ロシアが欧米の経済制裁を逃れて、むしろ経済が潤っていると言われていますが、なぜロシアはそうしたことが実現できたのか、色々な要因がありますが、その中の1つにロシアの原油の取引価格に上限を設けるという西側の制裁がうまく機能していないというのがあります。

 

最近言われているのは、闇タンカーの存在です。この闇タンカーは、国際社会と世界経済を見る上で重要な要素が詰まっているようにも見えます。今回はロシアの原油を運ぶ闇タンカーについてお話ししたいと思います。

 

この件は、フィナンシャルタイムズなどが報じたことがきっかけで注目されるようになっています。西側諸国ではロシアへの制裁の一環で、ロシアの原油に60ドルという上限価格を設けています。価格に上限を設定することで、それ以上高い値段では買わないようにして、ロシアに設けさせないようにしようという制裁です。これは2022年9月にG7で合意し、2022年12月から実施されています。

 

では、どうやって60ドルの価格上限を設けているかと言いますと、損害保険会社に60ドルを超える価格で取引されたロシアの原油を運ぶ単価には保険を提供できないようにしている形です。損害保険の業界には再保険会社というのがあり、その再保険会社に保険の提供をストップさせることで、全ての損害保険会社にリスクヘッジができないようにして保険の提供をできないようにしている形です。こうした仕組みでロシアの原油に価格上限を設けているわけですが、逆に言うと無保険の船舶であれば運べるということになります。

 

無保険のタンカーというのはなかなかリスクの高い仕事です。海賊などに襲われる可能性もありますので、保険をかけずに船を航行させることは通常ありえないことです。しかし、これは私たち先進国の大企業の感覚で言うとそうなるんですが、危なくても儲かるならやりたいという人たちが必ず現れるものです。イギリスメディアのガーディアンなどの調査によれば、現在、500隻以上の無保険でロシアの原油を運んでいる船があるということです。

 

では、誰がこの無保険でロシアの原油を運んでいるのか、よく言われているのは中央アフリカのガボンという国です。ガボンは、人口228人の小さな国で、元々はフランスの植民地でした。1960年にフランスから独立し、1967年から41年間オマール・ボンゴという人物が大統領を務め、2009年からはその息子のアリ・ボンゴシが大統領を務めています。50年以上にわたり、この一族の独裁体制が続いています。しかし、2023年8月にクーデターが起こり、現在は軍が実権を握っている形になっています。

 

ガボンという国は、ボンゴ大統領の時代からロシアと密接な関係を築いてきました。西側がロシア産原油の価格に上限を設けることが決まる前から、このガボンでは船舶登録の規制を緩和し、船の数を倍増させているということです。老朽化した船舶などを買い集めてきて、積極的にロシアをサポートしているとされています。積載量1万トン以上のガボン船の98%が闇タンカーとして、ロシア産原油を運んでいるという見方もあります。

 

現在、ロシアとサウジアラビアは原油の生産を抑え、原油価格を釣り上げていますが、その背後にはこうした闇の原油取引があって、西側の制裁が効いていないという形になっています。原油が高くなり、ロシアは普通に潤っていて、そして無保険でロシア産の原油を運ぶガボンなどの小さな会社も儲かっているという状況になっています。

 

では、ロシア産原油が市場価格よりも少し安い値段で提供されていれば、それを購入する国も増えるでしょう。特に、闇取引を行う人たちはこの状況に満足しています。唯一コスト高く苦しんでいるのは制裁を加えている西側諸国という状況になっています。

こうした経済制裁などで無理やり価格を押し下げたり、取引できなくしたりすることを行っても、制裁の抜け道というか闇取引のようなものが必ず出てくるというのが実情です。先日、ウクライナの農作物が東欧経由で輸送するはずが、安価なウクライナの農作物がポーランドなどの国に流れて問題になっているという話をしましたが、これは経済制裁の話ではありませんが、そこに価格差が生じて設けるチャンスがあるなら、なんとか規制を買って設けようとする人たちが現れ、そして売りたい人と買いたい人がいて、運ぶ人も儲かるなら、これを完全に防ぐのは非常に難しいのが現状です。

 

価格差が生じる場合には、闇取引が行われるようになるという意味では、戦中の日本の闇市も似たようなものかもしれません。国内で物資が不足し、インフレに見舞われて、政府は社会の混乱を落ち着かせようと食料品などを配給制にして価格コントロールをしようとしたわけですが、結果として闇市ができました。私の知り合いでヘッジファンドのマネージャーをしている人がいます。ヘッジファンドには色々な種類がありますが、その中でアービトラージという戦略があります。アービトラージというのは、日本語で最低取引とか言われますが、先物と現物の価格差など、同じものなのに異なる値段がついているものなどで、高い方を売って安い方を買うことで利益を上げる戦略です。同じものなのに値段が異なっているものを見つけてきて反対売買を行うことで利益を上げます。同じものなのに値段が違うわけで、取引をした時点で利益が確定する場合が多いです。アービトラージは市場の価格設定の間違いを見つけてきて反対売買をするだけで儲かるビジネスなので、想像力が求められるような仕事ではありません。そして、そうした簡単に儲かる取引をやりたい人たちは世の中にはたくさんいます。私の知り合いでももう昔の話になりますが、アービトラージ系のヘッジファンドで原油を単価ごと買っていた人がいたのを記憶しています。

 

ですので、こうした経済制裁で無理やり価格を抑え込むとしても、アービトラージたちに設けるチャンスを提供しているだけに過ぎないというのが実情です。政府などが無理やり価格に制限を加えようとすると、こうしたことが起こるということを知っておかれるといいでしょう。西側諸国の制裁によってアービトラージの機会ができることで、むしろそこで設けようとする人たちも出てきて、制裁の抜け道ができてしまう、というのが現状です。

 

ということで、ロシア産原油の価格上限などの制裁が効いていない要因がお分かりいただけたでしょうか。価格に上限を設けることで、逆にそこにビジネスチャンスが生まれ、そうしたところで設けようとしている人たちがいるというのが実情です。政府などが無理やり価格に制限を加えようとするとこうしたことが起こるということを知っておかれるといいでしょう。国際強調路線の欧米のリベラル派が陥りやすい地雷マインドと言えるでしょう。

 

今回はロシア産原油を闇タンカーが運んでいて、ガボンなどの国が関わっているということについてお話しました。今後とも、経済制裁などでの価格調整が難しい状況について、理解を深めていただければと思います。