『昔から痩せにくい体質なんだよな・・』と悩まれている方
もしかしてそれ『睡眠だけダイエット』に失敗しているのかも
今日は、睡眠とダイエットの関係性についての論文を紹介します
はじめに:睡眠とダイエットの意外な関係
「睡眠時間が短いと太りやすい」なんて聞いたことはありませんか?
仕事や勉強で睡眠不足が続くと、なぜか食欲が増してしまう…そんな経験がある方もいるかもしれません。実は、睡眠とダイエットには意外な関係があるのです。
最近の研究で、睡眠をしっかりとることがエネルギー摂取(摂取カロリー)に影響を与える新事実が明らかになりました。さっそく、その内容を分かりやすく紹介していきます
睡眠を増やすだけで食欲が抑えられる?
今回紹介するのは、過体重の若年成人を対象に「睡眠時間を増やすだけで食欲やカロリー摂取が変化するか」を調べた研究です。
普段の睡眠時間が6.5時間未満と短い80名を無作為に2つのグループに分け、一方には睡眠時間を延ばす指導を行い、もう一方は普段通りの生活を続けてもらいました。
睡眠を延ばすグループには、寝る前の行動や寝室環境などを改善する個別のアドバイスを一度だけ行い、就寝時間を延長してもらいました。
目標はベッドにいる時間を8.5時間にすること。日中の食事や運動の指示は一切せず、被験者は普段通り自由に生活してもらいます。その上で最先端の方法を用いて各自のエネルギー摂取量(1日の総カロリー摂取)を客観的に測定しました。まさに「睡眠を増やすだけ」で体重に関わる行動がどう変わるかをリアルワールドで検証したわけですね。
驚きの結果!睡眠を増やすとカロリー摂取が減る
結果は驚きでした
睡眠延長のアドバイスを受けたグループは、睡眠時間が平均で約1.2時間も延長しました。その結果、なんと摂取カロリーが平均で1日あたり約270kcalも減少したのです 。対照グループ(睡眠を延ばさなかった人たち)と比べて、明らかに食べる量が減ったことになります。
もちろん被験者自身は「食事制限をしよう」など意識していません。睡眠以外の生活習慣は何も変えていないのに、自然と食欲が抑えられ食べる量が減っていたのです 。中には1日に500kcal近くも摂取量が減った人もいたとか 。
270kcalのカロリーと言えば、小さめのランチ1食分くらいでしょうか。この差が毎日続くとしたら、3年間で約12kgも体重が減る計算になります。しかもこの実験で睡眠時間を延ばした期間はたった2週間です。それでもこれだけの差がついたことから、研究者たちは「健康的な睡眠習慣を長く続ければ体重減少につながる可能性がある」と述べています。
まさに夢のよう(?)な結果ですが、科学的に証明された「寝るだけで減量効果」と言えるかもしれません。
なぜ睡眠時間を増やすだけで食欲が減るのか?
一体なぜ、睡眠時間を延ばすだけで食欲が減るのでしょうか?
ポイントは体内のホルモンバランスにあります。私たちの食欲にはレプチンとグレリンという2つのホルモンが深く関わっています。レプチンは脂肪細胞から分泌される「満腹ホルモン」で、脳に「もうエネルギーは足りているよ」と知らせて食欲を抑える働きがあります。一方、グレリンは胃から分泌される「空腹ホルモン」で、脳に「お腹が減った!」と信号を送り食欲を増進させます。
睡眠不足になるとこのレプチンとグレリンのバランスが崩れ、食欲が暴走しやすくなることが分かっています。シカゴ大学の研究では、2日間睡眠時間を4時間に制限したところ、レプチンが18%減少しグレリンは28%増加、結果として食欲が24%も増大したとの報告があります。さらに睡眠不足の状態では特に高カロリーな食べ物(甘い物や炭水化物)をより強く欲してしまう傾向も観察されました。
つまり、寝不足だと脳は「もっと食べてエネルギーを補給しなくちゃ!」と勘違いしやすくなるんですね。
逆に言えば、十分な睡眠をとればレプチンとグレリンのバランスが整い、過剰な食欲を抑えやすくなると考えられます。実際、今回のように睡眠時間を増やすことで結果的にエネルギー摂取が減少するわけですから、睡眠は自然な食欲コントロール薬とも言えそうです。こうした効果が習慣として定着すれば、ダイエットの成功率もアップするかもしれません。研究チームも「適切な睡眠時間を維持することは肥満予防や減量プログラムの有効な手段になり得る」と述べています。
今日から実践できる!睡眠時間を増やす簡単なコツ
「もっと寝た方がいい」と言われても、忙しい現代人にとって睡眠時間の確保はなかなか難しいもの。そこで、今日からできる睡眠時間確保のコツをいくつか紹介します。少し工夫するだけで、明日からあなたの睡眠習慣が変わるかもしれませんよ。
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寝る前のスマホはオフ!
ベッドに入る直前までスマートフォンやパソコンの画面を見ていませんか? 寝る前はこうした電子機器の使用をできるだけ控えましょう。画面から出るブルーライトは脳を刺激して眠気を妨げ、睡眠の質を下げてしまいます。実際、この研究でも就寝前のデバイス使用を控えるだけで睡眠時間が延びる効果が見られました 。寝る前はスマホはオフにして、ストレッチや読書などリラックスできる習慣に置き換えてみましょう。 -
快適な寝室環境を作る
質の良い睡眠のためには環境づくりも大切です。寝室はできるだけ暗く静かな状態に整え、暑すぎず寒すぎない快適な温度に保ちましょう。自分に合った寝具(マットレスや枕)を使うことも重要です。ふかふかの布団に包まれて部屋も快適なら、自然とぐっすり眠りやすくなりますよ。 -
生活リズムを整える
平日と週末で寝る時間・起きる時間が大きくズレていませんか?毎日なるべく同じ時刻に寝起きする習慣をつけると、体内時計が安定して眠りにつきやすくなります。就寝前の軽いストレッチや朝起きたら日光を浴びる習慣も効果的です。規則正しい生活リズムは結果的に睡眠時間の確保にもつながり、健康習慣として続けやすくなるでしょう。
まとめ:睡眠もダイエットの一部!
睡眠とダイエットの関係、驚きでしたね。質の良い睡眠をとることは日々の健康習慣としてとても大切ですし、それ自体がカロリーコントロールや体重管理につながることが今回の研究で示されました。まさに睡眠もダイエットの一部と言えそうです。まずは毎日7時間以上の睡眠を目指してみましょう。十分な睡眠は体の回復だけでなく食欲の抑制にも効果があります。今日から「睡眠ダイエット」を意識して、楽しく健康に体重管理を始めてみませんか?
参考文献
- Tasali E. ほか (2022) 「過体重成人における睡眠延長が客観的に評価されたエネルギー摂取量に及ぼす影響:無作為化試験」 JAMA Internal Medicine(2022年2月7日オンライン出版).
- Alison Caldwell. (2022) “Getting more sleep reduces caloric intake, a game changer for weight loss programs.” シカゴ大学医学部ニュース (2022年2月7日付) .
- Spiegel K., Tasali E., ほか (2004) “Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite.” Annals of Internal Medicine 141(11): 846-850 .