『江戸生艶気樺焼』(えどうまれ うわきのかばやき)は山東京伝(1761~1816)により天明5(1785)年に書かれた黄表紙です。

挿絵の原画も山東京伝自身によるとされます。(北尾政演は浮世絵師としての山東京伝の号)

黄表紙とは軽めの面白話を扱った本で、黄色い紙が表紙に用いられたことから黄表紙と呼ばれます。

 

『江戸生艶気樺焼』あらすじ

大金持ちの独り息子だがブサイクな艶二郎は、新内節(浄瑠璃)の人気演者のように自分も浮名の立つ(女性関係で話題になる)ようになれないかと思い、様々な方法で話題になろうとします。

妾をかこってみたり、吉原で遊んでみたり、親に勘当されてみたりするが、いっこうに話題になりません。

ついには女郎とともに心中をしてみせようとするが、そこを泥棒に襲われ身ぐるみはがれてしまいます。裸で家に帰ると、実はさきほどの泥棒は艶二郎の父親と番頭で、艶二郎をこらしめるためだったとわかります。

ここで艶二郎は反省し、見受けした女郎を妻にして堅気になるというオチです。

 

山東京伝自身による挿絵には、鼻の低いブサイク顔だけどどこか憎めない感じの艶二郎が描かれています。

 

ところで『江戸生艶気樺焼』には、ウナギも蒲焼きも出てきません。

『江戸生艶気樺焼』(えどうまれ うわきのかばやき)というタイトルが「江戸前鰻蒲焼」(えどまえ うなぎのかばやき)をもじっているのです。

 

物語の中にウナギや蒲焼きは出てきませんが、天明5(1785)年ごろには語呂合わせに用いられるくらい「江戸前鰻蒲焼」という言葉が使われていたことがうかがえます。

 

※画像は文章を活字にあらためた翻刻版です。原本はいわゆるくずし字で書かれています。