古代ローマの神々がかたどる正八角形から、青草の香りが立つ。

第2段階で用いる新再生ネクタル、月桂樹と神酒ネクタルを調合した、香油の香りだ。
 
神聖な八角形の内側では、ヴィアンキ一族の彷徨える魂ら16人が、腰をおろす。膝を抱えるもの、胡坐を組む者、それぞれ楽な姿勢だ。
 
第1段階でヤロー・キャンドルの焔から「激しい感情と記憶」を癒し、浄化した。その分、心身の不要な力みが抜けた影響だろう。
彼らの視線は、上空に浮かぶガイウス・カエサルに注がれる。
 
「神酒は、無味無臭ですから。
スッと鼻に抜ける爽やかな香りは、料理でもお馴染み、慣れ親しんだ月桂樹ですからねえ…多才な効果に、期待しています。
今の私は、リラックス効果が欲しいですねえ」
 
ヨナスはテーブルに立てかけた「黄金のベルト」へ向け香油を焚いて、香りを吸い込んだ。
透明な八角柱の香炉は、彼らを囲む神々も同じ物を使っている。

これから先の展開に、気持ちが昂るのはヨナスだけではない。
本陣に控える俺達4人は、鼻をひくひくさせ、想像通りの香りを嗅いだ。

俺は指揮官だ。
頭の中をすっきりさせ、集中力を高める効果に、期待する。
 
月桂樹もヤローと同じく、古来から薬草として用いられた、実は多才な効果を持っている。

香油の製作者チーム・月桂樹のメンバーは、作製過程で香りを吸い込み、個人に適した様々な作用を、体感した。
 
親父ゼウスの場合、最初に息子の俺が浮かんだ。

「アレスは古代ギリシアで神様だった時代に、月桂樹の香油を、携帯しておけば良かったのう。
自律神経のバランスが整い、メンタル面も調整できた。ワシの様に常にポジティブ思考、柔軟に対応すれば、負け戦は続かなかったろう」
 
香りを吸い込んだ最高神は、ますます自己肯定感がアップしてしまった。その反動で、大昔はネガティブ傾向だった、息子が浮かんだのだろう。

ひょっとしたら過剰効果も、発現するのだろうか?倫太郎とエロスは、経過を観察した。

親父の場合「全てに勝利する」と言い出して、再び「寄り道」願望が、甦るかもしれない。

古来から月桂樹は、「勝利や賞賛」のシンボルでもあるからな。

幸い香りを吸い続けても、過剰効果は発現しなかった。ポジティブ最高神は偶然、実験台になったとは気が付いてない。
親父よ、ありがとな。
 

「月桂樹は免疫力のアップ、去痰作用を始め、感染症の予防効果もある…酒神ディオニュソスの薬草ノートに書いてあったけど、本当だな。
俺は風邪気味だったんだ、香りを嗅いでいるうちに、鼻水や咳もおさまったよ」
 
倫太郎は、感冒症状の改善を体感した。

実際ガイウスまで、手術中に肉体を離れ、やって来るとは思わなんだ。香油の香りが多少なり、彼の無防備な体をカバーしてほしい。
上半身は素肌をさらし、腰から下は保温ブランケット一枚が覆うだけだ。

 
「ローマ皇帝の月桂冠は、誰が被っても似合うじゃない。俺は天使のような、美しい翼を持つでしょ。ハンサムだし月桂冠を被ったら、美しさは非の打ち所がない。勝利と愛をもたらす、大天使へ変身だ。ローマ皇帝以上に、賞賛されるぜ」
 
愛の神さまエロスは、ゼウス同様、自己肯定感が上がってしまった。
しかし変身する役柄は「降格」したにも関わらず、本人は喜んでいた。

リラックス効果で気持ちも緩んだのか、心の奥に抱く、変身願望が現れたのだろうか?
まっ、本人が満足なら構わない。
 
 
とにかく個性的なメンバーが、それぞれに見合った作用を体感した「月桂樹と神酒の香油」は、ゼウスが「甦りの魔術」を掛けて完成した。

 
ヴィアンキ一族の彷徨える魂らに相応しい、様々な効果を期待できる。

まして、身近な香りだ。
特に意識してしなくても、自然と吸い込むだろうから。
後は各自に必要な「心のしこり」を、引き出してくれるはずだ。
 
さきほどガイウスは、芸術家である彼らに相応しく、「一番美しいと感じる物」を問いかけてくれた。その先に潜む「しこりの様に残る、感情や記憶」が、そろそろ甦るはずだ。
 
そこで吸い込んだ香油の香りが、癒し浄化する。
これは昇天を控える彼らにとって、不要な物だ
 
 
「さあ、あなた方にとって、美しい物を私に教えて欲しい」

両手を広げるガイウス・カエサルは、彷徨える魂らに、再び声をかけた。
 
「洞窟の彫刻と、ヴィーナス教会の天井画マニフィカトのマドンナは、俺たちの最高傑作だ」

「目が眩むほど、美しい出来映えだ。カリグラ、アンタも褒めてくれたな」
 
先ほど投石を止めさせた男達が、一番美しいと感じる物を告げた。

彼らはヴィーナス洞窟に左ルートを掘り、岩盤彫刻を施した。もちろん発案したシルバヌス・バリー二のデザインには、存在しなかった。
 
不正ルートは「神々を超える力を手に入れる」、この儀式を行うために、ヴィントレット・ヴィアンキ、カルロ枢機卿が目を付けて、密かに着工させた。
 
「俺達も芸術家のはしくれだ、美を追求するのは当然だ。しかし欲にも、目がくらんじまった。
そりゃそうだろう、最高傑作の報酬は弾んだからなあ」
 
「一度味わった富と成功は、忘れられない。
だからヴィアンキ兄弟の、野望を遂げたい。神々を超える力を手に入れれば、全て叶う、人生は思いのままだ」
 
さっそく、香りの効果が表れた。
2人の男は「一番美しい物」と、「現在も囚われている欲望」を明かした。
 
「あなた方の最高傑作は、ボーボリ庭園のグロッタ洞窟、こちらの岩盤彫刻や。
本家本元、ウフィツィ美術館に所蔵される、ボッティチェリ作、マニフィカトのマドンナと引けを取らない」
 
ガイウスは感情と記憶を多く引き出すため、感想を述べるに留める。

まあ16人全員が、明かさなくても構わない。
呼吸に伴い香りは吸い込まれ、効果を発揮できるからだ。
 
「私はフランスのジヴェルニーで画家モネに出逢い、自然美溢れる風景画に魅了された。これほど美しい作品を目の当たりにしたのは、人生で初めて」
 
今度は画家のムネメが一番美しい物は、モネの風景画だと明かした。
彼女の父親がヴィントレット・ヴィアンキ、彼の弟が、カルロ枢機卿だ。
 
およそ三ヶ月前、冥界のカロン川から脱出した二人は、協力したワルキューレと共に、俺達神々が永遠に消した。
場所はヴィアンキ兄弟が死してなお抱いた野望…「心のしこり」が残る、ヴィーナス教会だ。
 
「でも私は、父親と叔父の望みを叶える。その対価は、無限の可能性を秘めるもの。画家として研鑽を積むより、はるかに魅力的よ」
 
ムネメは声のトーンを上げて、淀みなく告げた、迷いを感じさせない態度だな。

 
「私たちは、野望を遂げるために生きている。
それを踏み外す人生も、待ち受ける孤独も怖い。正直、私はもっと音楽を学びたい、願望も抱いている。他のピアニストたちが活躍する姿が、羨ましい」
 
ピアニストのムネメは、随分と葛藤を抱いていたようだ。実力を発揮できず、蕾のまま終わってしまったから、無念だろう。

「モネ風の柔らかいタッチで描いたムネメの繊細な風景画、ショパンを得意としたピアニスト、ムネメの演奏も、私は見聞きした」
 
2人のムネメは、ガイウスが自分達の作品を鑑賞していた事を知ると、丁寧にお礼を述べ、顔をほころばせた。
 
彼らは芸術家として開花するより、欲望を選択してしまった。もちろん個人差はあれ、ムネメのように葛藤も抱いただろう。
 
彼らの心に残っていた多くの感情…「しこり」は、香油の効果で、間も無く全て消える。
不要な物を浄化させた分、心は軽やかになる、次の段階へ進めるさ。
 
「彼らの告白を聞いていると、不思議な時間の間隔に陥るな。彼らは19世紀初頭、世を去った。過去の出来事を、まるで昨日のように、話しているな」
 
ここでプルートが、彼らの変化を指摘した。
そう、彼らは過去の出来事と味わった感情を、現在進行で語っている。
 
「過去の出来事が、記憶から甦ると。
当時を生きているような感覚に、心身は戻るのだろうなあ」

直人はスクラブの胸ポケットに引っ掛けたボールペンを抜くと、メモ帳へ「横から見た脳」…スライスした脳のイラストを書いた。

「短期記憶は、海馬って部分に保管される。やがて長期記憶に変わり、保存場所も大脳皮質へ移動するんだ。甦った前世の記憶に合わせて、脳も機能しているのだろうから、大した適応能力だ」

直人は説明しながら、ボールペンで位置を差してくれる、分かりやすいな。

ほほう…左右に分かれた、半円形状の細長い海馬は、脳の中央から、やや下に位置するのか…。

例えば、ここまでの経過を、海馬で記憶しているわけだ。

で、時間が経過すると脳の表面…大脳皮質、長期記憶の保管場所へ移る。

となると俺たち神々は、相当な量の記憶を大脳皮質に、保管しているだろう。

直人のお陰で、香りを吸い込んだ彼らが感じている時間感覚を、自分に置き換えてイメージしやすくなった。

俺たち神々は長寿だが、過去の記憶を深く呼び覚ます機会は、そうそうない。
当然、現代に生きている感覚だ。

対して彼らは、ミッションの遂行のために、魂の状態で長寿というか、生きてしまった。

だから現代社会と一線を画す、生活を送ってきた。野望を遂げるため過去と現在を、行き来していた。生活に慣れた過去の時代で、過ごす時間が多かったようだ。
 
過去と現在の出入り口は、ティボリにあるエステ荘のオルガン噴水だったな。

今は黙って、仲間の告白に耳を傾ける涼と早苗だが。二人が水を怖がるようになった原因は、噴水を通り抜けるタイムスリップだ。

見知らぬ何処かの時代へ、このまま流されてしまうのではないか?恐怖を抱いたそうだ。

2ヶ月前、二人は茅ヶ崎海岸で倫太郎と亜子を追い詰めた。仲間に引き入れるためだが、この時も海水を怖がった。
救助に来た知恵の女神ムネメとペガサスにより、今度はピンチに陥ったな。
 
 
「私はカリグラの統治時代に生きていた、戦車競技の御者でした。先ほど前世の記憶が、甦ったのです。当時は意外な物を、美しいと感じていたようです」

おっと。
ここで天井画の作成に加わった画家の女性が、驚きの過去生を、明かし始めた。

黒髪を一つに結いピンク色のリボンをつけた可憐な雰囲気は、前世のイメージとかけ離れている。
仲間達も一瞬、唖然とした。
 
「俺は戦車競技の御者だ…今日もチクルス(競技場)で、四頭立ての戦車を操っている…」
 
彼女は目を閉じて数回、深呼吸を繰り返し集中力を高めてから、前世の記憶をさらに呼び覚まし、先を続けた。
 
「俺が所属するチームは、皇帝カリグラも贔屓にするほど強い、成績は常に上位を維持している。勝利するたびに市民は熱狂する、たまらない高揚感だ」
 
彼女も前世を、現在進行形で語っている。
先ほど直人が説明したように、当時を生きている感覚なのだろう。
 
「これから皇帝カリグラの、私用競技場で記念のレースが行われる。アレキサンドリアから運ばれたオベリスクが、披露されるのだ。
皇帝は庶民の目線で娯楽を提供し、楽しめる方だ。ローマ市民から、絶大な人気を誇る理由だ」
 
彼女は右手を上げて、南の空を指差す。運ばれたオベリスクを、眺めているのだろうか?

現在オベリスクは、バチカンのサンピエトロ広場に佇んでいる。資料もほとんど残らない、ガイウスの生きた証だ。
 
「記念日に勝利したチームは、報酬も跳ね上がる。我がチームだけでなく、俺の富と名声もうなぎ登りだ。
実力だけでなく鍛えた美しい肉体も、俺の右に出る者はいない、いや許さない…。
俺は月桂冠をかぶるにふさわしい、皇帝の様な賞賛を受ける、勝利者だ」
 
彼女は前世を話し終えると、静かに目を開けた。
そしてかつての自分は、なんて傲慢で高飛車な人間だったのか。

かつ鍛え上げた肉体に陶酔する、自分が理解できない、美しさの概念が壊されたようだ。
彼女は現代…19世紀初頭に生きた価値観で、前世からの思いを述べた。
 
「でも記憶をきっかけに、負けん気の強い性格が、納得できた。
私も自分の作品が、最も美しい。
それを認めてくれたパトロン…愛したヴィントレット・ヴィアンキの願いを叶えるまでは、神の国は行けない。
託された野望を、必ず遂げる」
 
なるほど、彼女とヴィントレットは愛人関係だったのか。

「心こしこり」は、もはや鎖の様に巻きついて、本来の目的すら、見失っていたようだな。

さて開始から30分が、経過した。
 多才な効果を持つ月桂樹を含んだ香油は、様々な記憶と感情を、呼び覚ましてくれた。

青草の香りが、薄くなっている。香りの効果は、予想以上に早く現れたな。

 「あなた方の美しい物は、私に伝わった。
ありがとう」

ガイウスは肩に乗せた金色の鷲と、目を合わせた後、皆にお礼を述べた。

よし、終了の合図だ。
 
…アレス、香油は自然に消えた。第2段階は、完了したようだ。
 …クロノス、了解です。


メダイを通して、時の神クロノスが伝えてくれた。時間を司る神の放つエネルギーが、「心のしこり」を引き出すにあたり、一役買っている。
記憶の甦りが、スムーズになる。

香りが消えたからには、彼らの心の中に残っていた不要な「しこり」は、癒され浄化されただろう。目に見えないから、新再生ネクタルと彼の変化を、観察していくしか出来ないがね。


「あなた方は、調和した作品を創造できる。
そろそろ、新しい物事へ挑戦したいのではないか?」
 
ガイウスは彼らに、新たな目標が芽生えるよう、言葉を掛けた。
そして金色の鷲が左肩から飛び立つと同時に、姿を消した。
 
手術中の肉体へ、戻ったのだろう。
ガイウス、神々のピンチに気が付いてくれて、ありがとう…お礼は、改めて。
 
彷徨える魂らは跪いて、穏やかな表情で祈り始めた。よし、集中力も高まっているだろう、丁度いいタイミングだ。
 
 
…クロノス。第3段階で使う、新再生ネクタルの準備に掛かってくれ。

…分かった、直ぐに準備する。

 
「Ave Maria…」
 
俺が伝達した直後だ。どこからともなく、澄んだ高い歌声が響いてきた。

 バッハとグノーが作曲したアヴェ・マリアは有名だ、音楽に疎い俺も、曲名は直ぐにわかった。

女性とも男性ともつかない歌声は、全身がゾクゾクする、なんとも不思議な魅力を放つ。

天使に招かれて、天国へ向かうような錯覚に陥りそうだ。香油の香りを吸って「大天使」に変身、月桂冠を付けた、エロスの誘いではないぞ。

天使の歌声に例えられる、声の持ち主は、洞窟と教会をデザインした、オペラ歌手だ。
 
 
「我が一族、最後のカストラート、シルバヌス・バリーニが歌うアヴェ・マリアだ。
香油の香りで、この場を浄化して、正解だった。俺たちも、よどんだ気持ちを、持っているだろうからね」
 
「私の勘は、冴えてましたねえ。
手術中のガイウスが、イエスの降臨を真似て登場したと聞いて。よもやシルバヌスに、協力を頼んでやしないか?咄嗟に、閃いたんですよ。
ガイウスは派手な演出が得意、アイデアも豊富ですからね」
 
プルートとヨナスは笑みを浮かべ、黄金のベルトを眺めつつ、天使の歌声に耳を傾けている。

俺と直人も貴重な歌声に、聞き惚れてしまった。

しかしヨナスの閃きが的中して、ラッキーだった。ガイウスは彼が持参したメダイを通して、儀式の途中、頃合いを見て俺達へ報告したからだ。

「最後の癒しと浄化にふさわしい人物へ、協力を依頼した。シルバヌスは、最後の段階で現れる。後は、彼に任せる」

ガイウスは天使の歌声を持つ、一世を風靡したカストラート、シルバヌス・バリーニを呼び戻していた。

シルバヌスは「仕事の都合」で、生まれ変わってない。

彼も生前は、カトリックだった。
しかしバリーニ一家は旧家だ、はるか昔から古代の神々、俺たちも崇拝してきた。

当然シルバヌスも、バリーニ家ならではの、教えを受けた。全ての「調和」が、愛に繋がるとね。

その教えを柔軟に理解し、成長したシルバヌスは、ルネサンス芸術をこよなく愛した。

洞窟と教会のデザインに、ボッティチェリの作品を参考にした。
愛をシンボルに持つ、マリアと幼子イエス、そして多神教の女神アフロディーテや神々、ニンフたちだ。

もちろん洞窟と教会は、「調和した広い愛」がテーマだ、シルバヌスならではのセンスだな。



さてヨナスが準備した、神聖なエネルギーを放つ黄金のベルトは、中央にエメラルド製の八芒星、イエスの誕生を表す「ベツレヘムの星」が、グリーンの輝きを放つ。

神聖なベルトは、彼の化身だ。
洞窟と教会に描かれた、マリアや幼な子イエス、古代ローマの神々の愛に、守られている。

シルバヌスが魂の状態である理由は、天使のような歌声で、神格化した者だけでなく彷徨う魂を、癒す役目を担っているから。
 
現在では、音楽療法士に該当する。
慢性疾患を始め、幅広く臨床では応用されていると…もはや俺の家庭教師、直人センセーから教わった。
 
実際カストラートの中には、王の専属となり当時の「音楽療法」を担った者が存在した。
その一人が、ファリネリだ。
 
シルバヌスは死後、この役目に就いた。

美しい歌声を失うくらいならば、いっそ魂のままで良いとね。彼は今でも美しさを追求し、その先には、純粋な愛を持っている。

望む者には、分け隔てなく提供している。

ガイウスも不眠傾向が続くと、彼のセラピーを受けて、睡眠を整えていた。

この時たまたまシルバヌスが、彼の抜毛症を発見した。

もちろんガウイスが、様々な悩みを抱えている事は、理解していた。
しかしフサフサだった頭髪が、象徴的な場所を限定し、短期間で薄くなるのは不自然だ。

ガイウスを心配したシルバヌスは、親友である俺に相談してくれた。

「昔、月桂冠を被った付近の髪の毛が、減っているようなんだ。不眠は改善してるのに、妙だなあ。アレスは新たな悩みを、聞いているか?」

「いいや…俺ですら、打ち明けられてないぞ。
そういえば、いつの間にか、眉毛までタトゥーにしていたな」

「あっ、その通りだ。
左腕のタトゥーは、統治時代に、思い入れのある物を、彫ったんだ。
なぜ眉毛まで、彫ったのだろう?」


もちろんヨナスは、二人の関係も承知している。


「イエスは天を仰いで、深く息をつき、聴覚や吃音障害を持つ人々へ、エファタ(開け)…と言われた。イエスは、治してしまったんですよ」
 
 辣腕執事ヨナスは、聖書の一部を誦じた。

音楽療法の第一人者は、聖書の中でイエスが聴覚や吃音障害のある人を治した、この記述から音楽療法のヒントを得たそうだ。
音楽療法では、声も治療に使われる。
 
「さあて。
間も無く最後の扉が、開きますよ」
 
ヨナスはベルトの前にグラスを置いて、透明な緑色の液体を注いだ。
「バジルとネクタルの神酒」…第3段階で用いる新再生ネクタルだ。
 

お時間を割いてお読み下さり
どうもありがとうございました
写真 分 Akito

参考図書他
新潮社
塩野 七生 著
ローマ人の物語 Ⅶ
 
日本文芸社
ドン・キャンベル 著
佐伯 雄一 訳
日野原 重明 監修
モーツァルトで癒す
 
音楽之友社
独唱名曲80選
J.Sバッハ/グノー作曲
アヴェ・マリア

日本臨床麻酔学会誌 Vol.35 No.1/2015
麻酔中の意識と記憶
 
www.riken.jp
海馬から大脳皮質への記憶の転送の新しい仕組みの発見
 
https://www.timeless-edition.com./archives/1930
自分と調和するライフスタイルを提案
月桂樹の効果効能
 
新共同訳 聖書


数日前、久しぶりに熱を出し寝込みました。
(コロナは大丈夫です)
寒くなりしました、皆さまもお気をつけ下さい。


まだ本調子でなくて、本文を綴るのにとても時間が掛かりました、でも良い練習になります。

春までに、物語を最初から書き直すつもりです。
若干設定を変えて、ケアレスミス的な部分も含め、整えるつもりです。

羽沢クリニックの周辺は、初めから神々の主治医、この設定にしたほうが、インパクトもありそうな気がします。

大変ですが、楽しみつつワクワクしながら、形にしたいと思います。
冬はあっという間に、過ぎてしまうでしょう。
風邪を引いている場合では、ありませんねニヤリ
 

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