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バルセロナ 完全復調のためには

昨季、バルセロナは国内リーグとチャンピオンズリーグ(以下CL)を制して欧州の頂点を極めた。今季も国内リーグ10節終了時点で首位に立っており、順風満帆の道のりを歩んでいるかに見える。だが、クラシコでレアルマドリードに0-2の完敗を喫するなど、決して良いチーム状態とは言えない。それは欧州の舞台でも同様だ。CLではグループリーグ第4節を終えた段階で、チェルシー、ブレーメンに次ぐ3位に甘んじている。


ロナウジーニョの不調


バルセロナが本調子に至らない大きな要因として、ロナウジーニョの不調が挙げられる。バルセロナの不調と彼の不調は決して100%イコールではないが、与える影響は非常に大きい。チームに与える影響度の高さは、ブラジル代表の同僚であるカカも同様に高いが、ロナウジーニョはさらに高い数値を残している。


<チーム内における各プレーの個人が占める比重>
選手名 ゴール アシスト シュート シュート
アシスト
クロス スルーパス
ロナウジーニョ
(バルセロナ)
30.4%
25.0%
22.8%
26.2%
29.1%
25.6%
カカ
(ACミラン)
25.0%
7.1%
13.8%
13.7%
11.5%
18.3%

※対象試合はCL 06-07第1-4節


不調の要因

過密日程によるコンディション不良が大きな要因であることは間違いないだろう。ただ、不調の要因は他にもある。それは、昨季のリーグ得点王にも輝いたエトーの離脱だ。彼は、自身が持つ驚喜的なスピードを活かしてゴールを狙うだけではなく、左サイドに流れてロナウジーニョと頻繁にポジションチェンジを行っていた。ロナウジーニョのプレーエリアを昨季とエトー離脱後で比較すると、離脱後は左サイドでプレーする割合が高くなっている。ポジションチェンジが減った結果、ロナウジーニョがサイドで窮屈にプレーする機会が多くなっていると言えるだろう。


<ロナウジーニョ エリア別プレー割合>
対象試合
左サイド
中央
右サイド
06-07 CL第3・4節
56.6%
23.8%
19.5%
05-06 CL-ALL
73.3%
14.5%
12.2%

※エトーはCL第3節から出場していない


グジョンセンの動きがポイント


エトーの離脱により、代わりに出場しているのは今季新加入のグジョンセンだ。エトーのようなスピードは有していないが、高いキープ力や複数のポジションをこなせるユーティリティ性を持っている。しかし、チームにフィットするのには時間がかかっているようだ。エトーに比べ、中央でプレーしている割合が非常に高く、ロナウジーニョとの連係にスムーズさを欠いていることが窺える。ロナウジーニョ(バルセロナ)の復調は、グジョンセンの動きが鍵を握っていると言えそうだ。


<エリア別プレー割合>
選手名 対象試合
左サイド
中央
右サイド
グジョンセン
06-07 CL第3・4節
33.3%
46.2%
20.5%
エトー
05-06 CL-ALL
45.6%
30.0%
24.4%



アナリスト(執筆担当): 小棚木 伸一

(略歴)

小棚木 伸一(こたなぎ・しんいち)

1975年生まれ 北海道出身。

約3年間、サッカーデータ入力エキスパートを3年務めた後、2005年入社。

過去の掲載紙 サッカー批評、サッカークリック(WEB)等

カップウィナーに必要なものは?


史上初の10冠を目指す鹿島と連覇を狙う千葉の間で、ヤマザキナビスコカップの決勝が行われる。14回目となるカップウィナーは果たしてどちらのチームになるだろうか。


意外な結果となった前哨戦


リーグ戦ではそれぞれ5位(鹿島)と7位(千葉)に位置し、実力的には拮抗している。その両チームが、今月14日のリーグ戦第27節に対戦した。前哨戦としても注目された試合は、阿部のハットトリックもあり、千葉が4-0と圧勝。だが、両チームに4点差がつくような力の開きはなかった。阿部の得点が全てセットプレー絡みだったように、勝負所の「集中力の差」がこのスコアに反映されたと言える。鹿島はボール支配率(鹿島:61.8%、千葉:38.2%)で上回り、千葉の倍近くのシュート数(鹿島13本、千葉7本)を放ったことから分かるように、決して力負けした訳ではなかった。



<シュート詳細データ>
チーム名
全てのシュート
ペナルティエリア内
限定のシュート
シュート
枠内率
シュート
枠内率
鹿島
13
38.5%
4
100.0%
千葉
7
85.7%
5
80.0%


守備組織が機能した両チーム


決勝で欠場するフェルナンドを外すなど、決勝を意識した戦い振りには、これまでの試合と異なる変化が見られた。鹿島は4失点したとはいえ、上述したようにセットプレーからの失点がほとんど。むしろ、前線からの鋭いチェックで千葉の攻撃を封じ込めることに成功。アタックエリア※で行ったタックルの割合と、同エリアでのこぼれ球奪取の割合が増加している。このことにより、中盤から前への展開に苦しんだ鹿島にとって、前線で拾ったボールからシュートにつながる形を作ることができた。


<エリア別こぼれ球奪取データ>
チーム名
アタックエリア
割合(%)
ミドルエリア
割合(%)
ディフェンスエリア
割合(%)
鹿島
27節
18
33.3%
24
44.4%
12
22.2%
今シーズン
322
27.8%
440
38.0%
396
34.2%
千葉
27節
6
15.0%
18
45.0%
16
40.0%
今シーズン
329
25.8%
492
38.6%
455
35.7%


対する千葉も中盤からのタイトなディフェンスで鹿島の攻撃の自由を奪い、前線へ効果的なボールを送らせなかった。両チームのディフェンスが機能していたことは、各エリアへ送ったパスの成功率の差に表れている。


<エリア別パス成功率>
チーム名
アタックエリアへのパス
ミドルエリアへのパス
鹿島
27節
60.0%
86.9%
今シーズン
63.2%
84.2%
千葉
27節
50.6%
71.2%
今シーズン
62.7%
81.5%

鹿島はミドルエリアより前への展開に苦戦した


重要となる先制点


決勝も一発勝負であるが故に、この試合同様に守備を重視した展開になるはずだ。過去2大会もスコアレスからのPK決着となっている。先制点が重要となってくることは間違いない。

千葉が先制点(得点)を奪うためのポイントとなってくるのは、巻へ良い形でボールを預け、攻撃が展開できるかどうか。27節の試合では、鹿島の前線からのプレッシャーで、巻へは最終ラインからのロングボールが多くなってしまった。巻は空中戦勝敗で5勝13敗と大きく鹿島DFに負け越し、違った形でボールを預ける必要がある。今シーズンの千葉においての、3プレー以内にシュートに至ったパス交換の中で、最も多い出し手となったのは羽生だった。彼が、逆に最も多い受け手である巻と多くのパス交換をすることで、中盤と前線をつなぎ、自身がフィニッシュの局面に顔を出すことも可能となる。さらに巻はリーグ最多のファウルを受けており、セットプレーからのチャンスも期待できるだろう。


<被ファウル数ランキング>
Rank
選手名
所属チーム
被ファウル
1
巻 誠一郎
千葉
77
2
矢野 貴章
新潟
70
3
マルキーニョス
清水
67
4
久永 辰徳
大宮
66
5
ホベルト
福岡
64
6
福西 崇史
磐田
62
7
谷口 博之
川崎
61
8
佐藤 寿人
広島
60
9
ウェズレイ
広島
58
10
石原 克哉
甲府
55


一方の鹿島は、前哨戦で目立った最終局面の精度の改善が求められる。特に両サイドバックのクロスの精度(6本中成功0本)の改善は急務となるだろう。チーム全体でも10%の成功率(千葉は26%)に終わった。また、今シーズン最もクロスを上げられたチームが鹿島であり、サイドバックが攻撃参加した際にはシュートで終わり、速攻を受けないことも大切となる。


<被クロス数ランキング>
Rank
チーム名
被クロス数
成功率
1
鹿島
716
21.6%
2
京都
691
26.0%
3
磐田
677
22.6%
4
千葉
652
22.7%
5
C大阪
647
24.0%
6
新潟
643
26.0%
7
甲府
638
26.2%
8
広島
630
28.4%
9
浦和
616
20.1%
10
清水
615
24.4%
11
福岡
612
27.6%
12
大分
588
22.6%
13
F東京
568
26.4%
14
川崎
552
21.6%
15
名古屋
549
24.6%
16
G大阪
548
22.6%
17
横浜FM
503
21.5%
18
大宮
485
22.7%


1点の重要性が非常に高くなる決勝の舞台。最終局面に至るまでの経緯も大切だが、やはり攻守ともに「集中力の差」が明暗を分けることになるのではないだろうか。


※ピッチを縦に3分割して敵陣から「アタック→ミドル→ディフェンス」と分割したエリア


アナリスト(執筆担当): 小棚木 伸一

(略歴)

小棚木 伸一(こたなぎ・しんいち)

1975年生まれ 北海道出身。

約3年間、サッカーデータ入力エキスパートを3年務めた後、2005年入社。

過去の掲載紙 サッカー批評、サッカークリック(WEB)等