今回は、性行為の後に1回内服するだけで梅毒の予防率が約90%の『ドキシPEP』のことを最新論文を紹介しながら説明いたします
セックス後に性感染症予防!?画期的な新対策『ドキシPEP』とは
性感染症のリスクと新しい予防策の登場
私たちの性生活には常に性感染症(いわゆる性病)のリスクがつきまといます。梅毒、クラミジア、淋病などの細菌性性感染症は放っておくと深刻な健康被害を及ぼすこともあります。しかし現実には、こうした性病の報告数は近年増加傾向にあります。コンドームの使用やパートナーを限定するといった従来の予防策を徹底しても、感染リスクをゼロにすることは難しく、「もっと効果的な新しい予防法はないの?」と思う人も多いでしょう。
実は最近、セックスの後に抗生物質を服用して性感染症を防ぐという画期的なアプローチが注目されています。その名も「ドキシPEP」です。PEPとはPost-Exposure Prophylaxis(曝露後予防)の略で、病原体に暴露された後に発症を防ぐ医療手段のことです。
HIV予防で暴露後に薬を使う「HIV PEP」という方法がありますが、それを細菌性の性病版でやってみようという発想です。つまり、性行為のあとにドキシPEPを飲むことで、細菌性性感染症の発症を未然に防ごうというわけです。「本当にそんな都合のいいことができるの?」と思うかもしれませんが、2023年に権威ある『New England Journal of Medicine(NEJM)』誌に掲載された研究論文が、このドキシPEPの効果を示し大きな話題となりました。
NEJM掲載のドキシPEP研究とは?
2023年にNEJMに掲載された「細菌性性感染症の予防のための曝露後ドキシサイクリン投与」という論文では、ドキシPEPの有効性を調べるため大規模な臨床試験が行われました。研究チームは米国サンフランシスコとシアトルのクリニックで約501人のボランティアを募集しました。参加者はいずれも出生時の性別が男性で、ゲイやバイセクシュアル男性、トランスジェンダー女性など男性と性的接触を持つ層です。さらに条件としてHIV陽性であるか、HIV予防薬PrEPを服用中(または服用予定)で、過去1年以内に淋病、クラミジア、梅毒のいずれかに感染した経歴がある人たちでした。要するに「最近性病にかかったハイリスク層」の男性が対象だったわけです。
研究では、この参加者たちを無作為に2つのグループに分けました。一方のグループはドキシPEPを実践してもらい、もう一方のグループは標準的なケア(特別な予防薬は使わず経過観察と必要に応じた治療)を受けてもらいました。ドキシPEPグループの人たちには、コンドームなしの性行為(オーラル・アナル・膣のいずれでも)の後、できるだけ早く200mgのドキシPEPを服用するよう指示されました。理想的には24時間以内、遅くとも72時間以内に飲むこと、と具体的なタイミングも定められています。
これはまさに「性行為後のお薬」を習慣としてもらう形です。研究期間中、参加者たちは3か月ごとにクリニックで検査を受け、新たな性感染症に感染していないかチェックしました。副作用やきちんと薬を飲めているか(アドヒアランス)についての聞き取りも並行して行われ、約1年間にわたり追跡されています。
ドキシPEPの予防効果: 性感染症をどれくらい防げるのか?
さて、気になる研究結果です。
結論から言うと、ドキシPEPは驚くほど高い予防効果を発揮しました。ドキシPEPを性行為後に服用したグループは、何もしなかったグループに比べて新たに性感染症にかかる人が格段に少なかったのです。
具体的な数字を見てみましょう。ドキシPEPの効果は梅毒・クラミジア・淋病のそれぞれで顕著に現れています。研究によれば、ドキシPEPを実践したことで以下のような発症減少が認められました
- 梅毒:発症リスクが約87%減少
- クラミジア:発症リスクが約88%減少
- 淋病:発症リスクが約55%減少
ご覧の通り、梅毒とクラミジアに対してはほぼ9割近くも発症を防げたという非常に高い有効性が示されています。淋病に対しても効果はありましたが、他の2つに比べると減少率は約半分程度と少し低めです。それでも発症リスクが半減するわけですから十分大きな効果と言えるでしょう。
また、この研究ではHIV陰性でPrEP利用中の人とHIV陽性の人の両方が含まれていましたが、いずれのグループでもドキシPEPの効果は一貫して高いことが確認されています。全体として見ると、ドキシPEP群では3種類の細菌性性感染症の合計発生率が標準ケア群より約3分の2も低下しました。NEJM論文の結論部分でも、「ドキシPEPにより梅毒・クラミジア・淋病の発生率が標準ケアより3分の2低く抑えられ、最近性感染症にかかった経歴のあるMSM(男性と性行為をする男性)における使用を支持する結果である」と述べられているほどです。まさに画期的な成果であり、「セックス後に薬を飲むだけで性病をかなりの確率で防げる!」という希望が現実味を帯びてきたのです。
メリットと活用法: 誰に向いていて、どう使うのか?
ドキシPEPがもたらすメリットは何と言ってもその高い予防効果です。梅毒やクラミジアを約90%も防げるとなれば、「また性病にかかったらどうしよう…」という不安が大きく減るでしょう。特にこれまで何度も性感染症に悩まされてきた人にとっては、頼もしい新対策となり得ます。実際に研究でも、ドキシPEPを使った人たちは定期検査で新たな感染が見つかる割合が大幅に低下しました。さらに副次的なメリットとして、感染そのものを防ぐことで将来的に治療のための抗生物質使用(より長期間の投薬)を減らせる可能性も指摘されています。つまり、「予防のために少量の抗生物質を使うことで、大量の抗生物質を使う治療を減らせる」という考え方です。
ではドキシPEPは誰に向いている方法でしょうか?
現時点では、この予防法が特に有効とされているのは複数のパートナーとの性交渉があり細菌性の性病にかかるリスクが高い人たちです。具体的には、先述の研究対象でもあったゲイやバイセクシュアルなど男性同士で性行為を行う人やトランスジェンダー女性など、MSMコミュニティに属する方々が代表的です。こうした人々で、過去に梅毒や淋病・クラミジアに感染した経験がある場合は特に再感染のリスクが高いため、ドキシPEPの恩恵を受けやすいと考えられます。
ドキシPEPの実践方法自体はシンプルです。ポイントは「性行為のたびに、できるだけ早く薬を飲む」こと
具体的な流れは次の通りです👇
- コンドーム無しの性交渉(経口・肛門・膣性交いずれも)の後、可能な限り早くドキシPEPを1回服用します。
- 服用は理想的に24時間以内、遅くとも72時間以内(3日以内)に行います。早ければ早いほど効果的です。
- この服用を、リスクのある性行為のたびに繰り返します(性行為の頻度が高い場合はそのたびに服用することになります)。
たったこれだけでOKです。非常に簡便ですよね。
実験に参加した人たちもこの手順を忠実に守ることができており、86%以上が「毎回72時間以内に忘れず服用できた」と回答しています。しかも重大な副作用も特に報告されておらず、安全性や使い心地の面でも問題は見られなかったとのことです。もちろんドキシPEPは細菌に対してのみ効果がある予防策であり、HIVやヘルペスなどウイルス性の性感染症には無効です。HIVに対しては専用のPEPやPrEPがありますし、コンドームは依然として性感染症予防の最も確実な方法です。ドキシPEPはあくまで「追加の安全策」として位置づけ、他の予防策とうまく組み合わせて活用することが重要です。例えば「HIV予防にPrEP+梅毒など細菌予防にドキシPEP+コンドーム」というように、自分のリスクに合わせて複数の手段を組み合わせれば鬼に金棒ですね
まとめ: ドキシPEPが切り拓く新たな性感染症予防の可能性
ドキシPEPは、これまでコンドームやワクチン以外になかった性感染症予防に新風を吹き込む革新的なアイデアです。性行為後に薬を一錠飲むという簡単な行為で、梅毒やクラミジアといった厄介な感染症の大半を防げる可能性が示されたことは、「夢のようだ」と感じる人もいるでしょう。実際、専門家たちもこの手法に大いに期待を寄せています。今後数年間で本格的な導入が進めば、性感染症の流行状況に与える良い影響も大きいかもしれません。もちろん課題がないわけではありません。例えば淋病菌の一部はドキシサイクリンに耐性を持つため、ドキシPEPでは防げないケースも考えられます。抗生物質の乱用による耐性菌の増加を懸念する声もあります。しかし専門家は、限定された集団で予防的に使用するこのメリットは十分大きく、抗生物質の他分野での大量使用と比べればリスクは抑えられるだろうと指摘しています。何より、性感染症そのものを減らすことができれば、結果的に治療のための抗生物質使用総量は減る可能性もあります。要はバランスとモニタリングが重要ということですね。
いずれにせよ、ドキシPEPがもたらす新たな性感染症予防の可能性は大きく広がっています。「性病予防=コンドームだけじゃない時代」がすぐそこまで来ているのかもしれません。「セックス後に薬を飲むだけで性病リスクが激減する」なんて、一昔前なら信じがたい話でしたが、最新の研究のおかげでそれが現実になりつつあります。
興味がある方はぜひ最新情報をチェックしつつ、必要に応じてMona青山クリニックに相談してみてください。ドキシPEPが広く普及すれば、「梅毒や淋病におびえなくて済む未来」も夢ではないかもしれませんね。性感染症予防の新常識として、今後の展開に期待が高まっています
参考文献
Luetkemeyer AF, Donnell D, Dombrowski JC, et al. Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections. New England Journal of Medicine. 2023;388(14):1296–1306. doi: 10.1056/NEJMoa2211934
ゲイの方はもちろん、多数の方とのせい行為がある方、奥さんや彼女に絶対バレたくない方などは、Mona青山クリニックに相談
- 電話や顔見せせずにラインメッセージで問診完了
- 匿名予約・匿名発送OK
- 都内の方はバイク便利用で即日すぐ受け取り可能
- 全国どこでもすぐに発送