感じからして、息子もまんざらでもなさそう。


パソコンが得意なら今度手伝って欲しいことがあると頼まれごとまでされてきたらしい。


やはり物を買うのは、人を買うことなのね。

物件より、おじさんを先に気に入ってくれたらしい。

よかった。一安心。


そうは言っても相手のあることなので、首をしっかり洗っておかねばね。


チケット払い戻してるあいだに新幹線チケット売り場に人だかり

1時間並んで、ひかりは売り切れ。

それでもなんとかこだまの座席をゲット出来た息子が

安全運転の新幹線で帰ってきたのは9時過ぎだった。


東京の洗礼を受けた一日だったみたい。

でも試練をもらったってことは、歓迎されたってことで。


何ごとも最初に辛いの味わっておけば後は楽さ。

よかったね!


無事帰宅して、家族三人でミスドをつつく。

至福のひととき。

長かった連休が終わろうとしていた。




娘から二日連続で私、息子が借りたsuicaに

必要以上に私の金をチャージしおった息子め!

二人で結託してないだろうな! 許さんぞ!