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見上げる空


今は痛みや
無くなってしまった
身体のパーツや
不自由になってしまったところはあるが
とても自由だ

ただ空気に触れるだけでいい
ガラス越しの空じゃない
そよ風を感じて
見上げる空

そんなもんに感動する日が
来るなんて考えたこともなかった。

入院してるときは
景色は高層階で綺麗だったが
外の気温を感じることなく
絶えず薬品の匂いやら
爺さんの怒鳴り声と泣き声
俺が放り込まれた病棟は
いつ死んでもおかしくないやつが
固められてたとこだった。
カーテン越しに
本人が居ないベッドに家族がいて
もう一カ月もつかどうかとか
残念ですが‥‥‥とか
本人には伝えられない話が
丸聞こえで

俺は俺で何の手立てもなく
どんどん内臓が喰われていく状態で
何十種類も試して
毎日内視鏡入れられては
先生方の溜息が聞こえてきて
車椅子で病棟まで帰るあいだ
悔しくてね、泣いてたな。
ボーカル不在でも
ライブをメンバーがやってくれてて
それがとてもありがたかったし
最高に辛かった。
先生方も最後まで諦めないから
色々やってくれてたし
それもわかっていた。
だから悔しかった。
誰も未来なんてわからないし
先生も、俺も、
いつ出られるだとか
退院なんて全くそんな言葉すら
そんな漢字すら
この世に存在しないんじゃないかと
思った。

俺は昔から
他人の心とか
空気を読むのが得意でね

先生や看護師が
気を使って喋ってくれんのが
なんか辛くて
ガラス越しの空が
とても不自由な、狭い空に見えてた。


最後の最後で
試したことない劇薬が
効いて
先生方が騒いてた。

奇跡っつうか
ロシアンルーレットの
最後の玉が不発弾で助かったような
そんな悪運だった(笑)

まぁそこから
空の色が変わって見えた

退院の日に
外に出て
やっぱり空を見上げた

真っ青な青に手をかざした。


なんでもない空だったんだろうけど
俺には自由って
こんなにも素晴らしいんだと
感じた


空に手をかざすのが
癖になった


見上げた空。




2016年11月25日(金)


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