見えない敵。
ある意味それは、無敵の存在。
ここまではたどり着いた。
ボートに乗って来た、川岸。
ふらふらしながら・・・
見えない敵はここに姿を現した!
見るからに優しそうなタイの人、2人。
受付カウンターみたいなところで
彼らは「どこ行くの?」と俺に聞く。
俺はね、1番最初にボートに乗ったとこに行きたいんだよ・・・
彼らは地図を広げ、俺に指をささせる。
「じゃ~行こうか~~」 (え?)
俺は1枚の書かれた紙を渡された。
乱雑に書かれた まさかの 800 バーツ!!(2300円くらい)
なんだ、これは! まさかのボッタくり?
ボッタくりもいいとこだ、来るときは 18バーツだったぞ?
さて、使えない頭で計算してみるか。 44・・・・倍くらい??
ボッタくりの域を超えている!!
突っ込みどころ満載だ。
俺専用のボートを出してくれるのだろうか?
でも、そんな無駄金、この俺が使うはずがないだろ。
(日本人だからって何でもかんでも、払うと思うなよ!)(いい気になりやがって~)
俺は、騙されないぞ。
俺をどこに連れていく気だ? チャオプラヤー川にでも沈める気かい?
お魚さん達の餌にでもしようって魂胆なのだ・・・
俺の頭は必死で戦おうともがく。 敵はこいつらだ!
以外に早く、出てきたな・・・中ボス くらい?
一言、 「 NO Thank you. 」
俺は 捨て台詞をいって、そこを去る!
(ドラクエなら中ボスは回避不可能だが、ここはゲームではない現実世界!)
’逃げる’ の 選択肢は普通に通用した。
ほっとしたのは、つかの間だった。
あ!やばい。 ここを去ったらいけないんだった~~
(ここが乗り口なんだよ、俺。 俺、失敗したよ。 どこに向かってるんだ、俺。)
でも、ここはもう引き下がれない、日本人の名にかけて・・・
俺の名は 後 藤・・・(ふじき じゃないよ。) まぎれもなく 日本人。
日本人の両親を持つ 日本人。
藤原の末裔・・・
なら良いのにな
ここは考えろ、どうやって帰るかを。 ここからはもう乗れない。
なら、一駅 ならず
一乗り場 歩くしか・・・ これもあやつの仕業なのだ・・・
俺にプライドがあるって知っててやらせているんだな・・・(見透かされている)
俺はこの時、気づくべきだったのだ。 俺の中にあやつがいることを・・・
やばい水・・・
俺の体中から大量の汗となって出ていく。
人間の何パーセント水分が失われると死ぬんだったかな~?
俺は全神経を使って、体温調節を試みる。 皮膚の毛穴をしぼめてみる。
それは無駄だった。 無謀な試みと終わったのだ。
(人間やれば出来るというが、出来ないものは出来ない。)
でもここは不可能を可能にする男、俺。 再度、挑戦。
数分、粘る。 やばい、余計に汗が出てきたぞ?
水が欲しい・・・ こんな時は 梅干しを想像するんだったかな?
レモンでも良かったような・・・
唾液が出てくる。 これは人間の反射なのだ。必然の反応・・・
なら、 ビスケットを想像したらどうなるんだろ? やったことなかったな?
く、苦しい・・・ 口の中がパサパサだ・・・・・
何をやっているんだ、俺。
ふと、我にかえる。
無駄なチャレンジ精神は自分を苦しめるだけだった。
これもあやつの仕業なのか?俺の頭の中で操作している・・・
まずいな、乗っ取られる。 このままでは、
頭の中で見えない敵とやりとりをしている間も、俺は トゥクトゥク の勧誘にもあい、
それらをことごとく、シカとし、のりきった。 (選択肢はただ1つ、逃亡のみ。)
ドラクエでは禁断の行為。 俺は今、禁忌を冒している。
そうこうしてるうちに、違うボート乗り場までやってきた。
ここにはもう あやつの手下はいなかった。
他のみんなと乗り込む、 ボートの上で13バーツを支払って、最初の場所へ・・・
ボートに揺られながら、たたずんで川を眺める。
汚なっ!! チャオプラヤー川・・・
でも、まだ俺の中にあやつだけが残っている。