嗅覚障害 センサーの異常 | 口腔乾燥症ドライマウス 唾液過多症(流涎) 味覚障害 嚥下障害
[耳・鼻・のど 嗅覚障害:6 情報編 センサーの異常]]

(朝日新聞  2010年4月25日)


私たちがにおいを感じるのは、鼻の奥にあるセンサー(嗅細胞)がにおい
物質をキャッチし、嗅神経を通して脳に伝わるからだ。

嗅覚障害は、この経路のどこかに問題があるために起きる。

においの通り道に問題が起こる呼吸性嗅覚障害と、センサー付近に炎症が
起きる嗅粘膜性が多い。
金沢医科大の三輪高喜教授によると、この2つで半数以上を占める。


「患者を生きる 嗅覚障害」で紹介した患者も呼吸性。
副鼻腔炎によるポリープ(鼻茸)の多発で通り道がふさがれ、におい物質が
センサーにたどり着けなくなっていた。

治療は、副鼻腔炎などに伴う炎症を薬で抑えるほか、ポリープがたくさん
あれば取りのぞく。
左右の鼻の通り道を隔てる壁が曲がる鼻中隔湾曲症があれば、通り道を広げる
矯正手術をすることもある。
三輪教授によれば、こうした治療で約4割が治り、8割近くで症状が改善
する。


嗅粘膜性は、風邪のウイルス感染などが原因になる。
抗炎症薬の点鼻や漢方薬といった治療でほぼ半数が治り、7割ほどが改善
する。
ただ、自然に治ることも多い。


このほか、外傷などで神経が傷つきセンサー自体がうまく働かない末梢
神経性、腫瘍や神経の病気で伝達経路に障害が起きる中枢神経性がある。

加齢による機能低下のように、原因があまりはっきりしないケースもある。


「治療を早めに始めれば改善が見込めるが、1年以上放置すると難しくなり
ます」と三輪教授は話す。


嗅細胞は新しく生まれ続けていて、古い細胞と置き換わっている。
炎症が続いたままにしておくと、この嗅細胞の再生能力が失われ、嗅覚が
もとに戻らなくなってしまうことがある。

鼻が悪いと味もわかりにくくなる。
味覚のしくみは嗅覚とは別だが、鼻のセンサーが機能しないことで食べ物の
味や香りがわかりにくい「風味障害」が起きることがある。
風邪の後に味が変わって感じるのもこのためだ。


兵庫医科大の阪上雅史教授は「嗅覚障害を訴える患者で風味障害にも悩んで
いる患者は、想像以上に多いようだ」と話す。


ただ、味の障害の背景には、胃腸の病気や糖尿病、がんなどが隠れている
こともある。
「鼻が悪いからだ」と原因を決めつけてしまうのは危険だ。

 (竹石涼子)

http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004250136.html?ref=reca