健康診断などで『脂肪肝です』と言われてショックを受けた方、結構いるのではないでしょうか?昇天

 

今回は最新の論文を紹介しながら、脂肪肝に対するGLP1の効果を紹介したいと思いますびっくりマーク

NASH(脂肪肝炎)と新たな治療への期待

 

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、アルコール以外の原因で肝臓に脂肪が蓄積し炎症や線維化を起こす病気です。近年、代謝異常との関連が重視され「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」とも呼ばれています。NASHは肥満や2型糖尿病など生活習慣病と深く関係し、放置すると肝硬変や肝癌に進行することもあります

 

しかし有効な薬剤が長らく存在せず、食事・運動による減量が主な対策でした。GLP-1受容体作動薬は本来糖尿病や肥満症治療薬として開発され、強力な食欲抑制・減量効果を持つことから、NASHの新たな治療法として期待されています。

 

2024年にはセマグルチドによるNASH治療効果を検証した大規模第III相試験「ESSENCE試験」の結果が発表され、注目を集めました。その試験結果とセマグルチドの作用メカニズム、研究の意義と今後の展望について、説明します指差しびっくりマーク

 

結果:肝組織の改善と体重減少

 

ESSENCE試験は、NASH(MASH)患者に週1回のセマグルチド2.4mg皮下投与を行い、その効果をプラセボ(偽薬)と比較した第III相臨床試験です。2024年に発表された試験Part 1の中間結果(投与72週時点)では、GLP1セマグルチド群で顕著な肝組織の改善が示されました。主な成果をまとめると次のとおりですびっくりマーク

 

 

肝炎(NASH)の消失率(肝線維化の悪化なし): 

 

セマグルチド群で62.9%, プラセボ群では34.1%が肝炎の消失を達成しました。約3人の治療で1人の患者にNASH消失が得られる計算で、プラセボに比べ有意な改善効果が認められています。

 

肝線維化の改善率(肝炎の悪化なし): 

 

セマグルチド群の37.0%, プラセボ群の22.5%が肝線維化のステージ改善(1段階以上)を達成しました 。こちらも有意差があり、約7人の治療で1人の患者に線維化改善がもたらされています。肝炎消失と線維化改善の両方を達成: セマグルチド群では32.8%の患者がNASHの消失と線維化改善の両方を達成(プラセボ群は16.2%)と報告されました。このように難治とされた脂肪肝炎が、薬物療法で約3人に1人の割合で劇的に改善しています。

 

体重減少効果: 

 

セマグルチド群では平均約10%の体重減少(初期体重比)が見られました。元々肥満傾向の強い患者集団(平均BMI約35)でしたが、大半の患者で臨床的に意義のある減量が達成されています。対するプラセボ群では体重変化はごくわずかで、減量効果の差は歴然でした。

 

肝機能・線維化マーカーの改善: 

 

セマグルチド群では、血液中の肝酵素(ALTやASTなど)が30~40%程度低下し、線維化の指標であるELFスコアも改善しました。超音波による肝硬度(肝臓の硬さ)測定値も平均20%低下しており、侵襲の少ない検査でも肝臓の状態改善が裏付けられています。

 

安全性と副作用: 

 

セマグルチド投与の安全性プロファイルは従来の糖尿病・肥満症治療での知見と一貫しており、おおむね良好でした。主な副作用は胃腸症状で、具体的には吐き気、便秘、下痢、嘔吐などが報告されています 。これらの症状はGLP-1受容体作動薬に特有のものであり、ほとんどの場合一時的または対症療法で管理可能とされています。深刻な副作用は見られず、セマグルチド群・プラセボ群間で有意な安全性の差は認められませんでした。

 

以上のように、ESSENCE試験Part 1ではセマグルチドがNASHの肝組織学的改善において明確な有効性を示しました。約1年半(72週)の治療で、肝臓の炎症を鎮め線維化を巻き戻す効果が得られたことは画期的です。加えて大幅な体重減少という全身的なベネフィットも得られており、肥満を伴うNASH患者にとって二重の利点となりました。

 

 

研究の意義と今後の展望

 

ESSENCE試験の成果は、NASH治療の分野で大きな転換点となるものです。これまでNASH患者には「減量してください」と指導するしかなく、多くの患者が進行を止められずにいました。セマグルチドは肥満症や糖尿病も同時に改善できるため、一石二鳥で患者さんの全身状態を良くし、肝臓のみならず心血管リスクも下げることが可能です。

 

今後の展望として、ノボノルディスク社は2025年前半にも米国FDAおよび欧州当局に対しセマグルチドのNASH(MASH)適応追加を申請予定であると発表しています。

 

結論として、GLP-1受容体作動薬セマグルチドは肥満・糖尿病治療薬としての枠を超え、脂肪肝炎(NASH/MASH)に対する有効性を示しました。2024年のESSENCE試験結果は「薬で脂肪肝炎が治せる時代」の到来を告げるものであり、長年治療法がなく苦しんできた患者さんや臨床医にとって大きな希望と言えます。今後の追加試験結果や承認動向次第ではありますが、NASH治療は大きく前進しつつあり、食事・運動療法に加えて新たな薬物療法が普及する未来が目前に迫っています。


参考文献(References)

  1. ノボ ノルディスク ファーマ プレスリリース (2024年11月8日): 「セマグルチド2.4 mgがESSENCE試験で肝線維化の改善とMASH消失の両方で優越性を示す」
  2. ケアネットニュース (2024年11月29日): 「セマグルチド2.4mg、MASHで有意な改善示す(ESSENCE)」
  3. Naim Alkhouri, MD (2025). Recent Data From the ESSENCE Trial on Semaglutide in MASH. Gastroenterology & Hepatology, Vol.21, Issue 2 (インタビュー記事)
 
 
 
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