ギリシャといえば、皆さんアテネの観光地などを思い浮かべる方が多いと思います。そして、ギリシャの経済については2010年頃の欧州債務危機で一番大変な状況になっていた国の一つでしたので、財政経済が悪い国、そんなイメージがあるんじゃないかと思います。ただ、最近、財政状況は大きく改善し、経済が非常に好調なのはご存知でしょうか?

 

9月15日、大手格付け会社のムーディーズはギリシャの格付けを2段階引き上げましてWB+にしています。ギリシャはなぜ復活できたのか、本日はギリシャ経済についてお話ししたいと思います。

 

まず、簡単に2010年頃にあった欧州債務危機の時の状況を振り返りたいと思います。この欧州債務危機というのは、1999年に始まった共通通貨ユーロの問題といってもではないものでした。どういうことかと言いますと、ギリシャをはじめ、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの国は当時非常に国家の財政状況が悪化していました。

 

その一つの要因は国内経済の低迷です。共通通貨ユーロは加盟国みんな一つの通貨を使うわけですが、経済の弱い国にとってはユーロは高すぎるし、経済の強い国にとってはユーロは安すぎるという問題が起こりました。通貨は発行国の信用力に裏付けされて価値が決まるので、ユーロの信用力はすべての構成国の信用力の加重平均になります。結局、ドイツなどの経済力のある国は経済力があるにも関わらず、生産したものを安く売ることができます。一方、経済の弱い国は輸出するときに物を高く売らなければいけなくなるわけです。

 

1999年にユーロを導入してから、徐々に財政状況が悪化していく南欧の国が増えました。しかし、2008年のリーマンショックをきっかけにその悪化に拍車がかかった形です。ユーロ圏の構成国はなんやかんや言っても財政状況が悪くなっても最後はドイツやフランスが支援する形になるんじゃないのかというユーロという共通通貨ができたことで、ギリシャやイタリアの国債なんかが過大評価されてしまうという状況が起こっていました。

 

投資家たちが我に返り、ギリシャ政府債務の投げ売りが2009年頃から始まりました。結局、2011年頃まで深刻な状況が続きましたが、その後もこれらの国では時間をかけて財政再建を進めていますので、まだ続いている問題でもあります。イタリアなんかは今でも財政状況は全然改善していませんでしょう。

 

ギリシャの状況ですが、リーマンショック前の2007年に政府の債務残高はGDP比103.9%でしたが、2011年にかけて175.2%まで急激に増加しました。そこからECBのサポートなども受けながら財政再建を進めてきた形です。2019年にかけては185%と緩やかな上昇にとどまっていましたが、2020年のコロナショックによって212%まで上昇しました。しかし、その後、2021年は200%、2022年は177%、2023年は166%まで回復する見込みになっています。

 

この財政状況の改善には経済が好調であるということも大きく寄与しています。ギリシャという国は相変わらずあまり大した産業のない国です。国内経済の4分の1が観光産業だと言われるほど観光に依存している国です。で、この観光産業がこの10年で非常に成長したこと、これが財政健全化に非常に大きく貢献したとみられています。

 

2010年代、観光客が非常に大きく増加しました。これはLCCなどの格安航空が増えて、ギリシャだけではなくヨーロッパ全体として観光客が増えたというのもありますが、ギリシャが観光産業のさらなる発展に取り組んできたというのも大きく影響しているとみられています。

 

ギリシャの外国人観光客の数は2023年に3000万人と予想されていて、コロナ前の2019年の3400万人にはまだ届かないものの、急回復してきています。2010年が1500万人だったことや、ギリシャの人口が約1000万人であることを考えると、ギリシャが観光客の増加に取り組んできてそれが成果につながったことが分かります。

 

ちなみに、ギリシャという国は中国の一帯一路構想の欧州の要的な位置付けになった国です。2010年代、ギリシャは経済の立て直しを図るために中国や日本に頼ろうとしました。ギリシャ最大の港を運営する会社の株式の大半を中国海運大手コストグループに売却するなどして、急速に距離を縮めました。しかし、その後、ギリシャ側が政権交代したことや中国から期待していたような投資が行われていないということから、最近はギリシャと中国の関係はやや距離ができているようです。今後は金の切れ目が縁の切れ目といった形になっていくのかもしれません。

 

2023年のギリシャのGDP成長率は、第1四半期が前年比+の1.8%、第2四半期がプラスの2.9%となっています。同じ期間のドイツはプラス0.1%、フランスはマイナスの0.6%です。ギリシャが好調なのがお分かりいただけると思います。

 

経済成長率も好調で、財政状況も改善してきている形ですが、これで不安がないというわけではありません。先ほどもお話しましたように、観光産業が国内経済の4分の1を占めるということで、この分野が好調なうちは経済が良くなりますが、景気に対して非常に敏感である可能性があるでしょう。また、観光産業に関しては、ギリシャでもすでにオーバーツーリズムの問題が指摘されるようになってきています。人口1000万人の国で観光客が3000万人も来たら、さすがにいろいろな問題が出るでしょう。特にギリシャはたくさんの島があり、そこにクルーズ船で訪れる観光客も多く、クルーズ船のオーバーツーリズムや環境問題なども指摘されるようになってきています。ですので、この観光産業が今後もどんどん伸ばしていけるかということをギリシャは目指しているようです。

 

ギリシャの財政状況が大きく改善しているという話から、日本に生かせる部分があるかというのは皆さん考えるところだろうと思います。ただ、日本とは決定的に異なる部分があり、それが人口です。このギリシャという国は人口1000万人ということで、ヨーロッパの中でも人口の多い国ではありません。イギリスは6700万人、ドイツは8000万人、フランスは6700万人、イタリアは6000万人などとなっています。日本は1億2000万人ですが、いろんな国の政策などを見てきた印象では、人口が1000万人ぐらいと少ない国というのは5000万人以上いる国と比べていろいろなことが非常にスピーディーな傾向があります。

 

ギリシャの経済規模は日本で言うと神奈川県ぐらいだとか言われますが、ちょっと海外からの資本が入ったり、ちょっとしたことのきっかけで大きく改善できる場合があります。また、そもそも経済規模が大きくなく、そんなに強い産業がない国ではやれることが限られるので、逆にシンプルというか、今回のギリシャで言うと観光しかないので、注力すべきことがはっきりしているというのがあって、改革もしやすいというのがあると思います。

 

ですので、こうした小規模な国の例は必ずしも日本には当てはまらないことも多いというのが私の認識です。とはいえ、2010年頃、財政悪化でデフォルトするんじゃないかと言われていたギリシャが今経済が好調で政府債務も減少してきているということで、大きく状況が変わってきているのがお分かりいただけると思います。一方、イタリアなんかはいまだに財政状況が悪いままで、かなり明暗を分かれた形です。

 

ユーロ圏経済については様々な問題を抱えているのは以前からこのチャンネルではお話ししてきた通りです。ドイツやフランスなどの主要国以外の国で起こっていることも機会があればまたお伝えしていこうと思います。