半世紀ぶりの栄冠はどちらに? | DataStadium BaseBall DATA Analysis

半世紀ぶりの栄冠はどちらに?

破竹の勢いでパ・リーグを制した日本ハムと、磐石の投手陣を擁し圧倒的な力の差を見せて2年ぶりのリーグ制覇を果たした中日。日本ハムが勝てば44年ぶり、中日ならば52年ぶりの日本一となるだけに、今年の日本シリーズは白熱した展開が期待出来そうだ。
この2チームを比較すると、ともに防御率リーグ1位の投手陣を中心としたチームであり、決して強力な打線とは言えないがクリーンアップが強力である事など共通点は多い。良く似た両チームの対戦。交流戦では4勝2敗で日本ハムが勝ち越しているが、今シリーズで勝敗を分けるポイントは一体どこなのだろうか。


先発の中日、リリーフの日本ハム

<セ・リーグ:防御率ランキング>
チーム
全体
先発
リリーフ
中日
3.10
3.21
(1位)
2.89
(1位)
阪神
3.13
3.22
(2位)
2.96
(2位)
巨人
3.65
3.69
(3位)
3.67
(5位)
ヤクルト
3.91
4.05
(4位)
3.70
(6位)
広島
3.96
4.30
(5位)
3.42
(4位)
横浜
4.25
4.69
(6位)
3.35
(3位)

<パ・リーグ:防御率ランキング>
チーム
全体
先発
リリーフ
日本ハム
3.05
3.43
(2位)
2.36
(1位)
ソフトバンク
3.13
3.15
(1位)
3.07
(2位)
西武
3.64
3.52
(3位)
3.96
(5位)
ロッテ
3.78
3.78
(5位)
3.77
(6位)
オリックス
3.84
3.77
(4位)
3.97
(4位)
楽天
4.30
4.64
(6位)
3.76
(5位)


投手力が中心の両チームだが、それぞれの特徴はやや異なっている。日本ハムの特徴はなんといっても12球団トップの防御率2.36を誇るリリーフ投手陣であろう。抑えのMICHEALを中心に、今季ブレイクした武田久や巨人から移籍した左の岡島、サイドハンドの建山など左右、上横とバラエティにとんだ構成になっている。
中日リリーフ投手陣も岩瀬・平井らを擁し、防御率もリーグトップの2.89と好成績を残している。しかし、左のリリーフ投手が不足している事が不安材料だ。左リリーフ投手の防御率は3.15と好成績ながらも、この数字から岩瀬を除くと4.24にまで一気に跳ね上がってしまう。日本ハム打線には左打者が多いだけに、今シリーズでは試合終盤の大事な場面で小笠原や稲葉をどのように抑えるかはポイントの一つになるだろう。
一方、中日にアドバンテージがあるのは先発投手陣だ。中日は先発投手だけで全勝利の76%を占める66勝を挙げるなど、リーグトップの先発陣を擁している。今シリーズでも川上・山本昌・朝倉の2ケタ勝利投手を中心に、佐藤充や中田、マルティネスなどが控えており、実力・人数とも万全の状態で迎える事になりそうだ。
逆に日本ハムはシリーズ第1戦から第3戦までの先発が予想されるダルビッシュ・八木・金村の三本柱は十分期待が出来るものの、第4戦以降に計算の出来る投手が少ないのが現状。この3人で勝利を奪っておかなければ厳しい展開になる事は間違いないだろう。
先発の中日対リリーフの日本ハム。中日は先発投手がどれだけ長くマウンドにいられるか、日本ハムはどれだけ良い形でリリーフ陣につなげられるかがポイントとなりそうだ。


破壊力抜群のクリーンアップ


<セ・リーグ:クリーンアップ成績>
チーム
打率
本塁打
打点
中日
.300
95
333
広島
.293
81
276
阪神
.291
62
249
ヤクルト
.281
78
273
巨人
.285
92
263
横浜
.254
57
236

<パ・リーグ:クリーンアップ成績>
チーム
打率
本塁打
打点
日本ハム
.305
85
263
西武
.301
70
284
ソフトバンク
.283
53
239
ロッテ
.278
44
195
楽天
.276
48
206
オリックス
.253
46
190

攻撃陣では、ともにリーグトップの破壊力を持つクリーンアップが特徴だ。中日は首位打者を獲得した福留、本塁打・打点の二冠王に輝いたウッズ、今季中盤から5番に定着した森野で構成されるクリーンアップは打率・打点・本塁打ともリーグトップの成績を残すなど破壊力は抜群。一方の日本ハム打線は本塁打・打点の二冠王に輝いた主砲・小笠原を始め、セギノール・稲葉とも25本塁打以上をマーク。4番セギノールが打率.295と3割には届かなかったものの、小笠原・稲葉とも3割を超え、安定感のあるクリーンアップだと言えるだろう。


<直接対決でのクリーンアップの成績>
チーム
打数
安打
本塁打
打点
打率
得点圏
日本ハム
75
26
5
12
.347
.545
中日
72
18
0
8
.250
.222

今季の直接対決では、日本ハムの中軸が活躍したのに対し、中日は本塁打0本に終わるなど、徹底的に抑え込まれた。直接対決6試合のうち1点差の試合が4試合にも上った事などから接戦が予想される両チームの対戦において、今シリーズでもクリーンアップの出来が勝敗を左右する重要な要素になる可能性は非常に高い。


勝負を分ける二つのポイント先制点とSHINJO


<セ・リーグ:先制点を挙げる割合>
チーム
試合数
先制試合数
先制する割合
先制時勝率
阪神
146
84
58%
.707
中日
146
79
54%
.813
ヤクルト
146
76
52%
.640
広島
146
72
49%
.559
巨人
146
71
49%
.676
横浜
146
58
40%
.579

<パ・リーグ:先制点を挙げる割合>
チーム
試合数
先制試合数
先制する割合
先制時勝率
日本ハム
136
82
60%
.720
ソフトバンク
136
78
57%
.773
西部
136
68
50%
.735
ロッテ
136
68
50%
.691
オリックス
136
56
41%
.600
楽天
136
54
40%
.569

一つ目のポイントは先取点である。交流戦での対戦では、全6試合のうち6試合とも日本ハムが先取点を挙げているのである。ちなみに日本ハムは今季136試合のうち6割にあたる82試合で先取点を挙げている。

投手陣が良いだけに、先取点を奪って試合の主導権を握り、先行逃げ切りの形に持ち込みたいところだ。一方の中日も日本ハムと同様に先行逃げ切りを狙うだろう。実際、先取点を挙げた試合での勝率は12球団トップの.813と非常に高い。交流戦での日本ハム戦では1試合も先取点を挙げる事が出来なかっただけに、今シリーズでは中日が先取点を奪えるかが大きなポイントになるだろう。


<SHINJOが打点を挙げた試合での勝率>
打点
勝率
なし
49
40
.551
あり
32
5
.865
2点以上
14
1
.933


二つ目のポイントはキーマンの存在である。そのキーマンとなるのはSHINJOだろう。前を打つ稲葉とセギノールは今季の中日戦での出塁率が.440(稲葉)、.370(セギノール)と非常に高い。今シリーズでもSHINJOにチャンスが多く回ってくる可能性は非常に高いだろう。その場面で走者を返す事が出来るかどうか。ちなみに、SHINJOが打点を挙げた試合は勝率が8割を超え、2打点以上を挙げれば9割以上という「SHINJO神話」がある。神話の内容はともかく、SHINJOが打点を挙げる回数が多ければ、チームが勝利に近づく事は間違いないだろう。
逆に、中日側とすればクリーンアップとの勝負を避ける状況は必ず出てくるだろう。その時に、しっかりと後を抑える事が出来るかが問題になってくる。また、SHINJOを完璧に抑える事が出来ていれば、無理にクリーンアップと勝負をする必要も無くなるという考え方もあるだろう。中日にとってSHINJOは避けて通る事の出来ない存在になりそうだ。
SHINJOにとって最初で最後となる日本シリーズ。常に話題の中心にいる千両役者だが、今シリーズでは勝敗を左右する中心にも顔を出しそうだ。



アナリスト(執筆担当): 高橋 大輔

(略歴)

高橋 大輔(たかはし・だいすけ)

1981年生まれ、東京都出身。

法政二高時代は外野手として活躍、法政大学進学後は附属校のコーチとして野球と携わった。

約4年間、データ入力エキスパートを務めた後、2005年入社。主にセ・リーグ担当。
過去の掲載紙 ベースボールマガジン等