新田次郎氏のこの作品、これまで氏の作品を読み込んできた私としては、古本屋さんで見つけたら
即買いするリストのTOPに位置している作品でした。
この本には、1956年の直木賞受賞作品である強力伝を含む全6作品が収められていた。平成18年69刷
当時438円の本であったが、古本屋BOOKOFFであるが、350円で販売していた。本の中身をみると、前に
持っていた方のメモや、ストーリー上重要と思われる箇所に傍線が記入された状態の本である。
それが350円。高価買取という文字につられ、私は、BOOKOFFに小説や雑誌などを売りに行く事がありま
したが、その2回とも本への記入や線が引かれた本は、買取できないと言われたことを記憶している。
こういう事からして、値段のつかない本を、値段をつけて普通に販売しているBOOKOFFさんのやり方が
ちょっと、納得できないかんじではあるが、まあ、ここではそういうことをいうのをやめにしよう。。
新品に近い上下巻セット本も、下巻だけ値段をつけ、上巻は買取しないところをみると、値段をつけな
くても、どうせ、最後に古本だからという事で置いてく人が多い事を知っているからそういうとり方を
するのだろうとかんぐってしまう。なんか、この古本に対する価格感が、どうしても腑に落ちない私では
ありますが、新田氏のこの作品を読みたいがために購入した。
強力という仕事が、かつて存在した事を、実をいうと私は、新田氏の小説に出会ってから知りました。
とてつもない仕事だなぁと。同じ人間であるのに、普通の人間ができない事を引き受ける職人。それが
強力なのだなと。ある意味、人間を超えた超人だなと。
ここで登場する強力小宮さんは、霊峰富士の強力にして最強の逸材でした。その人が、アウェーのフィールド白馬で50貫(1貫=3.75Kg)もの巨石を運び上げる仕事に命をかける。白馬の強力さんたちができないと断った仕事を引き受けた以上、必ず運び上げなければ霊峰富士の強力としての自分、仲間たちの誇りに傷をつける事になる事を承知で挑むわけだが、誇りをかけた命がけの仕事を見事に達成した、小宮さんの精神力の強さに、私などは惚れ込んでしまいました。それに、自らの仕事を確認しおえたあと、朦朧とした意識とふらふらな体を従え、岩壁から血のように赤い小水をするところも、白馬を征服したぞという意思の現われのようにみえ、彼自身の誇りを保つ事ができた事を、自身で喜ぶための行為であった用に思え、なんとも豪快な人だったんだろうなと、想像を掻き立てられました。
小宮さん故郷足柄に伝わる伝説の人、金太郎と自分を重ね合わせているとのことだったが
私は、武蔵坊弁慶をイメージしました。
とにかく、具体的な描写によって描かれた迫力のあるストーリーで、とてもわくわくして読めました。
このほか、八甲田山は、後の作品になる八甲田山死の彷徨でより迫力ある作品として世に出てており
先に、そちらを読んでいる私には、こういうストーリーを執筆した上で、あの作品が仕上がっていた
のかと、氏の作品について少し知識が広がった気になれ、ちょっとうれしい気がしたものです。
凍傷という作品は、富士山観測所の建設に尽力し、生涯をそれにささげた技師の話であるが、心打つ
話であった。さまざまな人の強い思いがあってこそ、大きな仕事は成し遂げられることを言いたかった
のであろうと思った。
落とし穴は、ある日落とし穴に落ちた万作が救われる寸前にかみ殺された話であるが、ある日突然、
自分を取り巻く現実が、変わってしまうストーリーが、どことなくカフカの変身を思いおこさせる作品であった。ザムザは朝おきると芋虫になっていたのだが、ここでは、万作は、酒を飲んだ帰りに落とし穴に落ち、山犬と対峙する羽目になる。変身譚ではないが、現実が摩り替わった悲しい男の話というところは似ているように思えたのだ。万作の油断は金により生じたわけであるが、二兎を追うもの一兎も得ずの諺の如く、金と命を天秤にかけねばならない状況においては、命を選べという氏の提言であったのだろうか。なんといっても命あってのものだねであるから・・・・
山犬物語は、かつて山で生活するときには、こんな災いがあったんだなという事を思い起こさせるストーリーだった。かつて日本のやまにもオオカミがいて、山犬もいて、人は度々襲われたんだということ、現代に生きる我々には想像もできない事だ。それらを敵視している時代、間接的とはいえ娘の死に関係する山犬を仇として殺す太郎八と妻の気持ちもわからなくもない。しかしあだ討ちに成功したと思われたが、最後は妻も太郎八自身も山犬に噛まれたが為に死んでしまう結末に、やるせなさを覚えた。氏は、きっと殺生の無益さを問いたかったのだろうと思うしだいだ・・・
最後に、孤島。これも面白かった。孤島の気象台の男たちの苦悶の日々を、ここまで臨場感を持って
描写できる氏の想像力はすごいなと。
氏自身、いわば陸の孤島である富士山観測所での生活経験があるとのことなので、きっとそこでの
経験をベースにストーリーを組んでいったのに違いないと思った。
やはり、何ヶ月にも及ぶ孤島での男所帯はつらいだろうなと、ましてやテレビもない時代ですからね
娯楽もないなかでそういう環境で生活するのは、私自身、考えると恐ろしくなるところです。
氏の作品には、これまで私が呼んできたもの以外に↓の作品があるとのこと。
・栄光の岩壁(上・下)
・先導者・赤い雪崩
・アイガー北壁・気象遭難
・アルプスの谷 アルプスの村
・銀嶺の人(上・下)
・アラスカ物語
・珊瑚
古本屋で見つけしだい読んでいきたいと思います!
ていうか、Amazonで見つければいいんだよね・・・別にBOOKOFFに
こだわらずともいいじゃんね。
強力伝・孤島 (新潮文庫)/新田 次郎

¥500
Amazon.co.jp
即買いするリストのTOPに位置している作品でした。
この本には、1956年の直木賞受賞作品である強力伝を含む全6作品が収められていた。平成18年69刷
当時438円の本であったが、古本屋BOOKOFFであるが、350円で販売していた。本の中身をみると、前に
持っていた方のメモや、ストーリー上重要と思われる箇所に傍線が記入された状態の本である。
それが350円。高価買取という文字につられ、私は、BOOKOFFに小説や雑誌などを売りに行く事がありま
したが、その2回とも本への記入や線が引かれた本は、買取できないと言われたことを記憶している。
こういう事からして、値段のつかない本を、値段をつけて普通に販売しているBOOKOFFさんのやり方が
ちょっと、納得できないかんじではあるが、まあ、ここではそういうことをいうのをやめにしよう。。
新品に近い上下巻セット本も、下巻だけ値段をつけ、上巻は買取しないところをみると、値段をつけな
くても、どうせ、最後に古本だからという事で置いてく人が多い事を知っているからそういうとり方を
するのだろうとかんぐってしまう。なんか、この古本に対する価格感が、どうしても腑に落ちない私では
ありますが、新田氏のこの作品を読みたいがために購入した。
強力という仕事が、かつて存在した事を、実をいうと私は、新田氏の小説に出会ってから知りました。
とてつもない仕事だなぁと。同じ人間であるのに、普通の人間ができない事を引き受ける職人。それが
強力なのだなと。ある意味、人間を超えた超人だなと。
ここで登場する強力小宮さんは、霊峰富士の強力にして最強の逸材でした。その人が、アウェーのフィールド白馬で50貫(1貫=3.75Kg)もの巨石を運び上げる仕事に命をかける。白馬の強力さんたちができないと断った仕事を引き受けた以上、必ず運び上げなければ霊峰富士の強力としての自分、仲間たちの誇りに傷をつける事になる事を承知で挑むわけだが、誇りをかけた命がけの仕事を見事に達成した、小宮さんの精神力の強さに、私などは惚れ込んでしまいました。それに、自らの仕事を確認しおえたあと、朦朧とした意識とふらふらな体を従え、岩壁から血のように赤い小水をするところも、白馬を征服したぞという意思の現われのようにみえ、彼自身の誇りを保つ事ができた事を、自身で喜ぶための行為であった用に思え、なんとも豪快な人だったんだろうなと、想像を掻き立てられました。
小宮さん故郷足柄に伝わる伝説の人、金太郎と自分を重ね合わせているとのことだったが
私は、武蔵坊弁慶をイメージしました。
とにかく、具体的な描写によって描かれた迫力のあるストーリーで、とてもわくわくして読めました。
このほか、八甲田山は、後の作品になる八甲田山死の彷徨でより迫力ある作品として世に出てており
先に、そちらを読んでいる私には、こういうストーリーを執筆した上で、あの作品が仕上がっていた
のかと、氏の作品について少し知識が広がった気になれ、ちょっとうれしい気がしたものです。
凍傷という作品は、富士山観測所の建設に尽力し、生涯をそれにささげた技師の話であるが、心打つ
話であった。さまざまな人の強い思いがあってこそ、大きな仕事は成し遂げられることを言いたかった
のであろうと思った。
落とし穴は、ある日落とし穴に落ちた万作が救われる寸前にかみ殺された話であるが、ある日突然、
自分を取り巻く現実が、変わってしまうストーリーが、どことなくカフカの変身を思いおこさせる作品であった。ザムザは朝おきると芋虫になっていたのだが、ここでは、万作は、酒を飲んだ帰りに落とし穴に落ち、山犬と対峙する羽目になる。変身譚ではないが、現実が摩り替わった悲しい男の話というところは似ているように思えたのだ。万作の油断は金により生じたわけであるが、二兎を追うもの一兎も得ずの諺の如く、金と命を天秤にかけねばならない状況においては、命を選べという氏の提言であったのだろうか。なんといっても命あってのものだねであるから・・・・
山犬物語は、かつて山で生活するときには、こんな災いがあったんだなという事を思い起こさせるストーリーだった。かつて日本のやまにもオオカミがいて、山犬もいて、人は度々襲われたんだということ、現代に生きる我々には想像もできない事だ。それらを敵視している時代、間接的とはいえ娘の死に関係する山犬を仇として殺す太郎八と妻の気持ちもわからなくもない。しかしあだ討ちに成功したと思われたが、最後は妻も太郎八自身も山犬に噛まれたが為に死んでしまう結末に、やるせなさを覚えた。氏は、きっと殺生の無益さを問いたかったのだろうと思うしだいだ・・・
最後に、孤島。これも面白かった。孤島の気象台の男たちの苦悶の日々を、ここまで臨場感を持って
描写できる氏の想像力はすごいなと。
氏自身、いわば陸の孤島である富士山観測所での生活経験があるとのことなので、きっとそこでの
経験をベースにストーリーを組んでいったのに違いないと思った。
やはり、何ヶ月にも及ぶ孤島での男所帯はつらいだろうなと、ましてやテレビもない時代ですからね
娯楽もないなかでそういう環境で生活するのは、私自身、考えると恐ろしくなるところです。
氏の作品には、これまで私が呼んできたもの以外に↓の作品があるとのこと。
・栄光の岩壁(上・下)
・先導者・赤い雪崩
・アイガー北壁・気象遭難
・アルプスの谷 アルプスの村
・銀嶺の人(上・下)
・アラスカ物語
・珊瑚
古本屋で見つけしだい読んでいきたいと思います!
ていうか、Amazonで見つければいいんだよね・・・別にBOOKOFFに
こだわらずともいいじゃんね。

強力伝・孤島 (新潮文庫)/新田 次郎

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