ダイエット中の皆さん
夕食より朝食をたくさん食べた方が痩せやすそうってなんとなく思っていませんか
今日はそれを調べた試験の研究結果を紹介します
朝食をしっかり食べると痩せる?
ダイエット中、「朝食を抜かない方がいい」「朝食はダイエットに大事」とよく聞きますよね。昔から「朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧者のように」という言い伝えもあり、朝食をしっかり食べれば痩せやすいというイメージを持つ人も多いでしょう。では本当に、朝食にカロリーをたくさん摂ると体重は減りやすくなるのでしょうか?それとも、食事のタイミング(朝型・夜型)によって減量効果は変わらないのでしょうか?今回は、2022年に発表された食事タイミングとダイエット効果に関する興味深い研究をもとに、朝食とダイエットの関係について分かりやすく紹介します。
朝食メイン vs 夕食メインの食事比較
この研究では、「1日の総カロリーが同じ場合、朝食にカロリーを集中させるのと夕食に集中させるのとで、減量効果に差が出るのか?」を調べました。
イギリスの研究チームが、肥満傾向のある健康な成人30人(男性16人、女性14人)を対象に実験を行いました。被験者は以下のように2つの食事プランを試しました:
- 朝食メインのプラン:1日の摂取カロリーの大半を朝食に割り当て、夕食は軽めにする。
- 夕食メインのプラン:朝食は軽めにし、1日のカロリーの多くを夕食に割り当てる。
どちらのプランも1日の総カロリーと栄養バランス(タンパク質30%、炭水化物35%、脂質35%)は同じになるよう設計されています。各プランを4週間ずつ実践し、その間の体重変化やエネルギー消費量、空腹感の違いを測定しました。さらに被験者はクロスオーバー試験として、一度中間に1週間の休止期間を挟んだ後、反対のプランも4週間試し、朝食重視と夕食重視の両方を全員が経験するようになっています。これにより個人差の影響を減らし、食事タイミングの違いによる効果を比較できるようにしました。
結果:朝食をしっかり食べても減量効果は変わらない?
結果は驚くべきものでした
朝食メインと夕食メイン、どちらのプランでも体重減少量に有意な差は見られなかったのです。被験者はどちらのプランでも4週間で平均約3kgの減量に成功し、朝食派・夕食派で痩せ方に差はなかったそうです。
つまり、同じカロリー・栄養であれば、朝に摂ろうが夜に摂ろうが消費カロリー(代謝)や減量効果はほぼ同じだということですねダイエットにおいて大事なのはやはり総摂取カロリーであり、朝食を増やしたからといって特別に脂肪が燃えやすくなるわけではないようです。
しかし、興味深いポイントは「空腹感」の違いでした。
朝食にカロリーを集中させたプランでは、日中の空腹感が大幅に軽減されたのです。
一方、夕食メインのプランでは日中に空腹を感じやすく、食事前の食欲が強くなる傾向が見られました。研究参加者たちは「朝食をたっぷり食べた日は、一日を通して満腹感が続き、間食したい欲求も少なかった」と報告しています。このように、朝食をしっかり摂ることで空腹感を抑えられる一方、体重の減り方自体には朝食・夕食のどちらを重視しても違いが出なかったという結果になりました。
つまり、ダイエットに時間帯は関係ないが、日中の空腹感は朝食派の方が有利!
なぜ空腹感に違いが出たのか?
では、どうして朝食メインだと空腹感が減るのでしょうか?
その背景には、私たちの体のホルモンバランスが関係している可能性があります。食欲に関わる代表的なホルモンにグレリンとレプチンがあります。グレリンは胃から分泌される「空腹ホルモン」で、血中濃度が高まるとお腹が空いたと感じます。一方、レプチンは脂肪細胞から分泌される「満腹ホルモン」で、十分に栄養を摂るとレプチンが増えて食欲を抑えてくれます。
朝食にカロリーをしっかり取ると、早い時間帯に十分な栄養が体に入るため、グレリンの分泌が抑えられレプチンが上昇しやすくなり、その後の時間帯で空腹感が起こりにくくなると考えられます。逆に朝食を軽く済ませてしまうと昼前にはグレリンが分泌されて強い空腹を感じたり、1日を通して食欲が増しやすくなるかもしれません。さらに、人間の体は体内時計(サーカディアンリズム)によってホルモン分泌や代謝のリズムが決まっています。一般的に朝〜昼にかけて代謝が活発になりやすく、夜遅くには代謝が落ち着く傾向があります。朝型の食事パターンはこの自然なリズムに沿っており、日中の食欲を安定させる効果があるのかもしれません。ただし、この研究では代謝(エネルギー消費)には差が出なかったため、ホルモンの変化や主観的な満腹感の違いが空腹感の差につながったと考えられます。
今日からできる!食事タイミングの工夫
今回の研究結果から、「朝食をしっかり食べる=直接的に痩せる」わけではないと分かりましたが、空腹感を抑えるメリットがあることが示されました。ダイエット中に空腹感が強いと辛いですよね。そこで、今日から取り入れられる食事タイミングの工夫をいくつか紹介します。
- 朝食を充実させる: ダイエット中でも朝食は抜かず、むしろしっかり食べてみましょう。例えば、タンパク質豊富な卵料理やヨーグルト、食物繊維たっぷりのオートミールや果物など、腹持ちが良く栄養バランスの良いメニューがおすすめです。朝にボリュームのある食事を摂ることで、昼過ぎまで間食に手を出さずに済み、結果的に総摂取カロリーの抑制(カロリー調整)につながるかもしれません。
- 夕食を軽めに、早めに: 夕食は可能な範囲で少なめに、そして就寝の2〜3時間前までには済ませるよう心がけましょう。夕食が軽いと寝ている間の消化負担も減り、睡眠の質が上がるメリットもあります。どうしても夜お腹が空いてしまう場合は、スープやサラダなど低カロリーで満足感のあるものを先に摂り、主食や高カロリーのおかずの量を調整してみてください。
- 自分のライフスタイルに合わせる: 朝は忙しくて食べる時間がない、人によっては朝は食欲がわかないという場合もあります。その場合は無理に大量に食べる必要はありません。食事のタイミングや内容は人それぞれの生活リズムに合わせて工夫しましょう。例えば、朝食を軽めにしたい人は、昼食を遅め(ブランチ寄り)に取る、またはおやつにプロテインバーやナッツを挟んで空腹をしのぐなどの方法もあります。大切なのは総摂取カロリーの管理と、空腹によるドカ食いを防ぐ工夫です。
まとめ:朝食は「痩せる」魔法ではないが、空腹感を抑えられる!
今回の研究から、「朝食にカロリーを多く配分してもしなくても、減量効果自体に違いはない」ことが分かりました。ダイエットで体重を減らすためには、やはり1日のカロリー収支が基本であり、朝食を多くしただけで消費エネルギーが増えるわけではありません。ただし、朝食をしっかり取ることで日中の空腹感を抑えられるというのは大きなメリットです。空腹感が減れば間食や食べ過ぎの防止につながり、結果的にダイエットを続けやすくなるでしょう。
要するに、朝食のカロリー配分を増やすこと自体が直接「痩せる秘訣」ではないものの、食事タイミングの調整によってダイエット中の空腹ストレスを軽減できるということです。ダイエットは短期的な数字よりも、無理なく継続することが何より大事。朝型・夜型、どちらの食事スタイルが自分に合っているかは人それぞれです。この研究結果も参考に、ぜひ自分に合った食事タイミングでストレスの少ないダイエット習慣を築いてみてくださいね!
参考文献
- Ruddick-Collins, L. C. et al. (2022). 「Timing of daily calorie loading affects appetite and hunger responses without changes in energy metabolism in healthy subjects with obesity」 Cell Metabolism. DOI: 10.1016/j.cmet.2022.08.001.
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