オリンピック開会式での中国の電気自動車転換披露の
一大デモンストレーションは世界に衝撃をもたらした。
アメリカへの対抗軸と見られていた中国、ロシア、中東の内
中東の 石油がエネルギー資源としての価値を半減され、
更に中国が明確にアメリカ陣営への協力を表明した為に
孤立感を深めたロシアはアメリカが提唱する米中露3カ国
会談へ歩み寄りの姿勢を示し、早くも9月初めに第1回会談
がニューヨークで開かれる旨が発表された。
それに先立つ8月末、まるでオリンピックの終了を待って
いたかの様に福本内閣は総辞職した。前内閣より政権を
引き継いでから11ヶ月、任期を約1年残しての政権崩壊であった。
総辞職自体は与野党共にほぼ予想された退任劇であった為
さほどの混乱は生じなかったが、野党側が要求する解散総選挙
を与党民政党は一瞥(いちべつ)だにせず、次期総裁に
朝尾前外務大臣を擁立して、衆議院本会議において内閣総理
大臣に選出した。
新総理の就任直後に行われた世論調査での内閣支持率は
21%に止まりマスコミは記録的な低支持率での船出と揶揄
したが、当の新総理は就任会見で前任者の倍の支持率を得た
と開き直って内外のひんしゅくを買った。
そうした中で、唯一世間の注目を集めたのは内閣総辞職
と同時に民政党を離党した五島官房長官の動向であった。
入党以来40年以上を過ごした大幹部の離脱に、人々は
民政党の先行きと国政全体の混乱に不安感を募らせたが、
一部のマスコミは五島と行動を共にした50余名がいずれも
リベラル派として知られる面々であった事から、五島を中心
とした改革派勢力による大規模な政界再編が予想される
という観測を示した。
それから数日後、警視庁で一つの人事が発表された。
即ち、五島警視正の退官である。
前途有望な若手幹部の突然の辞任に警察内部では
様々な憶測が流れたが、当の本人は至って平静だった。
既にその半月前に警視に昇進していた高村は五島を誘って
クラブMを訪れた。
「いらっしゃいませ」
「まあ、高村さん!お久しぶりです」
「まあ、高村さん!お久しぶりです」
きみが驚いたように声を上げた。
「ああ、どうもご無沙汰してます。その節はお世話になりました」
「いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」
「ああ、どうもご無沙汰してます。その節はお世話になりました」
「いらっしゃいませ、どうぞこちらへ」
ひなが先客の待つテーブルに二人を案内した。
「ひなさんも、お久しぶりです」
「いいえ、こちらこそ。マユちゃんはお元気ですか?」
「はい、もうわがまま放題で…」
「ひなさんも、お久しぶりです」
「いいえ、こちらこそ。マユちゃんはお元気ですか?」
「はい、もうわがまま放題で…」
「やあ、お待ちしてました」
テーブルでは安倍と利倉が立ち上がった。
「ああ、遅くなりまして申し訳ありません」
「ああ、遅くなりまして申し訳ありません」
四人はテーブルに着いて乾杯した。
「今日は高村警視の昇進祝いと五島警視正の新たな門出への
激励会です。まあゆっくりやりましょうか」
安倍が五島に水を向けた。
「いや、これは恐縮です。私の場合お祝いというのも…」
「五島さん、色々とお疲れ様でした。しかし、これからがまた
「いや、これは恐縮です。私の場合お祝いというのも…」
「五島さん、色々とお疲れ様でした。しかし、これからがまた
大仕事ですね」
利倉が声をかけた。
「はい、覚悟は出来ています。まあ後の事は全て高村に
任せましたので何の心配もありませんが」
「おいおい、いきなり丸投げかよ。俺はおかしな超過勤務はしないぞ」
四人は声を上げて笑った。
「五島長官はいよいよ決断されましたね」
「はい。安倍さん、父はもう長官ではないですけどね」
「ああ、そうですね。まあいずれは新党の総裁だとは思いますが、
「おいおい、いきなり丸投げかよ。俺はおかしな超過勤務はしないぞ」
四人は声を上げて笑った。
「五島長官はいよいよ決断されましたね」
「はい。安倍さん、父はもう長官ではないですけどね」
「ああ、そうですね。まあいずれは新党の総裁だとは思いますが、
五島さんはいつ?」
「はい、明日正式発表の予定です。父の政治秘書として
「はい、明日正式発表の予定です。父の政治秘書として
また一から勉強になります」
「あなたほどの識見があれば大丈夫ですよ、お父さんを
「あなたほどの識見があれば大丈夫ですよ、お父さんを
支えてあげて下さい。次の総選挙後には我々が部下として
政権をサポートします」
「そんな、恐れ多いですよ。チームゆきかぜの仕掛け人が
「そんな、恐れ多いですよ。チームゆきかぜの仕掛け人が
サポートだなんて、我々は駒の一つで結構です」
「五島さん、そんな事を言ってると利倉さんは本当に
新政権のフィクサーになってしまいますよ(笑)
お父さんが何故チームゆきかぜを作ったのかお分かりだと
思いますが、あなたはそれを引き継いで、より有効に使って
下さい。
これからは日本が国家としての存亡を問われる状況になります
対外勢力への実働部隊としてこれほど頼りになる連中はいません。
都内の治安は高村警視にお任せになって、欧米と一線を画する
政治姿勢を貫いて下さい」
「ありがとうございます。私も何とか、チームに合流させて頂ける
「ありがとうございます。私も何とか、チームに合流させて頂ける
でしょうか?」
「いえいえ、あなたは将来のリーダーです。そう遠くない未来に
「いえいえ、あなたは将来のリーダーです。そう遠くない未来に
力量を問われる事になると思いますよ」
「利倉さん、余りプレッシャーをかけるとこいつは暴走しますよ。
「利倉さん、余りプレッシャーをかけるとこいつは暴走しますよ。
チームの中でも補佐役が必要になります」
高村が五島の肩を叩いた。
「補佐役?それなら適任者がいますよ」
安倍がニヤニヤしながらカウンターのきみを見た。
「あら、安倍さん。ママに何か?」
「あら、安倍さん。ママに何か?」
ひなが新しいボトルを持ってテーブルにやってきた。
「あっ、いえ、もうすぐ小林2佐が戻ってきますよ。日本にね」
「小林2佐というと、海自の?」
「あっ、いえ、もうすぐ小林2佐が戻ってきますよ。日本にね」
「小林2佐というと、海自の?」
高村が安倍を見た。
「はい、補佐役としては彼は最適です。首相補佐官でも
「はい、補佐役としては彼は最適です。首相補佐官でも
立派に務まりますよ」
「小林さんは自衛隊をお辞めにはならないでしょうね、余り違う
「小林さんは自衛隊をお辞めにはならないでしょうね、余り違う
お仕事ばかりさせていると梅田艦長からクレームがきますよ」
言いながらひなは安倍を見据えた。
「小林2佐とはそれほどの人物なんですか?」
五島が身を乗り出した。
「ああ、彼が戻ったら一度ゆっくり話されると良いですよ。
「ああ、彼が戻ったら一度ゆっくり話されると良いですよ。
能力も人物も申し分ありません」
利倉が自信たっぷりにうなずいた。
「それでは、チームゆきかぜの新メンバー加入を祝して。乾杯!」
利倉が自信たっぷりにうなずいた。
「それでは、チームゆきかぜの新メンバー加入を祝して。乾杯!」
安倍の発声で一同はグラスをあげた。
その間にも、新たな政変は静かに進行していた。
つづく