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懇意のドラマーから「YD-9000のシェルが余ってるんですけど、スネアにしてもらえませんか?」と頼まれた。それは以前、彼の依頼で14"のフロアタムを深さ7"でカットして、超浅胴シングルヘッドタムを作った残り。長い付き合いの彼は、私の作るスネアを気に入ってくれていて、今までも彼のために5~6台のスネアを造ってきた。

せっかちな彼は「1週間後のリハーサルから使いたいんですけど、間に合いますかね?」と、無理を言ってきた。普通なら断るところだが、「音さえ出ればいいなら(再塗装などの完璧な仕上がりのリフォームはしませんよ、という意味)やってもいいけど…」と答えたら、それで全く問題ないと言ってくれたので引き受ける事にした。

まずはエポキシパテでパーツ取り付け穴の穴埋め。一応シェルのカラーに合わせて黒でタッチアップ。ラッカーが乾いた頃を見計らってシェルを深さ6"にカット。続いてエッジ内角を30°、外角をR=3mmで鋭く仕上げる。ハイピッチを好む彼の好みに合わせたエッジシェイプにしたつもりである。そして、パーツ取り付け穴、ベントホール(空気穴)を空けてボトム側にスナッピーベッドを削る。パーツはすべてタマ製で、フープは2.3mm厚のスティール・マイティーフープを取り付けた。

仕事の合間を縫って、全ての作業を2日でやっつけた。依頼者に完成を報告したら「明日取りに行きます!」という返事。仕上りには自信があったが、深夜自宅で完成したので試奏出来ない。いかに付き合いが深いドラマーが相手でも、出来上がった楽器をノーチェックで引き渡すのは気が引けたが、万一気に入らない箇所があったら後日再調整という約束で納品した。

数日後「早速レコーディングで使ったら、ハイピッチでもローピッチでもバッチリでした!」と彼から報告があった。比較的薄め(約6mm)のシェルなので、低めのチューニングで太い鳴りを得られる事は予想できた。鋭く成型したエッジの効果か、ハイピッチでもツマることなく使えたという報告を受けてひと安心。

そして、昨日からとあるアーティストのツアーリハーサルが始まった(私も彼と一緒にツアーを回る)。スタジオで自分の作ったスネアを初めて叩いてみた。ヘッドはエバンス・パワーセンター。やや低めのチューニングになっていたが、なかなかいい感じだった。6"という深さが効いているのか、パワーも充分。しかし、もっと「鳴る」ポイントがあるようにも感じた。

今度は思い切ってかなりのハイピッチにしてみたら、その方がこのスネアの「おいしいところ」が出てきた。周りから「うわっ!音、デカ!」「なんか、目にくるねぇ!」という反響が沸き起こる。ヘタなメタルスネアより格段に立ち上がりの速いアタックは、爆音にも埋もれず存在を主張できる。手前味噌で恐縮だが、ひと言で言うなら「21世紀型ファンク~ヘヴィロック対応」とでも言うべきタイトかつクリスピーなサウンドに仕上がっていた。

会心の出来のスネアで回るツアーが今から楽しみ。