アメリカで、また政府機関の閉鎖の可能性が高まってきているのはご存知のことと思います。またか、という感じでいつも通り茶番と言いますか、政治家のパフォーマンス的な要素が強いのであまり与野党の主張とか話の流れなんかについては取り上げるのは避けようと思っています。あまり騒ぎたくないというのが本音なんですが、一応、経済にどういう影響がありそうかということについては知っておいた方がいいでしょうということで、今回はアメリカの政府機関閉鎖の影響などについてお話ししたいと思います。

この政府機関の閉鎖は6月頃にも行われたよね、というのを覚えている方も多いと思います。6月の時はいわゆる債務上限問題、国債発行の上限を引き上げる法案を巡って話し合いが難航しまして、国債が発行できなくてお金がないので政府機関が閉鎖されるみたいな形になりました。その件は合意しまして、債務上限が引き上げられて国債の発行ができるようになりましたので一旦問題は解消された形です。しかし、今回は予算案を巡って与野党が対立していまして、予算が決まらないのでお金が払えなくなる可能性があって、今月中に合意できないと10月1日から一部の政府機関が閉鎖される形になるとみられています。

 

2013年のオバマ政権の時も10月1日から政府機関が閉鎖されたことがありました。この時は医療改革などを巡って与野党で合意できなかった形でした。この時は10月13日まで13日間政府機関が閉鎖されました。政府機関が閉鎖されて経済には大きな影響があるとみられています。数百万人の政府職員が給与を受け取れなくなりまして、さらに民間の請負業者にもお金が支払われなくなります。1日あたりの経済的損失は19億ドル、日本円で2800億円にも上るといった試算もあります。給与の受け取りができないのは現役軍人130万人も同様で、消費に大きな影響があるとみられています。米連邦航空局で17000人のスタッフが休みになって空の便にも影響が出るとか、色々なところに影響が出ると見られています。

 

ただ、マーケット関係者が気にしているところは、そうした実体経済への下押し圧力というところだけではなく、もっと別のところを心配する向きが多くなっています。マーケット関係者の間では何が注目されているかといいますと、経済統計です。例えばFRBの金融政策に大きな影響を与える9月の雇用統計が10月6日に発表される予定になっていますが、これが発表されない可能性があります。発表する統計局が閉鎖されてしまうためです。また、その翌週の10月12日には9月の消費者物価指数が発表される予定になっています。これも発表されないと相場の見通しも縦づらくなります。そして、この消費者物価指数については債券市場では大きな影響を受けるものがあります。それは物価連動国際と言われているものです。物価連動国際というのは、満期になった時に帰ってくる額面金額が物価水準によって変動する仕組みになっています。その物価水準というのが消費者物価指数を用いていまして、消費者物価指数が発表されないと物価連動国債の価格が計算できないという事態が生じる可能性があります。そうなった場合には一時的に別の機関が計算したデータを用いることなどが検討されているみたいですが、混乱するのは避けられないでしょう。物価連動国債の市場というのはそれほど大きなマーケットではないので、そこまで大きな問題ではないと思いますが、一応こういう問題もあるということをお伝えしておきます。

 

そして、統計データが出ないということだけではなく、統計データにブレが出る可能性があるということも懸念されています。例えば、消費者価格指数の集計などにおいて、十分な価格データを集められなくて指数がぶれる可能性などを心配する向きがあります。2013年の時は13日間政府機関が閉鎖されたことで、消費者物価指数のサンプル数が通常よりも1/4程度少なかったと言われています。一方、一時的に失業するような人たちも出ると見られますので、労働市場の動向を読むのも難しくなると言えるでしょう。そして、政府機関の閉鎖が解消されると、雇用統計についてはすぐに発表される可能性が高いものの、消費者物価指数は少なくとも2週間以上かかるという見方が多くなっています。

 

ということで、今回の政府機関閉鎖の問題は、今FRBがデータ次第で金融政策を決めると言っている中で、そのデータが出なかったり怪しいものになってしまったりするという可能性があり、FRBの金融政策においても厄介な問題になってきています。データがなかなか出ないということになったら金融政策動くに動けないで、データが出たとしてもイレギュラーな数値になってしまっている可能性があるので、そのデータだけで判断していいのか、そういうことになってくるでしょう。

 

そして、このほかにもう一つ影響がありそうなのが、米国債の格付けです。大手格付け会社のムーディーズは、政府機関の閉鎖が長引くことは米国政府のガバナンスの弱さの表れであり、格付けにとってマイナスの影響を与えるとの認識を示しています。8月1日に大手格付け会社のフィッチが米国債の格付けをWBプラスに格下げしました。この格下げした要因も6月の債務上限問題をめぐる与野党の対立というのが影響したとされています。今回も対立が長引けばまた格下げされる可能性があるでしょう。今大手格付け会社の米国債の格付けは、フィッチがダブルA+、S&PがWA+、そしてムーディーズだけがトリプルAの格付けを付与しています。このムーディーズが政府機関閉鎖は格付けにとってネガティブだという見解をわざわざ出していますので、問題が長期化した場合、ムーディーズによって格下げされる可能性が高まるかもしれません。

 

この辺りが10月1日からアメリカの政府機関が閉鎖される可能性がある中で、影響が心配されていることです。いつも茶番というかある程度騒がれる形になると思いますが、どのあたりで決着するのか行方を見守っていきたいと思っています。