-帰国後 2週間経過-


俺の中に身を潜めていた敵は

ここにきて、また俺に攻撃を開始した。


2日前から体に異変は現れていたのだが

俺は気にも留めなかった。すぐに寝れば回復するだろうと・・・

俺が頼るもの・・・


経験豊富な俺だけがなせる業!!


自然治癒!  ようは気の持ちよう・・・


直ると思えば、直る。  それが俺の知識と経験なのだ!

(でも、直らないものは直らない。)


1日前 その異変は大きな形となって俺を苦しめたのだった。


美味しい物を食べるとき、皆は食を楽しみ、幸福感を味わう。

それは、人間の三大欲求のうち一つが満たされるのだから、必然なのだ。


だが、俺は違った。 ものを飲み込むたびに 痛みを感じ、絶望感を味わう。

(なんだ!この痛みは・・・ 痛みは食を繰り返すたびに強まっていくではないか!)


ここにきて命の危機を感じた (何度となくタイで危機を感じたのでは?)

これは ついに神をも冒涜する医学に

             足を突っ込まねばならぬ決心をした瞬間だった。


ここ15年くらい健康診断以外で病院にいったことはない俺だが

医療技術に頼るほかなかったのだ。



俺の体の異変!


そう、 それは  右喉 扁桃腺の 腫れ


うまい飯が食いたい・・・

おいしく食したい・・・


俺はただそれだけだった。

仕方ない、病院にでも行くしかないか


今朝、会社の席を立ち、俺は総合病院を目指す!!


到着。

受付の彼女は言う、

「耳鼻科外来は予約制」だと、、「小児内科の先生でよければ・・・」

(ん? 小児内科? 俺は医学のことは分からないが  

              小児と付くのは 子供専用??)


(受付のおねえさん! 俺はお子様じゃないぞ~~)

子供専門の内科の先生様に大の大人の俺の体を見せるわけにはいくはずもない。

俺のプライドが許さない。   

(俺はまがりなりにも大人なのだ~~)

じゃ~いいです。と一言、言って後を去った。

この選択が後々後悔することになるなど、微塵も思わなかった。



ここにきて、またあやつの意思がそうさせている。そう思った。

次の病院を目指す・・・ 総合病院ではない 耳鼻咽喉科病院。

ここなら、専門なんだ!俺の期待できる返事が聞けるのではないかと

意気揚々と向かって行った。


少し外壁がくすんでいる入り口を見つけた。

個人でやっているような雰囲気をかもし出していた。


「おはようございます」  扉を開けると薄暗い玄関と廊下がそこにはあった。

あれ?休みかな?と思い、1分くらい中の様子を伺う。

失敗したかな~~誰もいない個人病院・・・今日は休みだったかな?


すると受付から、一人のご老体が・・・どうしたの?と聞く

ちょっと喉が痛くてというと、ちょっと待っててという。

なんか、営業してるみたいだ・・・

(まずいぞ!逆に休みの方が良かった!)(営業中でこの状態・・・危険だ!)

これで営業してるなんて俺はとんでもないところに足を踏み入れてしまったようだ


白い紙に住所と電話番号を書く! しかもメモ用紙にだよ。 

(ふつうなら問診表みたいなのがあって、

               いろいろと記入するのではなかったかな?)

俺はもう引き返せなかった。 


そして、もうひとり。55は超えているであろう おばちゃん。 (薬剤師兼助手らしい)

じゃ~入ってください。。  (行くしかないか~~)

薄暗い診察室は 医療器具が並べられていた。。昔の個人病院の趣だった。


ご老体は白衣を着て、準備を始める。。

俺はこのお医者さまが名医とだけ、祈るだけだった・・・

昔はやり手だったはずだ・・・そう願う。


いろいろ質問された後、ついに彼の手が俺の口に伸びる。

はい、口あけて~~   となりには先程のおばちゃんが

呼吸を合わせるように俺に指示を与える。


俺は目を疑った!


先生!! 手が震えておりますよ・・・・


動かないでよ~って 俺が動かなくても  

あなたの手が動いてますよ小刻みに・・・


俺は少し後悔した、いや!かなり後悔した・・・  

小児内科の先生の方が良かったのでは・・・


俺の穴という穴を見て、一言。  「腫れてるね~~」


( いやっ! 腫れてるって自分で分かるからここにいるんですよ。先生??)


で、喉があれてるから喉に薬を塗ると言う


(大丈夫ですか?先生? その 震えた手で狙いは定まるのですか?)

喉の奥深く、 おいしくない薬は その部分に届いた。


(お見事! 震えてても 命中しましたね。 よっ、名医!!)

 次回にまだ命中率が低くならないことを祈ってます。


ついに終わった。

(知ってましたか?先生。。

    俺も命張ってるんですよ。 危険と隣あわせなのは知ってます。)


一つは 俺の爆弾つきの喉。 


そして 


もう一つは 先生! あなた です。 


(後者の一つは負わなくてもいいリスクじゃないですか~)


先生は冗談半分で、最悪薬で治らないときは手術だね~笑ってた・・・


別に切ってもいいですが・・・


先生?あなたがその手でオペするわけじゃないよね??

それこそ、危険です!!

俺、そこまで命張れません。 



彼は2日後にまた来てくれという。


それまでは、なんとしても 薬と己の自然治癒で必ず直そうと心に決めた。



戦いはこれからだ。

俺の喉に取り付く モノ よ ・・・。