リークアンユーの死去があって、改めてシンガポールの歴史について読み直してみた。
そのままのタイトルのこの新書がベストだ。非常によく纏まっていて読み易い。

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)/中央公論新社

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日本であまり感じなかったがアジアに来て感じる事の一つは「植民地時代の歴史と名残」だ。
アジアはことごとく欧米列強の支配下に入り、植民地化されなかったのは日本とタイだけだ。
そして帝国主義時代に植民地を保有するまでに至ったのは日本だけ。

アジアは欧米と日本で植民地支配していた。そして第二次大戦で一時的には日本がほとんどを奪って植民地化したのだが、それは数年間だけの出来事で、シンガポールを140年間支配したイギリスの様に(日本は3年8ヶ月)、長期間の支配で国の形そのものを作ってしまったのが欧米、その支配を破壊しそして散って行ったのが日本なのだ。

本に戻るとこの辺の記述が非常に面白い。リークアンユーは日本軍に殺されそうになった事もあり日本が好きな訳では無い。現実主義者なのでアジア随一の先進国日本を見習おうとしただけだ。発展する中国に近づき過ぎないのはインドネシアとの関係のバランスを取っての事だと言う。

イギリス植民地時代の社会序列はこうだ。
イギリス人(支配者)>クイーンズ・チャイニーズ(英語話者)>中国人>マレー・インド人

しかし日本が占領すると「神」であったはずのイギリス人はビルマ送りとなり旧序列が崩壊した。
日本人(支配者)>マレー・インド人(親日)>中国人(反日・抑圧対象)>>クイーンズ・チャイニーズ(非アジア人・粛正対象)

中国植民地化の過程で猛烈な反日運動に合い危機感を抱いていた日本軍はシンガポールの中国人を抑圧・粛正した。クイーンズ・チャイニーズであるエリート、リークアンユーも危機一髪であった。また永遠の支配者と思われたイギリス人が日本軍に捕虜として命令される姿は衝撃的だったろう。

リークアンユーも他の中華系エリート層もこの占領過程でイギリスが住民を守るどころかイギリス人民間人を退避させ彼らを置き去りにした現実を見て、リークアンユーは「イギリスからも日本からも自立した国を創る事を固く決心した」と述べている。

シンガポールだけでも植民地と欧米、そして第二次大戦と日本との関わり合いで歴史が十分に興味深いが、アジア全体ではもっとドラマチックなので、また搔い摘んで紹介できればと思う。