認知と気分の関係 | 精神科医:みえしん院長

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これまでのブログ(→過去記事 )で、認知行動療法では、人間の気分・感情がその人の認知 (ものごとのとらえ方、考え方) と密接に関係しており、
「相手が悪意を持っている」→「イライラ」
「うれしい気分」→「全てがうまくいっているという認知」

という風に双方向のものであることもお伝えしてきました。
認知行動療法では、
ストレスの原因となっている不適応(マイナス)な思考パターンや行動パターンをより適応的(客観的に見て妥当な)なものに変化させていくことを目指します。ですからカウンセリングでも、

「どうして、そのような好ましくない・辛い感情・気分・行動が出てきたのか?」

という問題の状況や心理状態の形成過程に焦点を合わせます。前回は書きませんでしたが、認知により影響を受けるのは感情や気分・行動だけではありません。パニック発作に代表されるような、動悸や震え、めまい、頭痛などの生理的・自律神経変調の症状も影響されます。実は、ちょっと難しいですが認知行動療法では、

「認知の傾向・思考内容によって『感情・気分・行動・生理』が決定される」

と解釈します。
さて、今回は感情と認知の関係についても少し書いてみます。
認知行動療法では、感情をいくつかのグループに分けます。いろいろな分け方があるのですが、私は、
「うつ」「不安」「喜び」「怒り」

4つに分ける方法を用いています。
よく「うつ」「うつ状態」「抑うつ状態」などと言いますが、「うつ」ではどのような認知が関係してくるのでしょうか。
うつ状態、うつ病の原因のひとつは、人生における「喪失体験」と言われます。たとえば、身近な人(家族、友人、恋人など)との死別や別離などは喪失体験です。職場でのリストラや左遷も地位や名誉、お金などを失うという意味から喪失体験になります。
たとえば最近よくみられる、不景気で解雇になった場合をイメージしてみましょう。仕事に打ち込んでいた人であればあるほど、解雇を思い出して悩むでしょう。気持ちも沈みこみますし、経済的な喪失もダメージです。会社への貢献が足りなかった自分を責めることもあるでしょう。経営状況の悪い会社に就職した不運を嘆く人もいるかもしれません。
このように気持ちが沈みこんでいると、自分自身を悲観的にとらえ周囲の状況もマイナス思考でとらえがちになります。現状のみならず将来についても明るい展望が持てなくなります。
展望が持てないと何かをしようという意欲が無くなります→拙著ですが見てください )。消極的になり、自分を守るために他者との交流も少なくなります。すると孤独感が増し、ますます気分が落ち込むという悪循環に陥ってしまいます。
うつマイナスの認知孤立、消極的、意欲低下うつの悪化
長くなりますので、続きは次回に。

(参考文献)
大野裕:認知療法の技法と実践―精神療法の接点を探って.金剛出版,2008.
臼井卓士ほか:地域社会におけるニート・社会的ひきこもりの家族相談への取り組み―心理モデル図の使用を中心に―.精神療法,32(4),2006.

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