《よし、位置についたな。準備はいいか?》
耳につけたイヤホンを通して、俊の押し殺した声が聞こえてきた。
ここはすでに機密事項のある部屋の前だ。部屋はT字路先端にあたる部分にあるので、ちょうど死角ができる。監視ロボットや監視カメラは伊万里が無力化してくれているから、人が来ない限りは見つかることはないだろう。
今回はそれぞれに違った役割が与えられている。
伊万里は、この作戦の中で最も重要なセキュリティの解除をすることになっている。ハッキングできるのはこいつぐらいのもんだから当然といえば当然だが、サイバー攻撃やハッキング、セキュリティの解除にかけてこいつの右に出る者はいない。必然的に、伊万里のポジションはドアの前だ。今になって思うが、めんどくさがりの伊万里がこんな仕事を引き受けたのは、やはりハッカーとして機密に興味があったんだろう。
全体をまとめ、指示を出す役割は俊が引き受ける。今回に限らず団体で行動するときは、たいてい俊が指示を出せば混乱なく動ける。ちなみに、ケンカがあった時に俊が間に割って入ると2分で騒ぎは収まるので、先生からの信頼も厚い。もっとも、本人は教師を好いていないが。
奏也の役割は、セキュリティ解除後の資料アサリだ。俊によると、資料をすべてデジタル化してコンピューターに入れておくと、万が一情報が漏れた時大変なことになるので、大半は小型のメモリーディスクに入れて保存しているらしい。そこで、奏也が持ち前のスピードでそれらを回収していくという算段になっている。
宮原さんは、伊万里と奏也との連絡を受け持ってくれる。普段はそれも含めて伊万里がやっているけど、さすがにそこまで負担を重くできない。
水瀬さんは俊のサポートに回る。しっかりと仕事をこなしてくれるだろう。
そして、最も重要かつ、最もキマったポジション―――――敵から仲間を守る、防衛の要といえる、そう、あの、伝説のポジショ――《そいじゃあ見張り頼むぞ》――ンというのはうそでただの見張りが僕の役割でとてつもなく地味なわけで畜生ぉぉッッ!!!
《大丈夫だ。見張りも目立つ時は目立つ》
「絶っっっ対嘘だぁっ!!」
僕はもう騙されないぞ。何度乗せられて大変な役を押し付けられてきたことか……。僕は学習能力がない訳じゃ―――
《すごく目立つし格好いいんだぞ?》
「まかせとけぃっ!!!!」
―――訳じゃないから僕は俊の言うことを信じようっ!僕らの信頼関係は永遠に不滅だ…。
僕は素早くT字路の交差ポイントまで移動する。手には高性能な麻酔銃。胸の前に銃を構え、周囲を警戒しつつ右を見る…………異常はない。
《言い忘れていたが―――――――》
「なんだい、俊?サインなら、ちょっと今は暇がないなぁ」
《――――目立つには目立つんだが――――》
「僕の存在感があれば、どんな障害もあってなきがごとしだぜっ☆」
ふっ…。僕を甘く見るなよ、俊…。いつまでも凡人だと思うなよ……?僕には超一級のカリスマ性というものが《―――――敵に目立つ》今はなくていいと思う。
バアン…ッ!!! ヒュォン!!!
僕の横を黒い金属製の物体がかすめて行った。 うーんと……いつからこの国は銃が合法になったのかなってあれ警察!?ヤバい、ヤバいマジでヤバいぞ!
「まただましたなぁっ!俊!?」
《あ?ちゃんと目立ってんだろうが》
「ふざけん“バン! バン! バン!” めっちゃ撃って来たぁ――――!!!!」
『ぐ……、ぐうっ………………』
「し……、信じられん……………」
5分後。手のひらに収まっている麻酔銃から放たれた針が当たって、警さ……もとい、敵は完全にのびていた。その数5人。途中新たに援護が三人やってきたので、総計8人だ。正直、生きているのが不思議でならない。ちなみに、麻酔銃は弾が8発入りで、残りはゼロ。相手が8人だから、一発ずつ的確に当てていったことになる。死ぬ気になれば何でもできるんだね、人間って。
《…い、剱、生きてるか?》
心配するぐらいだったら最初からこんな役割を押し付けないでという思いは、とっくに伝わっているんだろう。俊のことだし。まぁ、大事な友達をこれ以上危険な目には合わせないよね。
「ああ、俊。大丈夫だよ」
《そうか、じゃあまだ使えるな》
麻酔銃のことだと思いたい。
《データの回収に成功した。社会科見学に戻って、後でデータを見てみよう》
「OK。それじゃあ早く合流しよう」
《ああ》
それからは特に問題なくクラスの連中と合流したが、侵入者がいたということで施設内は上から下への大騒ぎだった。こういうときすごく不安になるが、伊万里と俊はどうということもなく落ち着いているので、僕等の仕業とばれることもないんだろう。
そして、JSRD&KPOから帰ってまもなく。
「よし、そいじゃあ伊万里、よろしく頼むぞ」
「了解」
そういうと伊万里は、メモリーディスクのパスワード解析を始めた。
「わ、私、なんだかドキドキします……」
「私も………」
宮原さんと水瀬さんの2人は、そう言いながら胸に手を当てている。それはそうだろう。僕でさえ心臓が早鐘を打っている。ふと見てみると、奏也と、感情をあまり表に出さない俊までも緊張が顔に現われていた。唯一リラックスした顔なのは伊万里だけだ。まさか、データを盗むのはこれが初めてじゃないっていうことはないだろうけど……。少し不安だ。
「―――解除、完了だ」
そういいながらディスプレイをこちらに向けた伊万里の表情は、なぜか曇っていた。
耳につけたイヤホンを通して、俊の押し殺した声が聞こえてきた。
ここはすでに機密事項のある部屋の前だ。部屋はT字路先端にあたる部分にあるので、ちょうど死角ができる。監視ロボットや監視カメラは伊万里が無力化してくれているから、人が来ない限りは見つかることはないだろう。
今回はそれぞれに違った役割が与えられている。
伊万里は、この作戦の中で最も重要なセキュリティの解除をすることになっている。ハッキングできるのはこいつぐらいのもんだから当然といえば当然だが、サイバー攻撃やハッキング、セキュリティの解除にかけてこいつの右に出る者はいない。必然的に、伊万里のポジションはドアの前だ。今になって思うが、めんどくさがりの伊万里がこんな仕事を引き受けたのは、やはりハッカーとして機密に興味があったんだろう。
全体をまとめ、指示を出す役割は俊が引き受ける。今回に限らず団体で行動するときは、たいてい俊が指示を出せば混乱なく動ける。ちなみに、ケンカがあった時に俊が間に割って入ると2分で騒ぎは収まるので、先生からの信頼も厚い。もっとも、本人は教師を好いていないが。
奏也の役割は、セキュリティ解除後の資料アサリだ。俊によると、資料をすべてデジタル化してコンピューターに入れておくと、万が一情報が漏れた時大変なことになるので、大半は小型のメモリーディスクに入れて保存しているらしい。そこで、奏也が持ち前のスピードでそれらを回収していくという算段になっている。
宮原さんは、伊万里と奏也との連絡を受け持ってくれる。普段はそれも含めて伊万里がやっているけど、さすがにそこまで負担を重くできない。
水瀬さんは俊のサポートに回る。しっかりと仕事をこなしてくれるだろう。
そして、最も重要かつ、最もキマったポジション―――――敵から仲間を守る、防衛の要といえる、そう、あの、伝説のポジショ――《そいじゃあ見張り頼むぞ》――ンというのはうそでただの見張りが僕の役割でとてつもなく地味なわけで畜生ぉぉッッ!!!
《大丈夫だ。見張りも目立つ時は目立つ》
「絶っっっ対嘘だぁっ!!」
僕はもう騙されないぞ。何度乗せられて大変な役を押し付けられてきたことか……。僕は学習能力がない訳じゃ―――
《すごく目立つし格好いいんだぞ?》
「まかせとけぃっ!!!!」
―――訳じゃないから僕は俊の言うことを信じようっ!僕らの信頼関係は永遠に不滅だ…。
僕は素早くT字路の交差ポイントまで移動する。手には高性能な麻酔銃。胸の前に銃を構え、周囲を警戒しつつ右を見る…………異常はない。
《言い忘れていたが―――――――》
「なんだい、俊?サインなら、ちょっと今は暇がないなぁ」
《――――目立つには目立つんだが――――》
「僕の存在感があれば、どんな障害もあってなきがごとしだぜっ☆」
ふっ…。僕を甘く見るなよ、俊…。いつまでも凡人だと思うなよ……?僕には超一級のカリスマ性というものが《―――――敵に目立つ》今はなくていいと思う。
バアン…ッ!!! ヒュォン!!!
僕の横を黒い金属製の物体がかすめて行った。 うーんと……いつからこの国は銃が合法になったのかなってあれ警察!?ヤバい、ヤバいマジでヤバいぞ!
「まただましたなぁっ!俊!?」
《あ?ちゃんと目立ってんだろうが》
「ふざけん“バン! バン! バン!” めっちゃ撃って来たぁ――――!!!!」
『ぐ……、ぐうっ………………』
「し……、信じられん……………」
5分後。手のひらに収まっている麻酔銃から放たれた針が当たって、警さ……もとい、敵は完全にのびていた。その数5人。途中新たに援護が三人やってきたので、総計8人だ。正直、生きているのが不思議でならない。ちなみに、麻酔銃は弾が8発入りで、残りはゼロ。相手が8人だから、一発ずつ的確に当てていったことになる。死ぬ気になれば何でもできるんだね、人間って。
《…い、剱、生きてるか?》
心配するぐらいだったら最初からこんな役割を押し付けないでという思いは、とっくに伝わっているんだろう。俊のことだし。まぁ、大事な友達をこれ以上危険な目には合わせないよね。
「ああ、俊。大丈夫だよ」
《そうか、じゃあまだ使えるな》
麻酔銃のことだと思いたい。
《データの回収に成功した。社会科見学に戻って、後でデータを見てみよう》
「OK。それじゃあ早く合流しよう」
《ああ》
それからは特に問題なくクラスの連中と合流したが、侵入者がいたということで施設内は上から下への大騒ぎだった。こういうときすごく不安になるが、伊万里と俊はどうということもなく落ち着いているので、僕等の仕業とばれることもないんだろう。
そして、JSRD&KPOから帰ってまもなく。
「よし、そいじゃあ伊万里、よろしく頼むぞ」
「了解」
そういうと伊万里は、メモリーディスクのパスワード解析を始めた。
「わ、私、なんだかドキドキします……」
「私も………」
宮原さんと水瀬さんの2人は、そう言いながら胸に手を当てている。それはそうだろう。僕でさえ心臓が早鐘を打っている。ふと見てみると、奏也と、感情をあまり表に出さない俊までも緊張が顔に現われていた。唯一リラックスした顔なのは伊万里だけだ。まさか、データを盗むのはこれが初めてじゃないっていうことはないだろうけど……。少し不安だ。
「―――解除、完了だ」
そういいながらディスプレイをこちらに向けた伊万里の表情は、なぜか曇っていた。