江間章子の『夏の思い出』(昭和24年、1949年)、♪夏がくれば 思い出す~で全国に知られた尾瀬。
尾瀬の国立公園の指定は1934年と古く、1960年には特別天然記念物、1996年にはラムサール条約湿地に認定されています。
ちなみに国立公園指定は最初は日光国立公園の一部でしたが2007年に独立して尾瀬国立公園になりました。29番目で一番新しい。
一度は見たいと憧れていたものの、距離を歩かねばならず躊躇してましたが、先日思い切って行ってきました。
■整備された尾瀬ヶ原
行程の様子は前回書いた通りですが、木道が全域にわたって整備されとても歩きやすかったです。
全域を周ると20kmにもなりますが、鳩待峠から尾瀬ヶ原のとっつきにある『山の鼻』まで3.3km、+αでも十分に楽しめます。
(アメーバは写真の圧縮率か高くて、細かい風景画像はつぶてしまって残念)
歩きやすいためか、山の鼻では幼児を連れたファミリー、遠足の小学生、ご高齢(見た目70代後半)の単独女性などの姿が見られました。
また山の鼻を始め各所に山小屋が20軒も設置されています。
個室でも¥1万強の統一価格らしく、次回利用したいと思ってます。(今回はコロナ明けでパス)
さて、今回歩いてみて気付いたことがあります。
木道にはこのような場所が。
左右対称な模様になってる。
2つに割った木材を並べていているのです。
木道の設置工事者の方々のしゃれっ気が伝わってきました。
その設置工事者はというと、ちゃんとアピールしてます。
TEPCO、つまり東京電力(系列)ですね。
あれ、そういえばあのバカ高い駐車場代の領収書、
東京パワーテクノロジー・・・なんだか東京電力に通じるものがありそう。。。
■尾瀬の所有者は東京電力
帰宅して調べてみるとそのからくりがわかりました。
国立公園などの自然保護地域は通常は国が所有し自然保護を優先的に行うのが当たり前です。
しかしここ尾瀬国立公園の地域の大部分は東京電力の所有(約70%)であることがわかりました。
歴史を紐解いてみると、、、
今から120年前の1903年に、水力発電ダムの計画が持ち上がりました。
1922年に土地を買いあさったのが東京電力の前身で実際に戦時中に一部工事にも着手しました。
1948年には尾瀬ヶ原や尾瀬沼を水没させる強大なダムを造る計画が発表になります。
翌1949年には尾瀬保存期成同盟が立ち上がります。
ここに日本初の自然保護運動が始まります。
そしてあの『夏の思い出』、♪夏がくれば 思い出す~が大ヒットするのです。
また1953年には尾瀬ヶ原一帯が日光国立公園の特別保護地区に指定されます。
■未開通の道路
美しい自然の様子が全国に知れ渡ると当然ハイカーが押し寄せます。
道路の整備が求められる一方で自然保護の声も上がりました。
尾瀬は現在も、福島県側からか群馬県側からかのどちらかのルートで、最後は歩いて向かわねばなりません。
実はかつて縦断道の計画がありました。
縦断道の工事は途中まで進み、完成した道は福島県側は沼山口、群馬県側は一ノ瀬まで、現在はシャトルバスが運行されてます。
しかし沼山口~一ノ瀬の区間は、自然保護運動 により、1971年に国が方針を変更して工事計画が廃案になったのです。
--------道路計画の詳細-------------
1940年縦断道の計画立案
【福島県側】
1963年 入沢~御池が完成
1970年 御池⇒沼山口が完成、同区間のバス運行開始
【群馬県側】
1966年 大清水までの拡張工事
1971年 大清水⇒一ノ瀬が完成
1970年 一ノ瀬⇒三平口着工
1971年 計画廃止
(クリックすると大きくなる)
----------ここまで-------------------------
■オーバーユースコントロール
ハイカーの増加に伴い自然保護のための木道の設置は1958年に始まりました。
現在は尾瀬ヶ原と尾瀬沼の全域が数十㌔の木道でむすばれています。
その木道、東京電力が敷設し、今回もメンテナンスの現場が数か所、2017年と刻印された板を取り替えてました。
どれくらいの入山者が居るか調べました。
どれくらいの入山者が居るか調べました。
第2次尾瀬ブームの1986年には90万人の入山があって、平成以降は30-60万人/年が訪れていました。
登山口にカウンターが置いてありました。
1996年にグンと入山者が伸びてます。
なぜか、、1996年にはラムサール条約湿地に認定された年ですね。この年東京電力は水利権を放棄してます。もう水力発電はやらないとの意思表示です。
自動車の普及によって尾瀬へのアクセスは非常に便利になりましたが、騒音、排気ガスなどによって自然へのダメージが大きくなりました。
自然保護の観点で入山者の抑制するためマイカー規制は1974年の導入されたようです。
先日のコメントにも、値段の高さゆえに訪問を諦めたというお話が複数寄せられました。
狙い通りの効果ということになります。
また2000年頃には入山料¥1800の構想もあったとか。入山料は富士山で話題になりました。
自然保護団体によっては、一日1000人、年間10万人に制限すべきと主張してます。
自然の静寂な雰囲気や野生生物の保護のために適正な入園料を徴収して財源に充てる考えもあるようです。
オーバーユースコントロールというそうです。
安易に来るな、ということですね。
なるほど、駐車場代も高いわけだ。
(営利目的のTDLとは違いますね。)
高い料金を設定している意味が解り、これまで以上に自然を大切にしなければと考えさせられました。
歴史を紐解いて様々なことがわかりました。
【参考資料】
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