はじめに


感想は曖昧なものです。

乗り手の体格、バイクやパーツ類のサイズがライダーにあっているか、乗り手の求めているものに近いか、乗車環境などによって変わるものです。


試乗者

・身重180cm

・体重70kg

・10年前はレース大好きスプリンター

・過去にロードレースで3回優勝、2回準優勝経験があります。

・これまで10台以上のロードバイクやMTBを所有してきました。

・現在は週末サイクリングを楽しんでいます。




試乗について


TREKの店舗での試乗サービスを利用し、700mほどの直線道を15分ほど乗ってきた感想になります。


普段バイクに乗るときと同じレージャーレーパン、シューズ、サイコンを用意しました。
バイクサイズは偶然にも自分にあったMサイズに試乗することができました。


最大でも時速45km程度の速度までしか出すことはできませんでした。

そのため、スプリントの強いもがきの際の剛性感や、高速コーナーでの安定性は検証できませんでした。

フレームの剛性感、進みの良し悪しや快適性の参考にはなるかと思い試乗してきました。




見た目


バイクを写真でみていたとき、IsoFlowは奇抜過ぎて受け入れられないと感じていました。

しかしながら、IsoFlowの実物を見てみたところ、面形状のデザイン性の高さ、塗装の綺麗さ、そして色の塗り分けの工夫によって格好良い仕上がりになっていました。


もしもIsoFlowの見た目で躊躇されている方は、実車を見てみると気持ちが変わるかもしれません。


さすがTREKのバイクは細かいところまで完成度が高く高級感があります。




BBの剛性感が絶妙に良い


BBは水平方向には非常に固い一方で、垂直方向にはわずかに変形するため、ペダリングの効率と気持ちの良い踏み心地とが両立されていました。


サドルに座った状態で体幹に力を入れ、400w程度のイメージでペダルを水平に蹴り出すと、BBが変形することなく気持ちよく推進力に変換されました。

まるで硬いアルミフレームのように、ガチっとした剛性感で実に気持ちが良いです。


ダンシングをしてみると、BBがわずかにウイップしてくれ楽しくペダリングができます。

ヒルクライムバイクのような軽い踏み心地で、登坂はダンシングでリズム良く登れそうです。


下ハンドルを握って軽くもがくと、安定して加速してくれました。フロントフォークからダウンチューブにかけての剛性が高く、いかにもレースバイクといった雰囲気です。


この一番安い完成車にはアルミホイールが搭載されていました。このホイールはかなり重たそうですが、代わりに剛性はそこそこ高いようで、強く踏み込むとグングン突き進んでくれます。ただ、タイヤ含めてホイール外周部分がかなり重たいのか軽快さは全くありません。


機械式油圧ディスクブレーキのため、ハンドルまわりは重たいはずですが、その重さに振り回される感覚が少なく、TREKのバイク設計のうまさを感じます。




快適性


快適性はタイヤの銘柄や空気圧が支配的と考えています。

試乗にはサイコンと同様にパナレーサーのデジタル式の空気圧計は必需品です。


取り付けられていた「ボントレガー R1 ロード タイヤ」はややもちもち系のタイヤでした。

シュワルベワンに似たやや柔らかいゴム系のコンパウンドのように感じます。

GP5000の硬質スポンジのなものや、CORSAのようなサラッとしたスポンジのようなものとは違っています。


タイヤの空気圧は初めは6.5気圧に設定されていました。

これほど高い空気圧ですと、路面の継ぎ目や白線でさえ後輪がはねてしまい、ペダリングのし辛さを強く感じました。

ただ、質の悪いアルミや鉄フレームと違い、骨に響くような硬質な振動はフレームが取り除いてくれているようで、カーボンフレームらしい快適性が感じられました。


次に、タイヤの空気圧を普段乗っている4気圧以下まで下げました。

乗り心地は大幅に改善され、路面の細かな凹凸はほとんどタイヤが吸収してくれるようになりました。

この状態でマンホールや歩道の段差など、フレームやホイールの衝撃吸収性が試される比較的ストロークの大きな凹凸の上を走ってみました。

サドルへの振動の伝わり具合は、TCR ADVANCED PRO 2024よりも快適だと感じました。レースバイクの中でやや快適性が高いと感じます。

ハンドルへの振動の伝わり具合は、レースバイクの中では標準的です。


IsoFlowコンフォートテクノロジーは、見た目はいかにも快適そうで期待していましたが、実際に乗ってみると快適性に大きな寄与は無いように感じます。

IsoFlowがかなりしなると評価されている方は多いですが、私はそうは感じませんでした。

タイヤの空気圧をわずかに下げることで得られる乗り心地の向上のほうがはるかに効果が大きいです。


TREKやSPECIALIZEDは、サスペンションなどの見た目に分かりやすい独自の機構で差別化を図る戦略が得意ですが、実際に乗ってみると見た目で期待するほどの大きな効果は感じられません。

レースバイクはあくまでもペダリングやダンシングに悪影響が出ない程度に固く作る必要がありますので、結果として標準的なバイクと同じ程度の快適性になってしまうものと思います。




肝心の速さ


剛性に優れたバイクですので、強く踏み込めば安定して気持ちよく加速してくれます。

ホイールは重たそうな代わりに剛性は十分に高いと感じます。


ただ完成車の状態ですと、平坦ですら、楽に速度が出るというわけではありませんでした。

転がりの悪いタイヤや重たいアルミホイールを搭載した9kg近い重量のバイクですので仕方ないことですね。

ペダルが上死点を通過するたびに、タイヤとリムの重たさが滑らかなペダリングの邪魔をしてしまい、軽快さや楽なペダリングを損なっているように感じます。


フレームの剛性感はとても良いので、こちらの完成車を購入し、ホイールやタイヤなどを交換すると、楽に速く走れるペダリングの楽しいバイクになるかと思います。


エアロ効果については、パワーメーターが取り付けられているわけでは無いことと、高い速度を出せなかったため感じ取ることはできませんでした。




R7100 105 の変速性能が高い


初めて使いましたが変速性能の高さに驚きました。

ワイヤーがほぼフル内装なのにもかかわらず、ワイヤーの引きも開放も非常に滑らかです。

シマノの紐変速の技術は素晴らしいですね。

トルクを掛けていない状態であれば、リアディレイラーの変速の速さに関してはDi2と遜色なく感じます。

フロント変速に関してはどの状況でもDi2に遠く及ばないですが。


少し気になったのは、ブレーキがあまり強く効かないことです。強く握れば十分に減速しますが、弱い力では満足には効きませんでした。

ブレーキは本人が練習をして握り具合を制御できるようになれば良いので、ブレーキは強く効けば良いと考えています。シマノは流石に効き具合を弱めに調整しすぎたのではないでしょうか。


変速性能が素晴らしいものの、機械式変速の油圧ディスクブレーキSTIレバーにおける文字通り致命的な欠点であるブラケットの太さはST-R7020から進化はありませんでした。

ST-R7020は昔購入して使っていたことがありましたが、ブラケットが太過ぎて危険と感じたために使用をやめてしまいました。

特に冬の分厚いグローブを嵌めた状態ですと、路面の凹凸に前輪が弾かれときに、ブラケットから手が離れてしまって危険な思いを何度か経験しました。

油圧ディスクブレーキロードバイクが登場したころ、弱い力でブレーキが掛けられて女性にもおすすめなどという危険な売り文句がありましたが、なんて無責任な説明でしょうか。


シマノによる変速性能の改善と、TREKのハンドル周りの重さを感じさせないバイク設計のうまさが合わさることで、機械式変速コンポーネントでも通常走行においては不満は無いのかもしれませんが、上記理由からディスクブレーキロードバイクのコンポーネントは電動変速以外はおすすめできません。




 買いか否か


買いたいと感じる「フレーム」です。


とても悩ましいことに、SLグレードは完成車販売しかしていません。

TREKは他社よりも強気な価格設定をしているメーカーですが、試乗車は確かに高い価格に見合った完成度の高いフレームと比較的高品質なパーツで構成されていると納得できました。


しかしながら、ハンドル、サドルやタイヤはいくら高品質でも好みのものへ交換される方が多いと思います。 SLグレードの完成車に付属のセカンドグレード以下のホイール(たとえカーボンホイールでも)は交換することになるかもしれません。


比較的良質な部品が取り付けられたことで中途半端に高額になってしまった完成車を買うのであれば、少し割高でもフレームを買って好みの部品で組み上げたいと感じてしまいます。


もし私がMADONE SL GEN8を買うなら、フレームセットを買ったつもり一番安いSL5を購入し、すべての部品を交換します。総額100万くらいを使ったとしても、SL7よりも走るバイクになりそうな予感がします。