このところ、「えっ? いつのどこの事件のこと?」

と、聞かないと、話が成り立たないぐらい増えている

母親による子殺し。


この手の事件が増えるよりずっとずっとずっと前から

私には個人的に見過ごせない風景が

すぐ身近にしばしばあった。


それは、一見微笑ましい母と子の散歩風景。


同じ母親でも、それを見て、

何も気にならない人もいるということに

これまた驚愕してしまうんだけど、


何に戦慄するかって、立ち位置の間違いなのよ。

車道側に幼い子供、歩道側に自分。


こういう立ち位置で散歩している親子を

見かけるたびに吐き気がするぐらいの違和感を感じるの。


守るべき立場の者と、守られるべき者。

これはもう、育児教室で教えるとか、

おばあちゃんが教えるとかいうレベルの問題ではないの。


本能的なものよ。

自分よりも弱いものを保護しなくてはいけないという

本能が欠落してるのよ。


これを見るたびに私は心底恐ろしくなる。

心が凍りついてしまうのよ。


母性本能というのは学習しないと身につかないものらしいけれど

これはもっと原始的なものだと思うの。


カワイイ動物の赤ちゃんなどの写真を見たあとは

集中力が高まるという実験結果が最近得られたそうだけど

そういう類いのものだと思うわ。


自分より弱く小さなものを守らねばという本能にスイッチが入って

集中力が高まるのではないかと、見られてるそうね。


種の保存のために、すべての動物に備わったものだと思うの。

なのに、万物の霊長とかフカしてる人間がそれを失っている。


いくつになっても、母になっても

自分は一番守られるべき存在であると

その姿は私に語りかけるの。


叫び出したいぐらい恐い風景よ。

心と頭が混乱して、どうにかなりそう。



あの手の事件の根元にそんな下地があるような気がしてならないの。

親も子供もかわいそう。


「自分より大切に思えるほどの宝物が、私にはある」

という幸せを自覚できないなんて

せっかく子供を生めたのに、こんな悲劇はないわ…




なぜ私がこの風景が恐いのか

書いてて今、分かったわ。


頭の片隅に、大天使ガブリエルが舞い降りて

にこやかに、でも冷ややかに言うの。

「ヒトが滅びるのはもうそんなに先のことではありませんよ」


飛び立つその手にはラッパを持ってるのよ。


…私、ぬるい仏教徒なんだけどさ。