| 「うん?それじゃあヒーローの非日常性って何よ?」
出れば逆転サヨナラだっていうような特殊な状況、非日常の世界なのよ」 光るのは特別な状況だからなのよ。火事場に飛び込んで赤ちゃんでも 助けてくれば一躍ヒーローになれるのよ」
「なるほど、その例は分かりやすいわね。でもそれなら木枯らし紋次郎とか 中村主水は何故ヒーローなの?」 初めてやって来たよそ者なのね」 立場の勢力から迫害されているのね、そこに紋次郎がやって来てやくざの 親分や悪代官を叩き斬って村を去っていくのよ。 村人達は救われて刑事責任は紋次郎が背負って行っちゃうわけで、 こんなにありがたい事は無いわけよ。彼らにとって紋次郎はヒーローに なるわけね、でもこのヒーローは活躍が終わったら去ってもらわないと 困るわけよ。そして上手い具合に紋次郎は次の旅を続けていくのね」
「そうか、紋次郎は村の人間じゃないから日常的な存在じゃ無いのね。 村の生活を圧迫する非日常的なやくざや代官の迫害という状態を これも非日常的な紋次郎という外からの要素で取り除いたわけか」 ヒーローが成立するのよ。 旅行物語のジャンルを作り出したのね」
「なるほど、股旅物か。じゃあ中村主水も股旅物なの?」 裏の稼業として仕事人(しごとにん)をやってるのね」 (はたもと)の被害を受けた江戸の庶民、この人達はまともに奉行所に 訴え出ても取り合ってもらえない弱い立場の人達。 翌日主水は相変わらずのダメ公務員で窓際族(まどぎわぞく)の仕事を 続けるのね」
「へー、それは日常の中の非日常ね、慢性的な日常社会の不満を 仕事人が解消するわけか。でもこれは誉められないヒーローね」 (おたずねもの)という指名手配犯の状況をあえて受け入れて旅を 続けるのよ。主水は社会から切り捨てられた底辺の人達をわずか ながらでも救っていく貧者の一灯(ひんじゃのいっとう)と言えるかもね」
「えっ、それは違うでしょう。紋次郎も主水も違法なアウトローなわけ だから彼らの行為は誉められなくて当然なのよ」 処置で弱者を救う為だからよ、日常のシステムが対処出来ない被害を 緊急避難的方法で救うのがヒーローという存在なのよ。燃えてる家に 飛び込むのは厳密に言えば違法行為じゃないの?」
「なるほど、ヒーローの活躍は緊急避難か。でも救われた方は感謝する でしょうね、違法かどうかは関係ないか。まあ法律は人間が決めた基準 だから大なり小なり違法状況は発生するわね、それを解決出来れば ヒーローと認定されるわけだ」 問われないんだからね」 強調してるんだと思うのよ。仕事と割り切って違法行為をやる、これは 自分にも依頼者にも覚悟を決めさせる要因になるんじゃないかな」
「あっ、ちょっと待って。ヒーローがアウトローなら4番バッターの例えは おかしいじゃない、彼はちゃんとルールを守ってるわ」 スーパーマンの登場しかないっていう場面で逆転のヒットなりホームラン なんかを打ったバッターはその非日常性の故にヒーローという超人になるわけよ」
「わー、何だか哲学的。じゃあ負けるパターンにはまった日常的な状況を ひっくり返した数秒なり数分なりの間は彼はアウトローになってるっていうわけ?」 なってるのよ。これは他の選手にしてみれば受け入れがたい理不尽な 事態なのね」
つづく |