「従業員持ち株会」
上場企業であればどこの会社にもあると思いますが、おっちゃんが勤めていた銀行でもありました。蓄財手段としては結構人気があったようで、当時「資産形成になるから」と上限の月給2割を積み立てて、他の行員にも加入を進めていたような方を何人も覚えています。
実は、おっちゃんが勤めていたその銀行は90年代半ばから大きく経営が傾き、2000年代に入って経営破綻してしまったのですが、その過程でこの従業員持ち株会をめぐる悲惨な出来事がありました。
90年代終り頃に北海道拓殖銀行や長銀、日債銀が相次いで破綻して大きな社会問題になりましたが、破綻する前に株価の急落、低迷があったことから、「株価が100円を切る銀行は経営状態が悪い」、「50円を切ると破綻が近い」というような風説が流れるようになっていました。
実際に株価が低迷する銀行は預金を引き出されて、郵便局や財務良好な銀行へ移し替える動きが活発になりました。おっちゃんの勤めていた銀行もその頃に50円近くまで下がりましたが、やはり大量の預金流出に見舞われて資金ショートに苦しむようになりました。
全くアホの極みなんですが、当時の経営陣は株価さえ戻れば何とかその場を乗り切れると考えたようです。
対策としてまず、従業員に持ち株会の加入を強要しました。既に加入していた行員には積立額の上積みを強要しました。
次に、第三者割当増資を行って従業員に一部を買わせました。一般社員は40万円位、管理職は100万円位が最低ノルマだったと思います。
なんと、購入資金がない行員には資金を貸し付けてまで強制的に買わせました。おっちゃんも当時、止む無く最低ノルマ分は購入しました。必要なかったのですが当てつけに借りてやりました。
繰り返しなんですが、アホの極みです。当時の経営陣はこんなことで株価を引き上げできると考えたということです。
もともと、持株会でたっぷり株を購入して、たっぷり含み損を抱えていた行員が相当数いたのですが、そんな状況になるとそれまでの持分を処分したいなんて言い出せません。
結局、さらに追加購入した分の株式も含め、銀行の経営破綻とともにすべては無価値になってしまいました。
おっちゃんは銀行が破綻する数か月前に転職することができたので、その際にすべての株式を処分できました。しかし、半分以上は損失になってしまいました。
でもおっちゃんの損失額は40万円程度と軽微なもので、その当時40~50代だった方々は最低でも数百万円の損失を被っています。この世代は人一倍愛社精神が高く、金融資産のほぼすべてを自社株購入に充てていた方も相当数いたようです。
恐ろしい話ですが、それらの方々は金融資産をすべて失った上に借金だけが残り、さらに破綻後のリストラの嵐にさらされることとなりました。その後、転職が上手くいかずに行方知れずのようになってしまった方も結構いらっしゃると聞いています。
取引先にも「絶対大丈夫だから」とお願いして増資分を買ってもらってましたので、破綻後に大規模な訴訟を起こされています。残った行員は自分も資産を失った上に、取引先や地元住民から犯罪者呼ばわりされることとなってしまいました。
このケースは金融資産と雇用という資産を同じ籠(会社)に盛ってしまったために、籠が壊れてすべてを失ってしまったという極端な悪例です。おっちゃんはこれが強烈なトラウマになって、今の会社では持ち株会に入る気持ちに全くなれませんでした。(入っておけば3倍になったようですがTT)
これ以外でも会社が潰れる過程で、目を覆いたくなるような稚拙な経営判断がいくつもありましたが、経営者の優劣って悪い流れになった時にハッキリ分かるように思います。
日本人の宿痾なんでしょうか。日本の組織でトップに立つタイプはイケイケどんどん型が多くて、逆風になった時にすばやく後退・撤退を判断できる方がほとんど居ないように感じます。本当に大事なのはその能力だと思うんですが。。
結果、被害を受けるのは末端の従業員ということになってしまいます。みなさんも組織には染まったふりして決して染まらず、Noというべき時はNoと言い、やばいと思ったらさっさと転職しましょう!(無理かTT)