円売りが「カード出し尽くし」を迫る
現状維持ならば円売りが進み、引き締め措置を講じても不十分と解釈されればやはり円売りが進む。円売りを通じて引き締めを催促した投機筋は、日銀がそれを実際に決断するタイミングで円買いに転じれば、収益機会に恵まれる(それが為替介入を伴えば、さらに大きな機会になりえる)。
円安がある限り、「毎回がライブミーティング」という厄介な状況が続くだろう。過去、執拗な円高に対抗する最中で緩和カードを出し尽くしたのが白川体制であったが、植田体制はこの逆に構えることになる。
現状の日本では、政策金利はマイナス、貿易収支は赤字、経常収支もキャッシュフローベースで見ればおそらく赤字という状況にあり、円安は基本的にファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映した相場現象と言わざるをえない。
もちろん、円安相場がファンダメンタルズに即したものであるとしても、「1ドル=145~150円」というレンジが果たしてフェアバリューと言えるのかという議論はあろうが、円安の流れを一変させる妙手を日本が持つわけではなく、基本的に「座してアメリカ経済失速を待つ」というのが唯一にして最大の解決策であることは、今後も変わりようがない。
結局、マイナス金利解除はいつになりそうなのか。
従前から目された通り、あるとすれば「2024年4月の春闘を待って判断する」というのが基本シナリオになるのだろう。だが、黒田前総裁の時代から「2%物価目標と整合的な賃上げ率はベースアップ(ベア)で3%」という前提がある。
2023年の春闘は30年ぶりの上昇率を確保しつつも、ベアは2%強だった。春闘の交渉は大企業を対象として2月から開始され、中小企業を含めた結果が3月末をめどに終結する。つまり、参照される物価上昇率(CPI)は2024年1月分や2月分ということになる。
この点、2023年1月のコアCPI(生鮮食品を除く)が4.2%であったのに対し、例えば2024年1月分は半減するとの見通しが濃厚となっている。現時点で2024年春闘において「ベアで3%」を実現する可能性はメインシナリオに置きづらいだろう。
とすれば、緩和解除の条件が「賃金上昇を伴う2%の物価目標の持続的・安定的な実現」である以上、今から半年程度でそれを見通すのは現実的ではない。