「うん、黒澤明(くろさわあきら)監督の用心棒(ようじんぼう)と椿三十郎

(つばきさんじゅうろう)が強烈なインパクトを持ってヒットしたのでその後の

TVドラマが作られていったのよ。話は股旅物パターンだけど、黒澤映画の

リアリティ路線でヒットしたのね」
「リアリティ路線?」
「そう、元は七人の侍(しちにんのさむらい)で描かれた超リアルと思われた

侍達の描写ね。この映画は大ヒットしたのよ」

 

「へー、どんな映画?」
「うん、舞台は戦国末期かな、野武士(のぶし)の襲撃にさらされている村で

話し合いが行われるの。今度また野武士がやってきた時に米なんかを持って

いかれたら、もう自分達は生きていけないと。

そこで村の長老が提案するのよ、浪人を用心棒に雇って村を守れって。それで

村人達が町に浪人を探しに行くんだけどご飯を食べさせるだけという条件では

なかなか良い浪人は集まらないのね、そんな時に勘兵衛(かんべえ)っていう

浪人が誘拐犯を倒して子供を助けた場面に出くわすのよ。

村人達は感激して勘兵衛に村を守ってくれと頼むのね、事情を知った勘兵衛は

その願いを聞き入れて自分から他の侍達も探し始めるのね」

 

「へー、いかにも絵に描いたような展開ね。でもその勘兵衛さんは魅力的だわ、

ねえ、野武士って何?」
「あのね、こういう話が定番になるのはこれ以降の話。何せこの映画の公開は

1954年なんだから。野武士っていうのは浪人とかやくざものが集まって強盗

集団を作ったものよ、まあ元々は大名家に就職していないような地方の自衛

武装集団だったんだけど段々と強盗専門に変質したみたいね」
「ふーん、食べられなくなった侍達が強盗になるか用心棒になるかか、ちょっと

切実な話ね」

 

「うん、でもこの志村喬(しむらたかし)演じる勘兵衛はなかなかの人物でね、

数日の内に6人の侍を集めちゃうのよ」
「あんたも言うことが時代劇掛かってきたわね(笑)」
「まあね、集まったのは勘兵衛を含めて腕利き(うできき)が3人、普通が2人、

勘兵衛にあこがれて付いて来た16、7才位の少年が1人、トラブルメーカーが

1人」
「トラブルメーカー?」
「うん、三船敏郎演じる菊千代よ。どうも元々農民出身らしいんだけど村を

野武士に襲われて孤児になったみたいね。野武士を憎み、農民にはコンプ

レックスを持ってるわ」
「コンプレックス?」
「菊千代は力が欲しかったのね、理不尽な暴力に立ち向かえる力が。だから

武士の倫理観には批判的よ、それに農民の本質、つまり権力や暴力には

表面上従うけど裏に回ればしたたかに落ち武者狩り(おちむしゃがり)をやる

ような側面を知り尽くしてるので素直に農民達を信じようとはしないのね」

 

「落ち武者狩り?」
「うん、戦争に負けて逃げていく侍達を農民達が襲うのよ」
「えっ何で?」
「農民達も戦争では自分達の田畑を荒らされて頭にきてるのよ、侍の鎧

(よろい)や兜(かぶと)はお金になるのね。どんな事でもやって生き残るのが

農民っていうものなのよ」
「なるほど、それも時代の被害者と言えるわね。これはハッピーエンドとは

いかなさそうだわ」
「おっと、ミキさすがに鋭いね。七人の侍は村に着くと農民達に竹槍を持たせて、

村の周りにバリケードを作って野武士を待つのね。総勢40~50人位の

野武士達は油断してやって来たところをたちまちやられちゃって後は一進一退の

消耗戦になるのね、その内に侍側も1人また1人と命を落としていくのよ。

 

野武士の方も仲間割れや逃亡者が出たりして人数も半分位になるのね、

そこで勘兵衛はバリケードの中に野武士達を引き込んで最後の決戦をするのよ。
大雨の中で敵味方入り乱れた壮絶な肉弾戦になるんだけど最後に敵の親玉を

倒した菊千代が火縄銃で撃たれて死ぬのね、結局生き残ったのは勘兵衛と

もう1人、それから少年の3人。
戦いが終わって村を去る侍を農民達が見送っているんだけど、勘兵衛はまた

負け戦(まけいくさ)だったとつぶやくのよ、本当に勝ったのは農民達だと」

 

「うーん、なるほど。侍達は自分達が根無し草だと分かっていたのね、結局

自分達は去っていく存在だと。したたかに生き残っていくのは大地に根の張った

農民達なのね」
「ミキは脚本家になれるわね(笑)この作品は股旅物の決定版と言えるかもね、

当然大ヒットしてアメリカからもリメイク依頼が来たの。荒野の七人っていう名前で

メキシコの農村を盗賊団から救う7人のガンマンの物語になってこれもまた大ヒット

したのよ」

 

「ヒットの理由はよく分かるわ。戦争は戦場でっていう当時の常識が吹き飛んで

職業軍人でない農民達が武器を持って自分達で生活の場を守るわけでしょう、

もう何もかも非日常のオンパレードよ。観客としてはテーマパークで凝りに凝った

アトラクションを実体験してるようなものだわ。もう大興奮で子供から大人まで

観に行ったでしょうね。期待されるヒーロー像はどの国にも共通するのね」

 

                                          つづく