
死とはなんだろうか。死とは自然な事である。死とは平等である。しかしソレは死した後に蘇った。たった一つ、大切な物を無くした状態で。
雨は好きだ。日陰者の私には丁度良い。じめじめとした日には明るいものなんて出てきやしない。今日も急な雨だ。ゲリラ豪雨って言うのかな?さぁ、狩りの始まりだ。
「たくっ。雨とかついてねぇなほんと。はぁ、速く帰ろ帰ろ」
彼女の名は立花 恋。学校では主力グループのリーダーだ。同時に選ばれた百人の一人である。百人の者は参加者の顔と氏名を教えられている。なんの偶然かそこにはクラスメイトがいた。暗くてクラスから浮いている彼女の名は雨影 美憂。恋達のいるグループにとってはいじめる対象のようなものだ。少し脅せばすぐにカードを渡すだろうか。思考を巡らしていると後ろからピチャッ ピチャッと音がしているのがわかった。それは少しずつ近づいている。急いで振り向くとそこには紫の者である美憂がいた。手には小型のナイフを持っている。
「な、なにしてんのよアンタ。そんなことして良いのかなぁ?皆に言ったらお前なんて…」
「百人の一人を殺すだけなら、証拠は残らない。何となくで読んでたら、たまたまあの人の姿が見えたから、もしかしてと思ったらやっぱり」
「チッ。おい、そのカードよこせよ。お前なんて私が一言言えばなぁ」
脅すように言うが彼女は距離を取っている。人にナイフを向けられている割に冷静だ。美憂に普段から向けていたのが項をそうしただろうか?
「貴方を殺したら、あのグループどうなるかな?解散かな?証拠は残らないし私が何かされるわけじゃないもんね」
思わずゾッとした。その笑みは本気の笑みだった。
「ど、動画撮ってやる。それでお前は終わりだよ…」
「これでやりましょ?」
「……わかったよ。ただし、死ぬ覚悟はあんだろうなぁ!?」
「それじゃあ、始めましょ?」
思わず恐怖すら覚える笑顔と共に美憂のターンが始まった。デッキが怪しく光だしそこから何かが現れる。
「冥界の楽園納める絶対の王 消えて無くなってそして潰れて!!創界神オシリス降臨!」
「んな、なんだよそれ!?」
「私達に与えられた権限ですよ。ではまず三枚破棄します。シェンマドーとカイトコブラと…リミテッドバリアですね」
恋は顔を歪めるが美憂は気にせずにバトルを続ける。生還者カイトコブラを召喚し美憂のターンは終わった。
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。小波童子召喚ラクシュマナのアクセルを使うぞ」
二枚ドローした後に恋はリミテッドバリアと小波童子を破棄した。そして青の探索者ケヴィンを召喚しそのまま召喚時効果を発揮した。しかしその中に煌臨を持つカードは無かった。
「ターンエンドだ」
「フフフ……ピラミッドボアを破棄してドローステップでのドロー枚数を増やします。そして智の伝承者 三賢蛇メルキオル召喚」
メルキオルの召喚時効果でデッキから三枚を破棄しその中から妖蛇を一枚手札に加える。美憂はピラミッドボアを手札に加えターンを終えた。
「随分とデッキ少なくしてるけどよぉ?そんなことしてたらすぐに終わるぞ?」
「そうですか。なら準備が終わる前に削ります」
「あっそうかい。バーストセット、小波童子でアタックだ」
その声の直後に美憂はライフで受けると宣言をしようとした。がしかしそこまで単純に物事は進まなかった。恋のフラッシュ宣言。これにより戦況が大きく動いた。
「ほらよ、フラッシュタイミングだ。煌臨童子を煌臨する。こいつの効果でコスト5以下のメルキオルを破壊するぞ」
「………っ。そう来ますか」
「更によぉ、こいつも使うぞ!煌臨明王だ。カイトコブラを破壊する」
「ライフで受けます」
「ターンエンドだ」
フィールドをたった一撃で壊滅させられた美憂は状況の整理をしていた。恋の手札は一枚もない。バーストがセットされていてフィールドには煌臨明王と小波童子。コアは小波童子は一つしか乗っていない。
「まずはピラミッドボアを破棄してドロー枚数を追加。そしてアイランドルートを配置一枚ドロー。メルキオルを召喚します」
そして美憂はゼオデュラムを手札に加えた。
「フフフ、フフフフアッハハハ」
遂に気でも狂ったのだろうか。命を掛けた戦いだ。無理もない。恋は勝利の確信と哀れみの目を向けた。
「バーストをセット、風切りヘビ召喚。小波童子のコアをリザーブに置いて一枚ドローしますね。これにより小波童子は消滅です。風切りヘビでアタックします」
風切りヘビが恋目掛け突撃を開始した。シャーッと一声上げ恋の胸元に飛び上がる。
「たく、持ち主に似てうざい蛇だな。バーストだ。さぁ来い、絶対なる英雄。英雄巨人タイタスバースト召喚だ」
大地を割る程の巨人が突如現れる。それは一匹の蛇では到底勝てるものではなかった。恋のブロック宣言と共に風切り蛇はペチャンコに潰された。
「させねぇよ。ライフを削りきる前にお前のデッキは蒸発するんだ」
「…っ。でも、良いんですかぁ?バースト発動」
その声と共に荒波がフィールドを包み込む。そして全てのスピリットはその場から消え去った。
「七海大名シロナガス、召喚です」
手札はなくフィールドも一掃された。今の彼女のドローはラクシュマナだ。
「クソッ、クソックソックソッ!あーーもうなんなんだよ!くそが!ターンエンドだ」
「良いんですかぁ?本当に」
ここから美憂の猛攻撃が始まる。まずは手始めに生還者カイトコブラを召喚した。そしてこれで準備が終わった。
「カイトコブラでアタックします。そぉしぃてぇ、フラッシュタイミングです」
天より光が降り立った。それはカイトコブラを包み込む。
「屍従え現れ出でよ 呪われし者の軍勢が貴方を包み込む 妖蛇の神皇シェンマドー、煌臨ですよぉ!立花さぁん!」
シェンマドーは墓場より蛇達を従える。ピラミッドボアを二体と黒龍神ゼオ・デュラムを呼び出した。
「ゼオの効果で四枚ドローしますね。そして、このアタックはどうしますかぁ?アハハッ」
「ライフだよっ!」
「続け蛇達よ!」
合計四体の蛇達のアタックを全てライフで受けた。
「アハハハハハ、アッハッハッハッハッハッどうですかぁ?今何を考えてますかぁ?ねぇねぇねぇ!死ぬんですよ?貴方はこれから死ぬんですよ?ねぇ!ねぇ!」
ここまで笑っている美憂は誰も見たことがない。壊れている。心が完全に壊れている。
「ヒィッ待ってくれよ、なぁお願いだ………頼むよ」
思わずそんなだらしのない言葉が飛び出る。死ぬことよりも怖いのは今目の前にいるソレの狂い具合である。
「なぁに泣いてるんですか?貴方はクラスの、リーダー的存在ですよ?もっとキリッとしないと」
それはあまりにも優しい笑顔だった。先程までの笑い声とはあまりにもかけ離れた。
「なーんて言うとでも思いましたか?今まで散々いじめた相手に殺されるなんて……といか……死にそうな妹を置いて先に死ぬ気持ちはどうですかぁ!?ねぇ!ねぇ!?」
「お、お前に何がわかるんだよ!てかなんで知ってる!」
「さぁ?読んでたら見えたので。さ、先に逝って妹さんのたに準備してあげてください。シロナガス、アタック」
最後のアタック宣言はこれ以上にない程に冷酷で静かな声だった。
「止まれよ!……止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!うわあああああああああああああ」
「悲しいですね。本当に」
それからどのくらい経っただろうか?一人の少女の死体が雨に打ち付けられていた。誰にも気付かれる事もなく。雨の音に紛れて鼻歌が聴こえる。正気を取り戻したかのような静かな声で。