今日はGLP1唯一の内服薬『リベルサス』の論文を紹介します
レッツゴー
経口GLP-1製剤「リベルサス」PIONEER 4試験:体重減少効果と糖尿病治療への期待
PIONEER 4試験とは?(研究の目的・対象・方法)
PIONEER 4試験は、経口セマグルチド(リベルサス)の有効性と安全性を評価するために行われた臨床試験の一つです。特に、リベルサスが従来の注射薬に劣らず効果があるかを調べる目的でデザインされました。
具体的には、2型糖尿病の患者さんを対象に、以下の3つのグループに分けて治療を比較しています。
- リベルサス群(リベルサス14mgを1日1回内服)
- 注射薬群(GLP-1注射薬1.8mgを1日1回皮下注射)
- プラセボ群(有効成分を含まない偽薬)
この試験では二重盲検・二重ダミー法という方法が用いられました。つまり、全ての参加者が「飲み薬+注射」を1日1回行いますが、リベルサス群は有効成分入りの錠剤+偽の注射、リラグルチド群は偽の錠剤+有効成分入りの注射、プラセボ群は偽の錠剤+偽の注射を受け取る形です。こうすることで、参加者も医療者も誰がどの治療を受けているか分からない状態(盲検化)になり、公平な比較が可能になります。
対象となったのは、メトホルミン(糖尿病の飲み薬)を服用中にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者711名です。参加者の平均年齢は56歳、平均糖尿病罹患期間約7.6年、平均HbA1cは8.0%でした。試験期間は計52週間(一年間)でしたが、主要評価項目として治療開始から26週間後(約6か月後)の効果が比較されています。
体重減少効果の比較リベルサス vs. 注射薬 vs. プラセボ
PIONEER 4試験で特に注目すべきなのが、リベルサスの体重減少効果です。結果を見てみると、半年後(26週後)にリベルサス群で平均4.4kgの体重減少が見られました。これは、同じ期間にリラグルチド群で見られた平均約3.1kgの減少よりも大きく、統計的にも有意差が認められています(リベルサスの方が注射薬(ビクトーザ/サクセンダ)1.8mg約1.3kg多く減量)。さらに、薬を含まないプラセボ群では平均0.5kg程度しか体重が減らなかったことから、リベルサス14mgによる減量効果の明らかな優位性が示されました。
また、一年後(52週後)まで追跡した結果でも、リベルサス群の方がリラグルチド群より体重減少量が大きい傾向が持続しました。実際、他の解析ではリベルサス14mgを服用した患者さんでは約30~44%の方が体重5%以上の減量を達成しており、この割合はリラグルチド群(約28%)やプラセボ群(数%程度)を上回っています。体重の5%減少は健康上大きな意義のある減量幅ですので、経口薬でこれだけの割合の患者が達成できたことは注目に値します。
副作用プロファイルを見ると、GLP-1受容体作動薬に共通の消化器症状(吐き気や胃もたれ等)が両剤で認められましたが、リベルサス群の方が若干頻度が高い傾向がありました(副作用による中止はリベルサス8%、注射薬6%、プラセボ2%程度
)。しかし重篤な低血糖はまれで(各群1~2%程度)、全般的に安全性は注射薬と大きく変わらないと評価されています。
まとめ
- リベルサス14mgの方が、ビクトーザ(毎日投与型のGLP1注射薬)1.8mgより体重減少効果は高かった。
- 副作用(胃腸症状)はリベルサスの方が多かった。
- しかし、重症な副作用は稀で安全性は両者ともに確認できた。
糖尿病患者だけでなく体重管理への応用も?
このようにリベルサスは、糖尿病治療薬として血糖を十分に下げつつ、注射薬に勝るとも劣らない体重減少効果を示しました。では、この薬は糖尿病でない人のダイエットや肥満治療にも使えるのでしょうか?
実は、GLP-1受容体作動薬は糖尿病患者以外の肥満症の治療にも応用されています。例えば、リラグルチドの高用量製剤(3.0mg注射)は糖尿病でない肥満症患者向けに「サクセンダ」という名前で承認されていますし、セマグルチドの週1回注射(オゼンピック)をさらに高用量にした製剤は米国などで肥満症治療薬「ウゴビ(Wegovy)」として使われ始めています。こうした背景から、食欲を抑える作用の強いGLP-1受容体作動薬は体重管理にも有用だと考えられています。
まとめと今後の展望
経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス(セマグルチド錠)」は、PIONEER 4試験によって従来の注射薬(リラグルチド)に匹敵する血糖降下効果と、それを上回る体重減少効果が示されました。注射を伴わない内服薬であることから、糖尿病治療のハードルを下げ、より多くの患者さんがGLP-1受容体作動薬の恩恵を受けられる可能性があります。また、体重減少という付加価値により、糖尿病患者さんの肥満解消や生活習慣病全般の改善にもつながることが期待できます。
今後の展望として、リベルサスが臨床の場で広く使われることで糖尿病治療の選択肢が拡大し、特に肥満を合併する患者さんにおいては生活習慣の改善と薬物療法の相乗効果で大きな健康改善が得られるでしょう。また、さらなる研究によっては、非糖尿病の肥満症への適応拡大や、他の治療薬との併用による効果検証など、新たな可能性が開けるかもしれません。安全性や長期的な心血管イベントへの影響も引き続きモニターされますが、現在までのデータでは注射製剤と同様の安全性プロファイルが示されており、利便性とのバランスを考慮するとリベルサスの登場は糖尿病治療における画期的な進歩と言えます。
リベルサスは「飲むGLP-1受容体作動薬」として、糖尿病治療のみならず体重管理の面からも今後ますます注目されるでしょう。注射が苦手な患者さんや、ダイエットにも関心のある方にとって、今後のリベルサスの普及とエビデンスの蓄積は朗報となりそうです。
参考文献
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Pratley RE, et al. Oral semaglutide versus subcutaneous liraglutide and placebo in type 2 diabetes (PIONEER 4): a randomised, double-blind, phase 3a trial. Lancet. 2019;394(10192):39-50.
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American College of Cardiology (ACC). PIONEER 4 trial summary. Latest in Cardiology. 2019.
まとめ
どうしても注射薬の方がリベルサス14mgと比較すると胃のムカつきが少なく、mgによっては体重減少効果も高いことから注射薬が人気なのが現状ではあります。






